レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016年12月14日
- 登録日時
- 2017/02/12 15:59
- 更新日時
- 2017/03/07 12:39
- 提供館
- 岐阜県図書館 (2110001)
- 管理番号
- 岐県図-2354
- 質問
-
未解決
関ヶ原にある桃配山の名が、壬申の乱の際大海人皇子が兵士たちに桃を配ったことに由来するという逸話の典拠は何か。
- 回答
-
逸話の典拠になったとはっきり分かる資料は見つけられなかった。
参照した資料で逸話に関する記載があったもののうち、最も古いものとしては『新撰美濃志』(岡田啓著 江戸後期成立)があり、以下のように記載されている(一信社刊行の翻刻(1931年)を使用。不破郡・野上村の頁p.59)。
---(引用始め)--------------------------
『天武天皇行宮址』は村の西南なる桃賦(モモクバリ)といふ原野にあり。…(中略)…『桃くばり』とは天武天皇御軍の兵どもに、桃を配分し給ひしより起れる地名なりともいへり。
---(引用終わり)------------------------
また、『関ヶ原町史 通史編別巻』(関ヶ原町,1993年刊)の「桃配山」の頁(p.249)にも記載されていたが、典拠は示されていなかった。
桃配山(桃賦)に天武天皇の行宮があったとされることについては、以下の資料に記載がある。こちらには質問の逸話は記載されていない。
・『美濃国古蹟考』(平(佐分)清円編著 宝暦年間(1751-64)成立?)
… 巻之六第一節「帝皇行宮」・天武天皇の頁に記載がある。(岐阜郷土出版刊行の翻刻(1988年を使用。p.113)
・『美濃明細記』(伊東実臣著 元文3年(1738年)成立)
… 巻第一・野上行宮の頁に「不破郡野上邑西桃賦行宮の地也」との記載がある。(一信社刊行の翻刻(1932年)を使用。p.20)
・『美濃雑事紀』(間宮宗好編 江戸後期成立?)
… 「天武天皇行宮」(p.452)「桃賦」(p.608)の頁に記載がある。(一信社刊行の翻刻(1932年)を使用。上記『美濃明細記』と合冊刊行したもの)
・『不破郡史 下巻』(不破郡教育会,1927年刊)
… 「桃配山」の頁に記載あり(大衆書房刊行の復刻加筆訂正版(1979年)を使用。p.587-588)
・『大日本地名辞書 増補版第5巻』(吉田東伍著 冨山房,1902年刊)
… 「野上行宮」の頁。桃配山に行宮があったというのは、関ヶ原の戦いと壬申の乱を混同したことによる誤りではないかとの旨を記載(2002年刊の新装版第2版を使用。p.403)。
※ 江戸時代資料の成立時期については、『岐阜県の地名(日本歴史地名大系)』(平凡社,1989年刊)の解題に拠る。
なお、関ヶ原町歴史民俗資料館のウェブサイトでは、「桃配山」の項目で質問の逸話を紹介した後、「「日本書紀」等で記述はなく、その根拠については未だ謎に包まれています。」としている。
関ヶ原町歴史民俗資料館「壬申の乱」:http://www.rekimin-sekigahara.jp/main/jinsin_war/ 2017年2月確認
- 回答プロセス
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1 『関ヶ原町史』、『不破郡史』を確認。逸話の典拠については記載なし。
2 関ヶ原町歴史民俗資料館のウェブサイトを参照。根拠は不明とある。
3 『美濃明細記』、『新撰美濃志』など、江戸期の地誌の翻刻を参照。『新撰美濃志』に逸話の記載あり。
4 郷土関係雑誌記事検索、CiNii、国会サーチを検索。関連論文を見つけられず。
- 事前調査事項
- NDC
-
- 中部地方 (215 9版)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000209717