レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015年08月19日
- 登録日時
- 2017/02/01 15:48
- 更新日時
- 2017/03/15 11:56
- 管理番号
- 埼熊-2016-096
- 質問
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解決
明治から昭和戦前期までの「秩父銘仙」織物業者が扱っていた染料について以下のことが知りたい。
1 秩父には化学染料を扱う専門店があったのか、それとも薬局等で兼務していたのか。
2 各業者が好みに応じて店を選び自由に買うことが出来たのか、組合などを通じて一律購入していたのか。
- 回答
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下記の資料に関連する記述があり、提供した。
『秩父織物変遷史 埼玉県立図書館復刻叢書 18』(埼玉県秩父繊維工業試験場秩父織物変遷史編集委員会編 埼玉県立浦和図書館 1992)
p128-132「埼玉縣秩父絹織物組合規約 附則 染業研究會規約」
「第九條 本組合染業部ニテ使用スル染料及媒染劑左ノ如シ」としてリストあり。
p134 「絹織物同業組合時代」の項に「明治30年4月の主要輸出品同業組合法の発布、これに代る同33年の重要物産同業組合法の発布により、日本全国の重要商品の組合は、いずれも重要物産同業組合法によって組織されることとなり、同法は同一地区内における同業者の加入を強制するにいたったのであった。」
p148「秩父絹織物同業組合定款」(明治33年に組織された組合の定款)に「第拾ニ條 組合員ノ製造スル織物ノ染色原料左ノ如シ日本固有ノ藍玉又ハ「アリザリン」属若シクハ植物染料(「ログード」黒「ブロンズ」黄血塩ヲ用ユルモノ)ニ限ルモノトス但本文規定以外ノ染料品ヲ使用セントスルトキハ其品名用法ヲ詳記シタル書面ニ見本ヲ添ヘ組合ノ承認ヲ受クヘシ」とあり。
p184「染色業の推移」に「ここで秩父産地における染料移入の経路をたどってみると、藍染時代にあっては主として、北埼玉郡方面からの売込商と取引していたが、しだいに大宮町(現秩父市)の染料商より購入し月末計算の現金払いであった。当時(明治31年ころ)一ヵ年間に購入した染料の総額は染剤約3万円、媒染剤約2万円といわれている(『織物資料』巻二)。そのご[ママ]化学染料はすべて横浜(ベッカ商会)・東京(稲畑商店・柴田商店)方面から秩父(大宮町)にはいり供給されていた。」とあり。
『秩父織物調書』(塩谷俊太郎著 埼玉県立浦和図書館(製作) 1991)
p8「明治廿五年中染色の粗悪なるを矯正せんと苦心し柿原・大森・川田・福島某々等発起し当時の郡長と〔ママ〕主唱者とし郡書記金子某氏と自覺的改良の宣傅をなせり」
p9「仝年〔明治27年〕三月頃より数間に亘り時の農商務省技手山岡栄太郎氏を招聘して染色の講習をなす」
『埼玉県営業便覧』(田口浪三〔ほか〕編 埼玉新聞社出版局 1977)
「大宮町(秩父郡)」の町列を確認(明治35年)
p3(左下) 「薬種商 染料商 薬剤師 塩谷重蔵」
p8(右下) 「薬種商 染料商 新井屋 鬼頭文太郎」
染料と記載があるのは、この2軒のみ。
『景観形成の歴史地理学 関東縁辺の地域特性』(石井英也編著 二宮書店 2008)
p123 秩父の矢尾商店について記述あり。矢尾商店が化学染料を取り扱っており、「秩父銘仙の染料も扱っていたことがうかがえる。」とあり。
『秩父市誌』(秩父市誌編纂委員会編 秩父市 1962)
p559-560 秩父織物工業組合の定款の抜粋あり。構成員は「秩父地区内で、秩父絹織物製造に関係する業者」で、その中に「染料業者」もあり。
p560-561 組合役員や検査員が臨検に赴く旨の記述あり。臨検では染料も綿密に調査されるとのこと。(定款53条)
染料については定款12条に規定あり。指定染料に違反した場合は違約金をとられる旨の記述あり。
定款の全文は『秩父織物変遷史』に掲載とあり。
『手織物考』(秦秀雄著 五月書房 1979)
57-70丁「秩父銘仙考」
61-62丁「藍がなくなりかけたのは明治二十五六年。当時も農家の着料として用いられた。売品には藍を使わなかった。(略)明治二十七年になると農商務省の技術官山内英太郎氏が外国の染法を宣伝普及した。(略)明治三十四年には完備した織物組合を作り、アリザリン染料その他合せて五色を加えて十色を公認した。」
- 回答プロセス
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1 秩父織物関連の自館資料・郷土資料を確認する
自館目録を〈秩父織物〉で検索する。
『織物資料 巻一』(埼玉県立熊谷図書館(製作) 1976)
p5-6「(ロ)染料」「染料ノ生産ト[1字不明]縞産出地方トノ干係従来藍ノ産出ハ多少アリタルモノノ如キモ藍ノ産出アルカ故ニ絣織ノ製造ヲ始メタルモニアラス却テ絣織業ノ発達カ藍ノ生産ヲ促シタルカ如シ然ルニ其後阿州及北海道産藍ノ比較的廉價ニ輸入サルルニ至リ自然生産ヲ減少セリ」
「(四)染料取引方法及其種類 染料ハ其八・九分ヲ所沢染料商ニ抑キ其他ヲ八王子ノ染料商ニ抑ク取引方法トシテハ需要者随時染料商店ニ来タリテ之ヲ求ムルヲ例トス取引ノ種類ハ殆ンド全部信用取引ニシテ現金取引ノ如キハ頗ル稀ナリ(略)」
「(五)染料供給地ノ変遷及其供給需要ノ状況 正藍ハ初メハ地藍ヲ用ヒ(絣生産地方及北足立郡産)次ニ下リ藍ト称シ阿州産ヲ用ヒ最近ニ至タリテハ大部分ヲ北海道ヨリ輸入シ其一部分ヲ阿州より仰クヤンヤ ログートヱキスチ[1字不明]チゴインヂゴピーヤ等ハ所沢町ノ染料商ヨリ之ヲ買入ル(略)」
『秩父織物の系譜 塩谷啓山の覺書を基にして』(田島凡海編 秩父新聞社 1958)
p17「従来染料は草根木皮であったが、(略)文化的染料が使用されるようになった。」とあるのみ。入手ルート等の記載はなし。
自館目録を〈秩父銘仙〉で検索する。
『手織物考』(回答資料)
秩父の大宮町に染料商があったという記述より、埼玉県内の商業関係資料を確認する。
『埼玉県営業便覧』(回答資料)
2 市史等資料を確認する
『秩父市誌』(回答資料)
3 インターネット情報を確認する
《Google ブックス》(https://books.google.co.jp/ Google)を〈秩父銘仙&化学染料〉で検索する。
『景観形成の歴史地理学 関東縁辺の地域特性』(回答資料)
『埼玉の地場産業 歴史・現状・展望』(松井一郎著 永瀬雅記著 埼玉新聞社 1987)
p141 染料の変遷について記述はあり。質問に該当するものはなし。
ウェブサイト・データベースの最終アクセス日は2015年8月19日。
- 事前調査事項
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『秩父織物工業組合史 埼玉県立図書館復刻叢書 17』(秩父織物工業組合〔編〕 埼玉県立浦和図書館 1991)
p31「柿原組長は(中略)染料の如きも前組合以来五色であったが、新らたに最も堅牢なる媒染々料五色を追加し前五色に合せ十色を公認とするに至った。而して染料はアリザリン属に限定した。」
- NDC
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- 繊維工学 (586 9版)
- 染料 (577 9版)
- 貴重書.郷土資料.その他の特別コレクション (090 9版)
- 参考資料
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- 『秩父織物変遷史 埼玉県立図書館復刻叢書 18』(埼玉県秩父繊維工業試験場秩父織物変遷史編集委員会編 埼玉県立浦和図書館 1992)
- 『秩父織物調書』(塩谷俊太郎著 埼玉県立浦和図書館(製作) 1991)
- 『埼玉県営業便覧』(田口浪三〔ほか〕編 埼玉新聞社出版局 1977)
- 『景観形成の歴史地理学 関東縁辺の地域特性』(石井英也編著 二宮書店 2008) , ISBN 9784817603296
- 『秩父市誌』(秩父市誌編纂委員会編 秩父市 1962)
- 『手織物考』(秦秀雄著 五月書房 1979)
- キーワード
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- 秩父(埼玉県)
- 織物
- 秩父銘仙
- 染料
- 商店
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000208528