次の資料を紹介しました。
○「ひねり」について
①『平安朝服飾百科辞典』あかね会編 講談社 1975
p.709「ひねり【捻】」の項に「単衣の袖口・褄などを絎(く)けないで、ただ捻っておく。」と記載がありました。同ページ「ひねり-ぬ・ふ【捻縫】」の項にも同様の説明があり、続いて「薄物に使用する一種の縫い方。」と記載がありました。同ページ「ひね・る【捻】」の項に「反物の縁を折りまげて絎(く)けずにおく。糊を少々使用する場合もある。」と記載がありました。
②『平安時代の文学と生活』池田亀鑑著 至文堂 1966
「女子の服装」「87晴装束」に「単(ひとえ)」の項(p.221-223)があり、「ひねるとは端をあわせて糊にてかためることであるという。その地質は綾あるいは絹で、夏は薄物もあることが源氏物語・枕草子などにより知られる」等、記載がありました。
③『紫式部日記全注釈 下巻』萩谷朴著 角川書店 1974
「五三 つごもりの夜」の語釈に「かさねひねり」の項(p.132)があり、資料②(荷田在満『羽倉考』二を引いて説明した部分)を引用して解説しています。
④『装束の日本史 平安貴族は何を着ていたか』近藤好和著 平凡社 2007
「第五章 公家女子の装束」「一 女房装束 ①重ね袿」に「単重と捻重」(p.197-198)の項があります。「捻重」については「五・八月の暑さもやや穏やかな時期の重ね桂の方法」等、記載がありました。「ひねり(捻る)」については「単をはじめとする裏地の付かない着衣での縁部分の処理法」とあり、「指に糊を付け、縁部分を小さく丸める糊捻(のりびねり)と、小さく折って糸でかがる糸捻(いとびねり)というふたつの方法があった。」と記載がありました。ただし、糊捻と糸捻の使い分けについては確認できませんでした。
➄『国史大辞典 第11巻(にた-ひ)』国史大辞典編集委員会編 吉川弘文館 1990
p.963-964「ひねり 捻」の項では、資料①とほぼ同様の説明があり、糊捻と糸捻についても言及されていました。p.964には「ひねりがさね 捻重」も立項されています。
○「糊」について
「ひねり」に用いた糊に関して明示している資料は見つかりませんでした。ご参考として平安時代の糊に関する資料『接着の秘密 暮しを変えた“つける”知恵』本山卓彦著 ダイヤモンド社 1978の「2 伝統の接着剤」「米飯の利用」の「清少納言と糊」(p.17-20)や同章「のり」の「姫糊はギンメシ糊」(p.33-34)、「姫糊の定義」(p.37-38)等に平安時代の糊について記述がありました。