埼玉県蕨市にクルド人難民が多く集まっているというニュースをご覧になり、クルド人問題に関心をお持ちになったと聞いております。
まず、クルド人問題についてですが、日本語で読めるもので、クルド問題を単独で扱っている著作はほとんどないのが現状です。そのうえで、拙稿ですが、『アジ研ワールド・トレンド』 2016年4月号、ライブラリー・コーナーに 「クルド人とクルディスタンに関する読書案内」 を執筆しています。こちらの読書案内をご参照ください。
https://ir.ide.go.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=39626&item_no=1&page_id=26&block_id=95(『アジ研ワールド・トレンド』 [請求記号:PJa/3/Aj10] はアジア経済研究所の HP から無料でダウンロードしていただけます。)
また、この他に、日本語でかつ読みやすいものということですと、岡田恵美子・北原圭一・鈴木珠里編著 『イランを知るための65章』 (明石書店 2004年) [請求記号:MEIR/308/I3] の第44章が 「クルディスターンの 「分割」 ― クルド人と国境」 になっており、クルド問題の歴史的経緯を簡潔ながらもわかりやすく説明しています。ぜひ参照していただきたい一冊です。
http://www.akashi.co.jp/book/b64967.html埼玉県蕨市のクルド人のほとんどはトルコ出身のクルド人です。トルコのクルド人問題については、最近出版された今井宏平 『トルコ現代史―オスマン帝国崩壊からエルドアンの時代まで―』 (中央公論新社 2017年) [請求記号:METU/32/T17] の第5章 「クルド問題」 で扱われています。こちらは中公新書で、最近出版されたばかりですので入手しやすいかと思います。
http://www.chuko.co.jp/shinsho/2017/01/102415.html中川喜与志・大倉幸宏・武田歩編 『レイラ・ザーナ―クルド人女性国会議員の闘い―』 (新泉社 2006年) [請求記号:METU/323.1/R1] は、トルコのクルド人女性についての著作ですが、ザーナ氏とご家族との手紙のやり取りが中心となっていて、読みやすい書です。
さらに、予備的な知識がある程度ないと少し難しいかもしれませんが、先日アジア経済研究所より 「クルド問題についての緊急レポート」 (2017年10月) を出しております。こちらもご参照ください。
http://www.ide.go.jp/Japanese/Research/Region/Mid_e/Radar/Kurd.html次いで、映像資料になりますが、クルド問題を題材とした映画として
・ ユルマズ・ギュネイ 『路』
・ ハンダン・イペクチ 『少女ヘジャル』
・ イェスィム・ウスタオウル 『遥かなるクルディスタン』
(以上トルコ映画)
・ バフマン・ゴバディ 『酔っぱらった馬の時間』
・ フマン・ゴバディ 『ブラックボードー背負う人ー』
(以上イラン映画)
などがあります。入手が難しいものも多いかと思いますが、クルディスタンの雰囲気や彼らのおかれている社会状況をよく感じることができると思いますのでお薦めしたいと思います。
蕨市のクルド人については、新聞記事としていくつかとりあげられていますが、学術的なレポート、著作は管見の限りないかと思います。