東南アジアの華僑・華人研究には、華僑・華人が東南アジア域内に定住するに至る歴史や政治的・文化的背景、また、華人系企業についての研究が数多くあります。
また、個別の華人コミュニティの動態を人類学的視座から深く掘り下げる研究も多くある一方で、東南アジア域内の華人の組織やネットワークを俯瞰して捉える研究は少ない印象であり、「東南アジアの華人」を扱った研究も、多くは国単位で説明されています。
今回は、主に東南アジア域内の華人組織・コミュニティやそのネットワークに着目した日本語の文献で、比較的新しく出版されたものを中心に紹介します。
(そのものずばりのご回答にはなりませんが、多くの文献からご関心テーマについてお調べいただければと思います。)
※【】内は、当館の請求記号です。
①華人についての基本書
■ 華人社会がわかる本 : 中国から世界へ広がるネットワークの歴史、社会、文化 / 山下清海編著. -- 明石書店, 2005.【C/325.25/K1】
華人関係の入門書。第1章「華人を知る」に含まれる「華人の宗教と社会組織」、「華人ネットワーク」が参考になる。
また、第3章「世界の華人社会」に、シンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ、ベトナム、カンボジアの華人社会が概説される。
■ 世界華人エンサイクロペディア / リン・パン編 、 田口佐紀子, 山本民雄, 佐藤嘉江子訳. -- 明石書店, 2012.【G/325.25/S1】
第3部「組織」に含まれる「海外華人の組織」や「華人のビジネス組織」が参考になる。第5部「コミュニティ」には東南アジアの項目があり、東ティモールを除く10か国の華人コミュニティについてそれぞれ概説される。
原著は1998年に出版されたため、1990年代までの状況を網羅する。
②華人についての研究書
■ 現代アジアにおける華僑・華人ネットワークの新展開 / 清水純, 潘宏立, 庄国土編. -- 風響社, 2014.【AA/325.25/G1】
東アジア・東南アジアにおいて、華僑・華人のネットワークの新たな展開を主題とする。
まず華僑・華人固有のネットワークを通じた連携関係の本質について振り返り、それが東アジア・東南アジア各地の社会における歴史的経緯のもとでどのように活性化するに至ったか、華僑・華人はどのようにネットワークを利用し経済活動につなげているかという現状を把握しようとする。(本文より引用)
>出版社Webサイトによる目次紹介
http://www.fukyo.co.jp/book/b166325.html■ 華僑・華人と中華網 : 移民・交易・送金ネットワークの構造と展開 / 濱下武志著. -- 岩波書店, 2013.【AECC/325.25/K9】
濱下武志氏による華僑・華人研究の論文集。華僑・華人社会の構造と動態を、商業活動における移民・交易・送金システムを通して明らかにする。
特にタイ、マレーシア、シンガポールに詳しい。
■ 華人ディアスポラ : 華商のネットワークとアイデンティティ / 陳天璽著. -- 明石書店, 2001.【AEC/325.25/K1】
華僑・華人で経済活動を行っているアクター(華商)を対象に、かれらが国境を跨いで形成する華僑・華人社会の関係性やネットワークの特徴を抽出する。
対象は東南アジアに限定されない。
■ 東南アジアの華人教団と扶鸞信仰 : 徳教の展開とネットワーク化 / 黄蘊著. -- 風響社, 2011.【AH/2/T4】
マレーシア、シンガポール、タイで発展してきた華人教団「徳教」に焦点をあて、徳教の組織的拡大の経緯、活動展開の状況を明らかにしながら、徳教をめぐる現象、その担い手たちの信仰、生き方の様相を浮き彫りにする。
★なお、これら以外にも東南アジアの華僑・華人研究は数多くあります。
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方法:【OPAC URL】
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