レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015年9月7日
- 登録日時
- 2016/02/19 10:28
- 更新日時
- 2016/06/21 19:55
- 管理番号
- K15-02
- 質問
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解決
大正年間に発行されていた雑誌『文学世界』を通覧したい。
- 回答
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下記回答プロセスにそって、利用者には
① 『文章世界』(NCID:AN00230573)
② 『新青年』(NCID:AN00098206)
2点の所蔵館をお知らせした。
- 回答プロセス
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◆利用者は
「ウィキペディアに登録されている“藤原啓”の項目には「博文館編集部に勤務、『文学世界』の編集を担当する」とあるが、この博文館が手掛けていた雑誌『文学世界』の所蔵先はどこか。所蔵館が分かれば大正12年~昭和中頃までの『文学世界』を通覧したい。」
との要望であった。
・利用者が典拠としたウィキペディアに登録されている“藤原啓”の項目を確認
→略歴には
「少年期から俳句や小説の才能を発揮しており、1915年に博文館が手がける『文学世界』に応募した短編が1等を獲得する。これを機に1919年に上京し博文館編集部に勤務、『文学世界』の編集を担当する。」
と登録されていた。ウィキペディアの情報が正しいとすると、1915~1919年の間には『文学世界』が出版されていた事がうかがえる。
・CiNii Booksで『文学世界』を確認。
→「雑誌」のカテゴリーで9件検出されたが、何れも出版元は博文館では無かった。又、発行期間が1915~1919年にかかる『文学世界』も無かった。
・博文館の社史『博文館五十年史』(※坪谷善四郎著 博文館 1937年 NCID:BN08667890の復刻版 NCID:BB1675514X を使用)を確認した。
→pp.215-217にある「雑誌の部」から、博文館が発行していた雑誌の一覧を確認したが、『文学世界』は掲載されていなかった。
◆ウィキペディアに登録されている情報に誤りがある可能性を含めて、他資料から“藤原啓”の略歴調査を行う事とした。
・下記3つの資料より、“藤原啓”の略歴を確認した。
A.「片山亨「異色の陶芸家・藤原啓(上)(中)(下)」
『岡山経済』Vol.16No.182 No.183 No.184(岡山経済研究所 1993年 NCID:AN00331038)
B.朝日新聞社編『日本美術年鑑:昭和59年版』(東京朝日新聞発行所1984年 NCID:AN10242105)
C.撫川新『備前 藤原啓:土と炎に生きる』(毎日シリーズ出版 1981年 NCID:BN08926445)
Aの(上)p.52には
「おとなしい文学少年で、相変わらず『文章世界』や他の文芸雑誌にも詩や短編をせっせと送る投稿少年であった。そして大正四年(1915)と五年(1916)には、(正宗)白鳥の小説にヒントを得た短編小説が一等になり、二十円の賞金を貰った…。」
とあり、(中)のp.70には
「いよいよ念願の博文館『文章世界』の編集部員として採用されたのは、大正九年(1920)一月。彼は月俸二十円。田舎育ちの青年にしては当時高給であるが、これは小、中学生のころから敬二(藤原啓の本名)が『文章世界』に投稿して、何回も賞を貰っていることでその文才を高く評価されたものであろう。」
と記載されていた。
Bのp.319ページには
「大正八年(1919)上京して博文館編集部に勤める。同十五年(1926)までの博文館時代は『文章世界』編集に従事する。」
と記載があった。
⇒ AとBの情報を検証すると、”藤原啓”が編集に携わっていたのはウィキペディアで示されている『文学世界』では無く、『文章世界』であった可能性が高いと思われた。
◆しかし『文章世界』は大正九年十一月を以て発行を終了している。
上記の『博文館五十年史』「雑誌の部」にて『文章世界』を確認。すると『文章世界』は大正九年十一月以降『新文学』・『新趣味』と誌名変遷を繰り返していった事が判明。
更にCのp.161ページには
「ところが大正十五年(1926)、時の博文館総編集長・森下雨村(一八九〇~一九六五)から「君は好き勝手な勤務をしとるが、もっと、真面目に仕事をやりたまえ」と言われる。敬二が「仕事はきちんとやっとる。文句を言われることはなかろう」と口答えしたことから、けんかとなり、敬二はそのころ勤めていた『新青年』を飛び出してしまう。」
と、記載があった。
⇒ 以上をとりまとめると
・「ウィキペディアにある『文学世界』は博文館から発行されていない」
・「ウィキペディアにある『文学世界』は『文章世界』の誤りである可能性が高い。」
・「藤原啓は当初『文章世界』の編集部員であったが、後に『新青年』の編集にも携わっていた。」
利用者には上記の調査結果を報告した。
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本文学 (910 9版)
- 記録.手記.ルポルタージュ (916 9版)
- 参考資料
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- 坪谷善四郎著『博文館五十年史』(社史で見る日本経済史 ; 第77巻) , ISBN 9784843345993 (1937年版(NCID:BN08667890)の復刻)
- 片山亨著「異色の陶芸家・藤原啓(上)」『岡山経済』Vol.16 No.182(岡山経済研究所 1993年) (ISSN:03888991)
- 片山亨著「異色の陶芸家・藤原啓(中)」『岡山経済』Vol.16 No.183(岡山経済研究所 1993年) (ISSN:03888991)
- 片山亨著「異色の陶芸家・藤原啓(下)」『岡山経済』Vol.16 No.184(岡山経済研究所 1993年) (ISSN:03888991)
- 朝日新聞社編『日本美術年鑑:昭和59年版』(東京朝日新聞発行所 1984年)
- 撫川新著『備前 藤原啓:土と炎に生きる』(毎日シリーズ出版 1981年) , ISBN 4828810307
- キーワード
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- 藤原啓
- 博文館
- 文学世界
- 文章世界
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査 書誌的事項調査 所蔵機関調査 文献紹介 事実調査 利用案内
- 内容種別
- 質問者区分
- 学生 学生
- 登録番号
- 1000188352