レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2009/02/12
- 登録日時
- 2009/05/09 02:11
- 更新日時
- 2015/05/27 13:00
- 管理番号
- 埼熊-2008-142
- 質問
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解決
大岡忠相支配下の代官で農政家の蓑笠之助正高の酒匂川治水についての資料および代官罷免の理由を知りたい。
- 回答
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酒匂川治水についての笠之助独自の資料はあまりなく、以下の資料などを紹介する。
『神奈川県史 通史編3 近世2』『神奈川県史 各論編3 文化』」『小田原市史 通史編 近世』
中根賢「町奉行大岡忠相の地方御用とその特質-享保十七年~延享五年酒匂川治水を中心に-」(「幕藩制社会の地域的展開」所収)
罷免された理由については『神奈川県史 別編1 人物』に「寛延2年(1749)5月代官を罷免。出仕を止められたが、8月赦免。」とあり。『日本近世人名辞典』に「手代の不正行為のため」と罷免の理由あり。
蓑の著作やWebサイトの《ひの史跡・歴史データベース》に「日野の歴史と民俗 No.103・104異色の代官蓑笠之助(1)(2)」あり。
(http://www.c-hino.org/hino_history/index.html 2009/04/22最終確認)
その他、回答プロセスにあげた資料を紹介する。
- 回答プロセス
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『神奈川県史 通史編3 近世2』 酒匂川について記述あり。「酒匂川の復旧」に江戸町奉行に改修を願い出たこと、幕府代官岩手藤佐衛門が支配し改修に携わったこと、岩手藤佐衛門の支配は、(享保17年)6月には代官蓑笠之助の支配へ変わり、との記述あり。
『神奈川県史 各論編3 文化』「近世相武の農政家」の中に「蓑笠之助の村役人教育」があり「大岡忠相が地方御用掛の職を退くとまもなく「つとめよからざるなり」という理由で代官職を奪われ・・・」
『神奈川県史 資料編7 近世』 享保時代の笠之助名のある文書複数あり。
『神奈川県史 別編1 人物』〈蓑正高〉あり。参考資料あり。
『享保改革の地域政策』 蓑についてあり。註により「佐屋町史」(愛知県)の中に「蓑笠之助家系由緒書之事」があることがわかる。
『佐屋町史 史料編 2』 蓑笠之助家系由緒之事あり。元町人だが(田中)休愚と親しくなり養子となり家督相続したこと、一度猿楽におちいったが、改めて川除奉行の見習いとなり名を先祖の蓑にかえたことなどの記述あり。
高橋光二「代官蓑笠之助の思想」(『近世の支配体制と社会構造』所収) 「略譜」「武林隠見録」の引用あり。参考文献あり。
中根賢「町奉行大岡忠相の地方御用とその特質-享保十七年~延享五年酒匂川治水を中心に-」(「幕藩制社会の地域的展開」所収:県立未所蔵) 大岡配下の正高がとった治水政策について論ずる。蓑の略歴と研究史もあり。
『小田原市史 通史編 近世』の「大口堤の再建と被災地の復興」に「蓑笠之助の大口堤締め切り」があり、享保19年(1734)の決壊と竣工までの様子の記述あり。「酒匂川大口堤沿革史」(『二宮尊徳全集 第14 仕法』)の引用あり。
『小田原市史 史料編 近世1 藩政』 酒匂川普請についての文書に蓑の名あり。
『二宮尊徳全集 第14 仕法』『江戸時代の小田原』 蓑に関する記述があるが、酒匂川の改修や罷免については記述なし。
『新編相模国風土記稿 2』 蓑に関する記述があるが、酒匂川の改修や罷免については記述なし。
『新編相模国風土記稿 5』 蓑に関する記述あり。
『大岡忠相 人物叢書』 蓑や酒匂川治水についてあり。
『大岡越前守忠相日記 上』 元文2年1月2日に田中休蔵、笠之助の名あり。注に人物の説明あり。23日に酒匂川堤普請伺書の文字。
笠之助著作について
「農家貫行」(『日本経済大典 11』)解題あり。
『日本経済叢書 巻5』(日本経済叢書刊行会 )に蓑相山(正高)著「続農家貫行」収載。
『新編武蔵(国)風土記稿 多摩郡』に四ツ谷村・大塚村・平山村での代官名に笠之助あり。
罷免された理由について
前述『神奈川県史 別編1 人物』「寛延2年(1749)5月代官を罷免。出仕を止められたが、8月赦免。」とあり。
『日本近世人名辞典』に「手代の不正行為のため」と罷免の理由あり。
インターネット情報
《ひの史跡・歴史データベース》
日野の歴史と民俗 No.103・104「異色の代官蓑笠之助(1)(2)」村上直執
(出典「広報ひの 平成19年3月1日、4月1日」)を紹介する。
その他関連資料
『日野市史 通史編2(中)』 大岡越前守忠相の武蔵野新田開発について詳しい。町奉行だった享保7年(1722)に関八州の新田開発を担当することになり、配下の岩手藤佐衛門(~享保17年)、上坂安佐衛門政形(享保17年~)らが実際に担当した代官。ただし、蓑の名や酒匂川改修の記述はない。
中根賢「享保改革と相州酒匂川治水 勝手掛老中水野忠之と町奉行の地方御用を中心に」(『関東近世史研究 第64号』所収) ただし蓑についてはなし。
『民間省要』(田中休愚/著 村上直/校訂) はじめにのページに「享保11年に酒匂川の治水工事を婿の巳野庄次郎とともに行い・・・」とあり。乾之部巻之三には補筆として佐川(酒匂川をさす)の記述あり。参考文献あり。
高瀬 和昌「近世治水思想に関する一研究-酒匂川文命堤の事例を中心として」(『水利科学 93号』 水利科学研究所 1973) 田中休愚の酒匂川治水について論じている。
『川崎市史 資料編2 近世』 田中休愚立身の事に「武林隠見録」(国立公文書館内閣文庫蔵)に休愚の酒匂堤普請の記述あり。ただし笠之助の登用事情の部分はなし。
- 事前調査事項
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「国史大辞典」「日本歴史大辞典」「寛政重修諸家譜」「徳川実紀」
- NDC
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- 河海工学.河川工学 (517 9版)
- 関東地方 (213 9版)
- 参考資料
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- 『神奈川県史 通史編3 近世2』(神奈川県 1983)
- 『神奈川県史 各論編3 文化』(神奈川県 1980)
- 『神奈川県史 別編1 人物』(神奈川県 1975)
- 「幕藩制社会の地域的展開」(雄山閣 1996:県立未所蔵)
- 『小田原市史 通史編 近世』(小田原市 1999)
- キーワード
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- 蓑 正高(ミノ マサタカ)
- 田中 休愚(タナカ キュウグ)
- 酒匂川-神奈川県-歴史
- 治水-江戸時代
- 人物-代官
- 治水誌
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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レファ協DB事業サポーター様より情報提供あり。
2015年刊行の次の図書に記述あり。
『徳川幕府全代官人名辞典』(村上直[ほか]編 東京堂出版 2015.3)
p446-447〈蓑正高〉の項あり。約1ページの記述。「典拠・参考文献」の記載もあり。
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 人物
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000054577