今回のECFAの締結は、東アジア地域における初めての自由貿易協定であるため、台湾企業の競争力向上(とくに、日本や韓国と競合している産業)につながる可能性は高い。
ただし、国内での雇用確保、所得上昇については政府は楽観的な見方をしている一方で、ECFAを反対している野党などからは台湾の資本や技術が中国に持っていかれるのではないかという危機感を持っているのも事実である。また、最近台湾における貧富の差が前年よりも広がったとの報道もあった。ECFAの発効でさらに格差が広がる可能性は現在のところ、否定できない。
大陸への移住については、三通の解禁後に中台間の飛行ルートが劇的に変更したことに伴い、飛行時間も大幅に減少した(例:台北=上海間がこれまでの3時間から90分)。時間の減少により、台湾ビジネスマンの移住は歯止めはすでに掛かっているかもしれない。
大陸からの資本流入については、コストが高いこと、昨年7月から始まったこともあり、まだ低調と言ってよい。製造業ではメインテナンス部門、サービス業での参入は中心になると考えられるが、ECFAの発効後に何らかの変化があるかもしれない。
先日、台湾の立法院でECFAの承認をしたので、来年1月1日より正式に発効する。品目の拡大は今年12月に開催されるであろう中台トップ会談よりも、ECFA発効後に交渉が行われるのではないか。
台湾の自動車産業についてはECFAの影響は極めて限定的。それは、自動車が関税撤廃のリストに入っていないためである。ただし、自動車に関係する一部の部品がリストに入ったため、今後台湾の自動車企業が中国へさらに投資をして現地生産を行う動きはあるかもしれない。