レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2011年2月17日
- 登録日時
- 2011/02/17 15:29
- 更新日時
- 2011/12/27 18:04
- 管理番号
- 愛知県図-03011
- 質問
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曽野稲荷(愛知県瀬戸市)について書いた資料はあるか。
- 回答
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曽野稲荷は、陶磁器の産地で有名な現在の愛知県瀬戸市の北部にある神社で、【資料1】69pに「本殿の左手に西宮恵比須大神が祀られ、右側に「縁結びの神」が祀られている。初午が大変賑わう。」とあります。所在地は【資料2】73pに記載があります。
また、昭和16年の写真ですが【資料3】97pに昔の参道の様子がわかるものがあります。
曽野稲荷の歴史については、【資料4】425pによると、旧地名は春日井郡上水野村(かみみずのむら)で、文化14(1817)年京都伏見から勘請したとあります。また、【資料5】111-112pには縁起記の抜書きがあり、下記のような逸話が書かれています。
「稲荷総本宮愛染寺の別当盛淳(じょうじゅん)上人が諸国を遍歴した折、この地をたずね農家を仮宿をたのんだところ、主人が快
くむかえいれた。その折別室で婦人が叫喚する声を聞いた。理由をきくと白狐が出てなやますのだと言う。上人がおまじないでこ
れを直した。それ以来ここに稲荷を祀ったのがはじまり」。
愛染寺とは稲荷社の総本山ともいうべき京都の伏見稲荷の境内にあったお寺のことです。この伝説については【資料6】333-334p【資料7】77p【資料8】110-113pほかにも掲載されているものがあります。
なお、本文は瀬戸市立図書館蔵(当館未所蔵)の『水野村史資料 社寺篇』(水野村史編集部、1956)17-18pに記載されています。縁起記の末尾には「昭和辛未初春 小金山主大猷謹識」とあります。この小金山主大猷とは同じ上水野村の感応寺の住職で【資料9】59pに、「昭和2年(皇紀2587年)4月、曽野郷の依頼に応じ大猷(たいゆう)行きて山城深草に愛染寺の旧域を探り伝法地教会にて曽野稲荷主神、太田左太彦命を発見して帰る。爾来当山と曽野稲荷との緊密日々に加われるに至れり。」とあり関係が深いようです。
- 回答プロセス
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(1)郷土の宗教関係資料からさがす
・郷土関係の神社の名簿を各種調査しました。【資料11】【資料12】が一般的な資料ですが、曽野稲荷についての記述があったのは【資料2】のみでした。比較してみると、【資料2】には曽野稲荷は「単立神道系」とあり、【資料11】【資料12】に掲載されているのは包括団体が神社本庁の神社のみのようです。宗教法人名簿については国会図書館のリサーチナビに解説と県別の所蔵一覧表(県によってはデータリンクあり)があります。(http://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/post-220.php 2011.10.6確認)
・『神社に関する調査 〔1-13〕』(愛知県教育史編纂部 1931)は、戦前愛知県教育会が刊行を計画した「愛知県教育史」のための調査結果の手書きの原資料で、各地の小学校長が昭和6年に調査したものですが、(伊奈森太郎「愛知県教育史編纂について」『愛知教育』527号 3-5p S6(1931).11)曽野稲荷については掲載されていませんでした。
・【資料13】は主に三重県の事例について書かれた資料ですが、近代の神社整理や神社調査についての情報が参考になります。
愛知県公文書館の検索サイトで「神社明細帳」を検索しましたが、東春日井郡122件中に曽野稲荷はありませんでした。
・『名古屋起点!神社・仏閣ガイド』(海越出版社 1992)や『神社仏閣開運ガイド東海版 改訂版』(七賢出版 1998)にもあたりましたが、愛知県の稲荷社は豊川稲荷と三好稲荷(みよし市)のみでした。
(2)郷土の歴史資料からさがす
・『瀬戸市史』を確認しましたが通史編・資料編には記述がなく、『民俗編』(2006)に【資料1】とほぼ同様の記述がありましたが、由緒などが書かれていませんでした。『愛知県史 別編民俗2 尾張』(愛知県 2008)にも記述はありませんでした。
・基本資料である【資料4】では、後半の「地誌編」の「瀬戸市」の説明文中に曽野稲荷を見つけることができました。
・曽野地区のある上水野はもともと春日井郡上水野村(後に水野村)ですが、当館には”水野村”単独の資料がないため、瀬戸市立図書館に『水野村誌』(水野尋常高等小学校 1931) と『水野村史資料 社寺篇』(水野村史編集部、1956)の調査を依頼し、回答の内容から【資料9】にたどりつきました。
・『東春日井郡誌』『尾張名所図会』『張州雑志』『尾張徇行記』『尾張志』を調べましたが、曽野稲荷はありませんでした。
・【資料6】は瀬戸の歴史について聞き書きをした(「陶都新聞」(昭和14年創刊))連載記事233編を集めたものです。この中に曽野稲荷の伝説
(333-334p)や水野村が村誌編纂を決定(145p)など関連記事がありました。
・【資料3】【資料5】は郷土資料の棚から見つけました。
(3)その他
・地元の新聞『中日新聞』『しんあいち』『とうめい』を(特に初午のころ)調査しましたが、曽野稲荷の記事はありませんでした。
・瀬戸市まるっとミュージアム・観光協会のホームページをさがしましたが、曽野稲荷については掲載されていませんでした。(2011.10.6現在)
- 事前調査事項
- NDC
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- 神社.神職 (175)
- 参考資料
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- 【資料1】瀬戸市史編纂委員会『瀬戸市史民俗調査報告書2 水野・掛川地区』瀬戸市,2002 (1108227768)
- 【資料2】『宗教法人名簿 [平成20年版]』愛知県県民生活部学事振興課,[2009] (1109875056 )
- 【資料3】『目で見る 瀬戸の100年』郷土出版社,1990 (1105578278 )
- 【資料4】『角川日本地名大辞典 23 愛知県』角川書店,1989 (1104968312 )
- 【資料5】『Seto das 1000 せとなんでも事典』瀬戸青年会議所,1989 (1105084518 )
- 【資料6】安藤政二郎『瀬戸ところどころ今昔物語』陶都新聞社,1941 (1101474266)
- 【資料7】『窯業民俗資料調査報告1 瀬戸市』愛知県教育委員会,1974 (1101499640 )
- 【資料8】『花川 せとの昔ばなし』 瀬戸市小中学校社会科研究会,1977 (1101500849)
- 【資料9】梶田 義賢『感応寺史 』 弁財尊天開扉事務所, 1928 (1101481770)
- 【資料10】山折哲雄編『稲荷信仰事典』戎光祥出版,1999 (1107779328)
- 【資料11】『愛知の神社』愛知県郷土資料刊行会,1998 (1107641540)
- 【資料12】『愛知県神社名鑑』 愛知県神社庁,1992 (1107779328)
- 【資料13】櫻井治男『地域神社の宗教学』弘文堂,2010 (1110099146)
- キーワード
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- 稲荷
- 神社
- 愛知県
- 瀬戸市
- 照会先
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- 瀬戸市立図書館
- 寄与者
- 備考
- 日本三大稲荷のうち伏見稲荷(京都府)は神社、豊川稲荷(愛知県)と最上稲荷(岡山県)は仏教の寺院です。当館では豊川稲荷は愛知県郷土資料分類でA182(仏教・三河地方)として神道の分類と区別しています。
- 調査種別
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000078271