レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2006/5/21
- 登録日時
- 2011/02/24 02:07
- 更新日時
- 2013/12/26 11:33
- 管理番号
- 愛知県図-02680
- 質問
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解決
質問1:新橋→横浜間で蒸気機関車が走らなくなった日はいつか。
質問2:東海道本線で蒸気機関車が走らなくなった日はいつか。
- 回答
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質問2:
【資料1】p18、p170などによれば、東海道本線(東京―神戸)の全線電化の完成は1956(昭和31)年11月19日(米原-京都間の電化による)であり、愛知県内の区間では1953(昭和28)年から1955(昭和30)年にかけて電化が完成しています。概ねこの時期以降、通常の旅客用の列車に蒸気機関車の運行はなくなったと考えられます。
質問1:
新橋→横浜間については、【資料5】p119、【資料6】p163-164などによれば、1930(昭和5)年東京-神戸間で運転が開始された特急「燕(つばめ)」は、東京-国府津(神奈川県)間がすでに電化されていたにも関わらず、東京から名古屋までC51型蒸気機関車で牽引されていました。これは、1934(昭和9)年12月1日の丹那トンネル開通まで続いたようです。これが、旅客用の定期列車で蒸気機関車が走った最後と推測されます。
定期旅客列車については以上の通りですが、貨物列車ではその後も蒸気機関車が走ったようであり、駅や車両基地などでの入替用機関車や他線からの一部区間乗入列車では昭和40年代半ばまで蒸気機関車の姿をみることができたようです(詳しくは回答プロセスを参照してください)。
なお、ご質問は「最後に走った日」ではなく「走らなくなった日」であるので、イベントなどでの蒸気機関車の復活運転は対象外と判断しました。
- 回答プロセス
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1 東海道本線に関する図書を調査
【資料1】p170
「東海道本線で活躍した蒸気機関車は、昭和31(1956)年の全線電化以前は未電化区間で旅客用のC59形やC62形、貨物用のD51形やD52形が颯爽と走っていた。全線電化後は旅客用の蒸気機関車は姿を消したが、貨物列車では一部区間で電気機関車の不足からしばらくは蒸気機関車が一翼を担っていた。/一方、駅や車両基地、貨車操車場などでの入換用機関車は、昭和40年代半ばまで活躍が続き、他線からの一部区間乗入れ列車も同じころまで蒸気機関車を見ることができた。」
【資料1】のp18の表「東海道本線の区間別の電化工事完成年月日」や【資料5】p160によると、東海道本線の全線電化の完成は1956(昭和31)年11月19日(米原-京都間の電化による)であり、愛知県内の電化の時期は以下の通り。
・浜松-名古屋:1953(昭和28)年7月21日
・名古屋-稲沢:1953(昭和28)年11月11日
・稲沢-米原 :1955(昭和30)年7月20日
2 蒸気機関車に関する図書を調査
【資料2】のp140-159に「国鉄型蒸気機関車無煙化一覧」の「路線別編」あり。「営業区間」ごとに「現役蒸気機関車最終運転区間」が掲載されている。東海道本線のうち新橋-横浜間と愛知県に関わるものは以下のとおり(支線、貨物線は除く)。多くが操車場などでの入換用か他線から乗入、イベントとして復活したものである。
・東京-熱海
1970.10.18 東京→横浜港貨物→品川(通称・高島貨物線経由) 高島線貨物線電化「さよなら蒸気機関車」
1934.11.30 東京→国府津→(御殿場線経由) SL牽引最後の下り特急「つばめ」
(備考)1972.10.14-15に汐留(貨物駅)-東横浜(貨物駅)で鉄道百年記念列車として運転
・静岡-名古屋
1971.03.31 豊橋⇔新所原(⇔遠江二俣) 二俣線乗入
(備考)1970.11.11に豊橋地区入換終了
・名古屋-岐阜
1971.07.31 名古屋港⇔稲沢 名古屋港でお別れ式
(備考)1970.9に稲沢操車場入換終了
(備考)1971.04.25に「蒸気機関車ご苦労さま」を稲沢⇔名古屋(関西本線乗入)で運転
・岐阜-米原
1970.10.10 名古屋米原 「近江路めぐり」1970.09.15-10.10(毎休日)に運転
このうち愛知県内の事例について、鉄道雑誌の当時の号(【資料9-12】など)や特集号(【資料8、13】)で確認する。
以上から愛知県内では、稲沢の機関区から関西本線や名古屋港の貨物線へ乗り入れる運転(東海道本線の稲沢-名古屋間を運転。【資料10、11】)や、豊橋から二俣線に乗り入れる運転(豊橋-新所原間を運転、【資料12】)が、1971(昭和46)年まで行われていたことが確認できるなど、一部の区間では昭和40年代半ばまで蒸気機関車の運転があったことがわかる。
また【資料8】p67に「1970(昭和45)年9月15日から10月10日にかけての日曜日、名古屋-米原間にSL牽引の行楽列車を運転.米原電化以来15年ぶりに走ったこの列車が、この地区の東海道線を走る最後のSL列車となった。」とあり、これによれば、「この地区」(稲沢-米原間?)では、1955年の電化以後蒸気機関車は運転されていなかったことがわかる。この列車については、【資料9】も参照。
3 新橋→横浜間について、上記【資料2】(p142-143)に「1934.11.30 東京→国府津→(御殿場線経由) SL牽引最後の下り特急「つばめ」」とあるところから、特急つばめについて調査
【資料5】p119、【資料6】p163-164および下記ウェブサイトを参照。
・ウィキペディア「つばめ(列車)」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%A4%E3%81%B0%E3%82%81_(%E5%88%97%E8%BB%8A)(2013.11.26確認)
なお【資料13】p31の、1972(昭和47)年10月の鉄道100年記念列車の写真の説明に「東海道線東京口は国府津までが1925(大正14)年に電化されて以来、イベント列車を除いては近代的な鉄道省-国鉄制式蒸気が営業列車を牽引して走行することはなかった。運転実績からいっても、列車密度の高い当区間でこのような蒸気牽引列車を運転することからも極めて異例な列車だが、(後略)」とあり、特急「つばめ」の存在は無視されているが、「つばめ」以後に旅客列車の運転のなかったことは推測できる。
また、貨物列車では【資料2】にある1970(昭和45)年10月18日に高島線貨物電化「さよなら蒸気機関車」として運転されたのが最後と推測されるが、【資料13】によれば、東海道貨物線、高島線を経由している。それ以前の運転状況についての詳細は確認できず(新橋-横浜間の貨物線の状況などについては【資料7】(p136-139 など)が参考になる)。
- 事前調査事項
- NDC
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- 鉄道運輸 (686 9版)
- 運輸工学.車両.運搬機械 (536 9版)
- 参考資料
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資料1:吉川文夫, 巴川享則, 三宅俊彦 著. タイムスリップ東海道線. 大正出版, 2006.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008251774-00 , ISBN 4811706560 (1108849900) -
資料2:白川淳 著. 現役蒸気機関車のすべて : 現代を走る日本の保存蒸機全73両. JTBパブリッシング, 2005. (JTBキャンブックス)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007904691-00 , ISBN 4533060528 (1108767359) -
資料3:日本の蒸気機関車. 朝日新聞社, 1975.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001144305-00 (1100969699) -
吉資料4:朝日新聞社/編. 蒸気機関車100年 : 明治・大正・昭和. 朝日新聞社, 1976.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I003346759-00 (1100969680) -
資料5:吉川文夫 著. 東海道線130年の歩み. グランプリ出版, 2002.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000004027824-00 , ISBN 4876872341 ((1108162411)) -
資料6:高松吉太郎, 佐藤常治 編. 日本の鉄道と時刻表. 新人物往来社, 1979.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001409724-00 (1100143474) -
資料7:野田正穂 [ほか]編. 神奈川の鉄道 : 1872-1996. 日本経済評論社, 1996.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002543558-00 , ISBN 481880830X (1107085603) - 資料8:「全線電化半世紀 岐阜で見た東海道線の列車,車両あれこれ」 (特集 東海道本線全線電化50年) 『鉄道ピクトリアル』 56(3) (通巻 773号) p63-67 2006.3 (請求記号:Z/686/テ)
- 資料9:「東海道本線に蒸気列車運転」 『鉄道ファン』10(12)(通巻115号) p100 1970.12 (請求記号:Z/686/16)
- 資料10:「関西線名古屋口からSL消える」 『鉄道ファン』11(7)(通巻123号) p144-145 1971.7 (請求記号:Z/686/16)
- 資料11:「消えた臨港線のC50」 『鉄道ファン』11(11)(通巻127号) p121 1971.11 (請求記号:Z/686/16)
- 資料12:「二俣線に“さよなら蒸気機関車号”運転」 『鉄道ファン』11(5)(通巻121号) p120 1971.6 (請求記号:Z/686/16)
- 資料13:「特集 SLブーム」 『鉄道ピクトリアル』. 58(6) (通巻 804号) 2008.6 (請求記号:Z/686/テ)
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資料1:吉川文夫, 巴川享則, 三宅俊彦 著. タイムスリップ東海道線. 大正出版, 2006.
- キーワード
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- 蒸気機関車
- 東海道本線
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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その他、以下の表も参照した。
・「国鉄蒸気機関車形式別配置両数一覧表」(【資料3】p142-171)
各機関区に配置された蒸気機関車の両数の変遷がわかる。例えば、名古屋、稲沢、豊橋の機関区には1971(昭和46)年まで蒸気機関車があったことがわかる。
・「線区別国鉄蒸気機関車最終運転一覧」(【資料4】p178-179)
東海道本線は昭和31年11月「米原-大阪」とあるのみ。武豊線の最終運転は昭和45年6月とわかる。貨物線は対象外。
・「国鉄蒸気機関車お別れ列車・ファンスペシャル列車一覧」(【資料13】p18-19)
1970-1975(昭和45-50)年のものを収録。
- 調査種別
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000080479