レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016年11月14日
- 登録日時
- 2017/05/05 14:31
- 更新日時
- 2017/07/12 18:01
- 管理番号
- 埼久-2017-005
- 質問
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解決
中島敦の作品「環礁」に登場する「パラオ南方離島通いの小汽船」である国光丸について知りたい。中島敦が乗ったと思われる「国光丸」は実在するか、実在するなら運営会社や船主などの詳細が知りたい。
- 回答
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「国光丸」に関する資料は見当たらなかった。中島敦の作品「環礁」については、創作の可能性が高く、中島敦は南方の離島めぐりには行っていないとする論考があった。また、本人の日記や手紙によると、トラック、ポナペ等への視察旅行で乗った船は「パラオ丸」(昭和16年9月15日から)と「山城丸」(同年11月17日から)だとする資料があり、これを紹介した。
『中島敦の作品研究 国文学研究叢書』(浜川勝彦著 明治書院 1976)
p208 「南島譚の世界」に「この見聞記は(中略)彼の「創作」である可能性がつよい」とあり。土方久功「南方離島記」(草稿、未出版)にナポレオン少年の話が出てくること、土方氏へのインタビューや中島敦の日記、また当時の状況から、中島敦が「南方離島記」でナポレオン少年のことを知ったが、この話で想定していると思われる南方の離島(プル島、ソンソロル諸島、ヘレン礁)へ訪れたとは思えないことなどが論考されている。離島めぐりの船についても「小汽船」として名称の記載なし。
『中島敦全集 第3巻』(中島敦著 文治堂書店 1959)
p344 昭和16年9月15日の日記に「パラオ丸」とあり。
『中島敦父から子への南洋だより』(中島敦著 川村湊編 集英社 2002)
p243 解説中に、「十一月十七午後四時、パラオを山城丸で出航」とあり。
- 回答プロセス
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1 中島敦の作品「環礁」を確認する。
『日本文学全集 16 宮沢賢治』(池澤夏樹編 河出書房新社 2016)
p267 「パラオ南方離島通いの小汽船、国光丸」とあり。
2 《国会図書館サーチ》(http://iss.ndl.go.jp/ 国会図書館)を〈船名 & 録〉で検索する。
《国会図書館デジタルコレクション》
「日本船名録 昭和17年度」(運輸通信省海運総局 1944)
索引の船名に国光丸なし。
(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1142437 国会図書館)
「日本船名録追録 昭和17年版 第2号」
索引の船名に国光丸なし。
(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1052958 国会図書館)
「日本船名録 昭和16年度」(帝国海事協会 1944)
p41 「国光丸」の記述はあるが、内地のみ。質問者調査済みの三光汽船の国光丸と思われる。
(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1142408 国会図書館)25コマ
3《国会図書館サーチ》(http://iss.ndl.go.jp/ 国立国会図書館)を〈国光丸〉で検索すると以下の2件がヒットする。
《国会図書館デジタルコレクション》
「官報. 1951年11月02日」(大蔵省印刷局 1951)
p29「告示 / 電波監理委員会 / 第1884号 / 無線局免許(国光丸)」の項に、日本汽船株式会社の「国光丸」について記述があるが、「主たる停泊港 神戸」とあり、年代も異なる。
(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2964000 国立国会図書館)3コマ
「社業回顧録」(三光汽船株式会社 1968)
三光汽船については質問者調査済み。
(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3444941 国立国会図書館)
4 中島敦関係の図書を確認する。(回答資料)
5 船舶関係の図書にあたる。以下「國光丸」について記載なし。
『大阪商船株式会社80年史』(大阪商船三井船舶株式会社編 大阪商船三井船舶 1966)
『日本の船 汽船編』(山田廸生著 日本海事科学振興財団船の科学館 1997)
ウェブサイト・データベースの最終アクセス日は2016年11月13日。
- 事前調査事項
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『中島敦父から子への南洋だより』(川村湊編 集英社 2002) 中島敦がミクロネシアにいたのは1941年7月2日以降、中島敦が視察旅行を始めるのが9月15日からとあり。
『太平洋戦争 喪われた日本船舶の記録』(宮本三夫著 成山堂書店 2009) 戦前に国光丸という船は少なくとも3隻あったとあり。
『日本商船・船名考』(松井邦夫著 海文堂出版 2006) 「国光丸」のうち2隻は戦時標準船なので候補から外れる。
個人ウェブサイトに、三光汽船の「国光丸」は1941年9月4日に徴用されているとあり。
『社業回顧録』(三光汽船 1968) 南方に配船したという記述なし。
- NDC
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- 各種の船舶.艦艇 (556 9版)
- 日本文学 (910 9版)
- 参考資料
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- 『中島敦の作品研究 国文学研究叢書』(浜川勝彦著 明治書院 1976)
- 『中島敦全集 第3巻』(中島敦著 文治堂書店 1959)
- 『中島敦父から子への南洋だより』(中島敦著 川村湊編 集英社 2002) , ISBN 4-08-775315-8
- キーワード
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- 中島敦
- 環礁
- 国光丸
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000215656