レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2019年03月26日
- 登録日時
- 2019/05/28 17:40
- 更新日時
- 2019/06/19 14:56
- 管理番号
- 堺-2019-046
- 質問
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解決
筑摩書房刊行の『現代文学大系』と『日本文学全集』は、判型や全体の構成、収録内容までそっくりだが、これらはまったく同じ本なのかどうか知りたい。
- 回答
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『日本文学全集の時代 戦後出版文化史を読む』(田坂憲二/著 慶應義塾大学出版会)に、『日本文学全集』は「『現代文学大系』69冊に月報をまとめて一冊として、図書月販(注:ほるぷ出版の前身)からセット販売されたものである」と記してある。
(美木多分館)
- 回答プロセス
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手始めに『筑摩書房図書総目録 1940-1990』(筑摩書房/編 筑摩書房)に記載がないか調べてみたが、載っていたのは『現代文学大系』だけだった。そこで「文学全集」をキーワードに関連書籍をあたっていくと、上記の『日本文学全集の時代』に行き当たった。著者の田坂憲二氏には「筑摩書房の日本文学全集の軌跡」という論文もあり(Ciniiでアクセス可能)、それを読むと「筑摩書房には、70年9月に完結した四六版全69冊の『世界文学全集』があり、これが『現代文学大系』(注:1963年~1968年刊行)と冊数も判型も同じであるから、共に月報を別冊として加え各70冊として、箱や表紙の色も新たに統一して70年11月にセット販売したものである。この時、『現代文学大系』は名称を揃えるために、『日本文学全集』の名前で刊行されたものである。」とさらに詳しく書かれている。「朝日新聞記事データベース聞蔵Ⅱ」で「図書月販」を広告検索すると、1972年8月21日の全面広告がヒットするが、その書目のなかに「生涯の伴侶となる愛蔵版/筑摩文学大系/筑摩書房 全140冊」とあるのは、この『世界文学全集』『日本文学全集』各70冊のことと思われる。この件に関して筑摩書房側の回想記がないか調べたところ、当時筑摩書房社員でのちに会長までつとめた菊池明郎の『営業と経営から見た筑摩書房』(論創社刊)に「小林さん(注:出版評論家の小林一博)はもう亡くなりましたが、「ほるぷ」の仕入部長だった時代があり、「筑摩文学大系日本文学全集」「同世界文学全集」を大いに売ってくれていましたが、我々も負けずに売りました」と記してあることがわかった。そしてここで名前の挙がっている小林一博には、図書月販での日々を描いた著書『出版半生記』があり、そこには「筑摩書房は、この時(注:医学ビデオ『現代臨床医学体系』の販売)の過剰投資を埋め合わせるため、既刊全集を次々に改装し月賦販売用商品として図書月販への依存度を強める」と書かれており、『日本文学全集』が刊行されたいきさつについても調べることができた。
- 事前調査事項
- NDC
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- 図書.書誌学 (020 8版)
- 作品集 (918)
- 参考資料
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田坂憲二 著 , 田坂, 憲二, 1952-. 日本文学全集の時代 : 戦後出版文化史を読む. 慶應義塾大学出版会, 2018.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I028869341-00 , ISBN 9784766425116 -
菊池明郎 著 , 菊池, 明郎, 1947-. 営業と経営から見た筑摩書房. 論創社, 2011. (出版人に聞く ; 7)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I023157811-00 , ISBN 9784846010775 -
筑摩書房. 筑摩書房図書総目録 : 1940-1990. 筑摩書房, 1991.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002130235-00 , ISBN 4480000011 - 日本文学全集 1 筑摩書房 1970
- 現代文学大系 1 筑摩書房 1967
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田坂憲二 著 , 田坂, 憲二, 1952-. 日本文学全集の時代 : 戦後出版文化史を読む. 慶應義塾大学出版会, 2018.
- キーワード
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- 筑摩書房
- 現代文学大系
- 日本文学全集
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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筑摩書房の日本文学全集の軌跡(平成31年3月26日現在)
https://ci.nii.ac.jp/els/contents110004680005.pdf?id=ART0007410667
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000256485