レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016/7/28
- 登録日時
- 2016/08/18 00:30
- 更新日時
- 2017/05/09 13:59
- 管理番号
- B160716192701
- 質問
-
解決
産業革命以前のイギリスでは、機械ではなく手作業で綿花から糸を作っており、「綿花を摘む」「棒で叩く」「水にさらして掬いとる」「薄く延ばして丸めて糸にする」などの工程があったようです。
産業革命以前のイギリスまたはヨーロッパにおける、綿から糸を作る各工程について、図解した資料があれば紹介してください。
- 回答
-
下記の[調査済み資料及びデータベース]に記載の情報源を調査しましたが、産業革命以前のイギリスにおける、綿から糸を作る工程を図解した資料は確認できませんでした。
なお、調査の過程で、18世紀のフランスにおける、綿から糸を作る工程を図解したと思われる資料(1)及び(2)が見つかりました。レファレンスのご依頼文にある工程のすべてを図解してはいませんが、参考としてご紹介します。
(【 】内は当館請求記号です。)
(1)
ジャック・プルースト 監修・解説. フランス百科全書絵引. 平凡社, 1985.9 【UM87-9】
p.40に、「Economie Rustique, Culture et Arsonnage du Coton.」と題する図が掲載されています。この図の解説として、「上段は西インドにおけるワタの栽培,綿の荷造り,船積みなどの作業を示す。中段は打綿作業。(一部略)下段はワタの枝,種子,口を開けた果実,袋に綿を詰め込む棒,左側は打綿用具である。」(p.41)とあります。
また、p.41には、「Economie Rustique, Coton.」と題する4枚の図が掲載されています(ページ上段と下段に、それぞれ2枚の図を掲載)。ページ上段左図の解説として、「壁に向かって整経職人が経糸をそろえている。経糸は織機の上で緯糸と交差するように長く伸ばされている。(一部略)下段は綿実から種子を除くために使う足踏み式と手動式の綿繰り機,大小二つの梳綿具,布を仕上げるための馬毛を詰めた袋状のものおよび経糸の詳細。」(p.41)とあります。このほか、ページ上段右図及びページ下段左図の解説として、「梳綿,つや出し,整経台,紡ぎの詳細。」(p.41)とあり、ページ下段右図の解説として、「綿布の手織り機とその側面図。」(p.41)とあります。
(2)
島尾永康 編・解説. ディドロ百科全書産業・技術図版集. 朝倉書店, 2005.6 【DC423-H1】
p.16に、「19 木綿」と題する図が掲載されています。この図は、資料(1)に掲載された「Economie Rustique, Culture et Arsonnage du Coton.」と題する図の上段部分と同一のものです。この図の解説として、「奴隷(右端)が実棉を摘み取っている.その仲間がそれを吟味し,女性(図4)が綿繰機にかけて綿毛と種子を分離する.ついで,リント(繰綿)を梱包する(図5).しっかりと詰めるために湿らせる(左端).(後略)」(p.16)とあります。この解説文中の(図4)及び(図5)は、図中に振られた番号を指しています。
また、p.17には、「20 綿弓」と題する図が掲載されています。この図は、資料(1)に掲載された「Economie Rustique, Culture et Arsonnage du Coton.」と題する図の中段部分と同一のものです。この図の解説として、「職人は低く腰掛けて(百科全書の図はしゃがんでいる),左手で弓をもち,右手の打棒で弦(腸線)を叩き続けてそれを振動させて繰綿をほぐす.」とあります。ただし、この図は「綿弓を使って繰綿をほぐす中国人の絵」(p.17)であり、「ヨーロッパでは,弓は綿ではなく,羊毛の櫛入れに使われた.」(p.17)と解説にあることから、18世紀のフランスにおける、綿から糸を作る工程を描いたものではないようです。
この資料(1)及び(2)は、18世紀のフランスにて刊行された『百科全書』(原題:Encyclopedie, ou Dictionnaire raisonne des sciences, des arts et des metiers)の図版集に掲載された銅版図をまとめた資料であり、資料(1)の「刊行のことば」(ページ番号の表記なし)及び資料(2)のp.i(ページ番号の表記なし)にその旨の記述がありました。
この原著である『百科全書』の図版集は、大阪府立中央図書館(https://www.library.pref.osaka.jp/site/central/)が提供する「デジタル画像 フランス百科全書 図版集」(https://www.library.pref.osaka.jp/France/Nogyo/index.html)にて公開されており、左カラムの目次の「第1部 天然資源の開発」の「1-農業」の「綿」のページから資料(1)及び(2)に掲載された図が閲覧できるようですので、参考としてお知らせします。
「綿加工の様子,図1・2綿繰り機(足踏み式・手動式),図3梳綿具大小,図5布を仕上げる馬毛の袋,図4経糸の詳細」(https://www.library.pref.osaka.jp/France/Nogyo/men/men1.html)が、資料(1)のp.41のページ上段左図となります。
「梳綿,つや出し,整経台,紡ぎの詳細・・・<1>」(https://www.library.pref.osaka.jp/France/Nogyo/men/men2.html)が、資料(1)のp.41のページ上段右図となります。
「梳綿,つや出し,整経台,紡ぎの詳細・・・<2>」(https://www.library.pref.osaka.jp/France/Nogyo/men/men3.html)が、資料(1)のp.41のページ下段左図となります。
「綿布の手織り機とその側面図」(https://www.library.pref.osaka.jp/France/Nogyo/men/men4.html)、資料(1)のp.41のページ下段右図となります。
「西インドの綿栽培・荷造り・船積み,中図打綿作業,下図綿の枝・種子・果実・袋に詰めこむ棒,左側打綿用具」(https://www.library.pref.osaka.jp/France/Nogyo/men/men5.html)が資料(1)のp.40に掲載の図及び資料(2)のp.16に掲載の図となります。
なお、この原著である『百科全書』については資料(3)を、その図版集については資料(4)を当館でも所蔵していますが、上記の図の掲載はいずれも確認できませんでした。
(3)
国立国会図書館請求記号:034-E562
タイトル:Encyclopedie, ou dictionnaire raisonne des sciences, des arts et des metiers, par une societe de gens de lettres. Mis en ordre & publie par M. Diderot; & quant a la partie mathematique, par M. D’Alembert ...
版表示:3me ed.
出版事項:Geneve ; Neufchatel : Pellet : Societe Typographique, 1778-79.
形態/付属資料:36 v. : ill., ports., ; 26 cm.
注記:Vol. 10, 17, 19, 22, 24, 26, 27, 29, 31-35: nouv. ed.
個人著者標目:
Diderot, Denis, 1713-1784.
Alembert, Jean Le Rond d’, 1717-1783
(4)
国立国会図書館請求記号:034-E562
タイトル:Recueil de planches, pour la nouvelle edition du Dictionnaire raissone : avec leur explication.
出版事項:Geneve : Pellet, 1779.
形態/付属資料:3 v. : plates (part fold.) ; 25 cm.
個人著者標目:
Diderot, Denis, 1713-1784.
Alembert, Jean Le Rond d’, 1717-1783
[調査済み資料及びデータベース]
末尾に*が付いている資料は、国立国会図書館デジタルコレクション(http://dl.ndl.go.jp/)国立国会図書館/図書館送信参加館内公開資料です。
・クリスティーナ・マーティン 著 ; 山田美明 訳. 優美な織物の物語 : 古代の知恵、技術、伝統. 創元社, 2015.8 【KB441-L68】
・植村和代 著. 織物. 法政大学出版局, 2014.12 【PB111-L7】
・德武正人 著. 繊維の歴史とよもやま話. ブックコム, 2014.12 【PB21-L7】
・塩谷昌史 著. ロシア綿業発展の契機 : ロシア更紗とアジア商人. 知泉書館, 2014.2 【DL634-L6】
・藤木勝 著. 綿から糸を作る道具と機械の物語 : 付・文学作品にみる技術と人. 家政教育社, 2013.1 【DL634-L1】
・澤田貴之 著. アジア綿業史論 : 英領期末インドと民国期中国の綿業を中心として. 八朔社, 2003.2 【DL634-H2】
・日下部信幸 著. イギリスのテキスタイル・コスチューム博物館のすべて : 訪ね歩いた150ミュージアム等 : 写真で紹介. 家政教育社, 2002.12 【DL621-H1】
・もめんのおいたち : 綿畑から家庭へ. [1998]増補改訂版. 日本綿業振興会, 1998.2 【DL634-G9】
・武部善人 著. 綿と木綿の歴史. 新装版. 御茶の水書房, 1997.6 【DL634-G6】
・森芳三 著. イギリス綿花飢饉と原綿政策. 御茶の水書房, 1996.12 【DL634-G7】
・辻ますみ 著. ヨーロッパのテキスタイル史. 岩崎美術社, 1996.6 【KB441-G21】
・E.J.ホブズボーム 著 ; 浜林正夫 [ほか]訳. 産業と帝国. 未来社, 1996.1 【DC411-G1】
・レジーヌ・ペルヌー [ほか]共著 ; 福本直之 訳. 「産業」の根源と未来 : 中世ヨーロッパからの発信. 農山漁村文化協会, 1995.12 【DC383-G1】
・アネット・B.ワイナー, ジェーン・シュナイダー 編 ; 佐野敏行 訳. 布と人間. ドメス出版, 1995.2 【DL611-E11】
・日高千景 著. 英国綿業衰退の構図. 東京大学出版会, 1995.1 【DL634-E23】
・熊谷次郎 著. イギリス綿業自由貿易論史 : マンチェスター商業会議所1820~1932年. ミネルヴァ書房, 1995.1 【DE342-E7】
・熊岡洋一 著. 近代イギリス毛織物工業史論. ミネルヴァ書房, 1993.8 【DL637-E9】
・富沢修身 著. アメリカ南部の工業化 : 南部綿業の展開(1865-1930年)を基軸にして. 創風社, 1991.12 【DC544-E1】
・F.メンデルス 他著 ; 篠塚信義 [ほか]編訳. 西欧近代と農村工業. 北海道大学図書刊行会, 1991.5 【DL331-E19】
・小松芳喬 著. 英国産業革命史. 早稲田大学出版部, 1991.3 【DC413-E11】
・S.D.チャップマン 著 ; 佐村明知 訳. 産業革命のなかの綿工業. 晃洋書房, 1990.5 【DL634-E6】
・武部善人 著. 綿と木綿の歴史. 御茶の水書房, 1989.6 【DL634-E3】
・小松芳喬 著. 産業革命期の企業者像 : 綿業王アアクライト伝考. 早稲田大学出版部, 1979.11 【GK413-5】
・J.ギャンペル 著 ; 坂本賢三 訳. 中世の産業革命. 岩波書店, 1978.12 【GG117-36】
・ケネス・ハドソン 著 ; 青木国夫 監修 ; [片岡哲史, 高柳雄一] [訳]. ヨーロッパ産業遺跡・博物館ガイド. 日本放送出版協会, 1975.12 【DC386-H1】
・ディドロ, ダランベール 編 ; 桑原武夫 訳編. 百科全書 : 序論および代表項目. 岩波書店, 1974.3 【HD111-22】
・西村孝夫 著. インド木綿工業史. 未来社, 1966 【586.22-N811i】*
・村山高 著. 世界綿業発展史. 日本紡績協会, 1961 【586.22-M951s】*
・井上幸治 編. ヨーロッパ近代工業の成立. 東洋経済新報社, 昭和36 【502.3-I436y】*
・津田隆 著. 世界綿業資本の発展 : 各国経済発展に関する研究. 黎明書房, 1948 【586.21-Tu665s】*
・新井幸長 著. 英国の綿業を視る. 紡織雑誌社, 昭和5 【590-315】*
・Giorgio Riello. Cotton : the fabric that made the modern world. Cambridge University Press, 2013 【DL634-B6】
・The British cotton trade, 1660-1815 / editor, Beverly Lemire. Pickering & Chatto, 2010 【DL634-B4】
・The fibre that changed the world : the cotton industry in international perspective, 1600-1990s / edited by Douglas A. Farnie and David J. Jeremy. Oxford University Press, 2004 【DL634-B1】
・The European linen industry in historical perspective / edited by Brenda Collins and Philip Ollerenshaw. Oxford University Press, 2003 【DL641-B1】
・5000 years of textils / edited by Jennifer Harris. British Museum Press, in association with the Whitworth Art Gallery and the Victoria and Albert Museum, c1993 【KB441-A71】
・Scottish textile history / edited by John Butt and Kenneth Ponting. Aberdeen University Press, 1987 【DL621-A9】
・Spinners and weavers of Auffay : rural industry and the sexual division of labor in a French village, 1750-1850 / Gay L. Gullickson. Cambridge University Press, 1986 【DL621-A10】
・The English cotton industry and the world market, 1815-1896 / by D. A. Farnie. Clarendon Press : Oxford University Press, 1979 【DL634-28】
・The cotton weavers of Bengal, 1757-1833 / Debendra Bijoy Mitra. 1st ed. Firma KLM, 1978 【DL634-27】
・A history of the West of England cloth industry / K.G. Ponting. Macdonald, 1957 【DL637-B2】
・NDL-OPAC (https://ndlopac.ndl.go.jp/)
・国立国会図書館サーチ (http://iss.ndl.go.jp/)
・国立国会図書館デジタルコレクション (http://dl.ndl.go.jp/)
・EBSCOhost [当館契約データベース]
・ProQuest Central [当館契約データベース]
・ジャパンナレッジLib [当館契約データベース]
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・Internet Archive (http://www.archive.org/)
・Google books (https://books.google.co.jp/)
・阪南大学 貴重書アーカイブ (http://www2.hannan-u.ac.jp/lib/archive/index.html)
インターネット及びデータベースの最終アクセス日は2016年7月26日です。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
-
・竹田泉著『麻と綿が紡ぐイギリス産業革命』(ミネルヴァ書房,2013年)
※手作業の時代に関する記述および図解はありませんでした。
・ひびあきら編『ワタの絵本』(農山漁村文化協会,1998年)
※日本のものについては簡単な図解がありました。
・堀江英一「イギリス綿業マニュファクチュアの企業構造 - 綿業企業の歴史的類型(1) -」(『経済論叢』京都大学経済学会,96(3),1965年)(http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/133083)
※p.5に、ランカシャにおける手工業での紡績について、作業工程の概説と各作業の英語表記があります。図解はありませんでした。
- NDC
-
- 繊維工学 (586 9版)
- 参考資料
- キーワード
-
- 綿
- 繊維
- 紡績
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000196092