レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 登録日時
- 2008/06/27 02:11
- 更新日時
- 2012/03/19 17:34
- 管理番号
- B2007M0997
- 質問
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解決
ヒオウギ(アヤメ科、ヒオウギ属)の大群落は、次の年には完全に消滅してしまうことがあります。その理由やしくみについての詳細な資料を探しております。
- 回答
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ヒオウギについて調査したところ、次の資料にこの植物を全滅させると考えうる要因に関する情報が掲載されていましたのでご紹介します(【 】内は当館請求記号)。
・『園芸植物図譜』(平凡社 1986 【RB2-167】)
p.425に「ひおうぎ」の解説が掲載されています。〔栽培〕の項目ではヒオウギの栽培に適した環境や栽培上の注意が紹介されており、その中に「白絹病は株を全滅させるから、徴候の見えたときは株を掘り、石灰イオウ合剤20倍液で洗って別の畑に移植する」と記載されています。
・『日本植物病害大事典』(全国農村教育協会 1998 【RB2-G38】)
様々な植物の病害を紹介している事典です。pp.544-545にヒオウギのかかる病気が掲載されています。この中に挙げられているもので、ヒオウギの群落を全滅させる可能性のある病気としては、「ヒオウギ白絹病」か「ヒオウギ炭疽病」が考えられます。
「ヒオウギ白絹病」は「病徴」に「地際の茎葉と根が侵され、水浸状に変色、腐敗する。地上部は外側の茎葉から内側へとしおれが進み、倒伏し、のち褐変枯死する」との記述があります。また、「伝染」に「罹病株からは菌糸が伸長して、隣接の株に伝染する」と記述があり、伝染性もあるようです。
また、「ヒオウギ炭疽病」については「病徴」に「葉と茎に発生するが、とくに茎の下部が侵されやすい。茎が侵されて腐敗するために葉の先端が変色し、発病がはなはだしいと枯死する」とあり、「伝染」は「罹病株上で分生子層の形で越年し、翌年の伝染源となる。分生子は雨風や潅水により飛散する」と書かれています。
・「ヒオウギに発生した黄化腐敗病(新称)について」(『野菜・茶業試験場研究報告』【Z18-2433】 No.15 pp.11-16 [2000.03.30])
1998年10月、三重県四日市市の育成圃場で、ヒオウギの苗が黄化腐敗し、ついには枯死するという事態が発生した件について調査した報告書です。
・『花と緑の病害図鑑』(全国農村教育協会 2001 【RB193-G389】)
上記でも取り上げられている黄化腐敗病についての記述がp.24にあります。この病気の症状については、「5~11月に、外葉の葉先から黄化し、すぐに地際部の葉身基部に水浸状の軟腐症状が現れ、地上部全体地際部から倒伏、枯死する。根部は飴色に軟腐して消失する。シャガでは鉢上げ後1が月のうちに蔓延する」と記述されています。
以上のほか、下記のページに、「また昭和46年に本県特産花きで関西市場を独占していたヒオウギにウイルス病が大発生して全滅の危機にたたされ、耕種的防除技術の確立と開花調節技術の解明をはかった」と書かれています。具体的な病名は分かりませんが、ヒオウギはウイルス病によって全滅に追い込まれることがあるようです。
徳島県立農業試験場八十年史 第6章 花きに関する研究
(http://www.green.pref.tokushima.jp/nogyo/onlbook/80nensi/02-06.htm )
また、ヒオウギの大群落が消滅した原因の1つとしてお考えの自己中毒について、当館東京本館の科学技術・経済情報室開架資料を調べたほか、当館で契約している科学技術文献データベースであるJDreamIIの検索を行いました。しかし、ヒオウギ大群落の消滅との因果関係を指し示す有用な情報を確認することはできませんでした。
*インターネットの最終アクセス日は2007年8月7日です。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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・牧野新植物図鑑(北隆館)、・原色日本植物図鑑 草本、木本編(保育社)、・日本の野生植物 草本、木本(平凡社)、・検索入門野草図鑑(保育社)、・山渓カラー名鑑日本の野草(山と渓谷社)、・学研生物図鑑 野草(学習研究社)、・図解植物観察事典(地人書館)、・原色野草観察検索図鑑(保育社)、・植物の世界② 種子植物(朝日新聞社)、・改訂版原色牧野植物大図鑑(北隆社)
- NDC
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- 被子植物 (479 9版)
- 参考資料
- キーワード
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- 植物
- ひおうぎ
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 公共図書館
- 登録番号
- 1000045345