はっきりとこの区間の金額を記載している資料は見つけられませんでしたが、次の資料に関連する記載がありました。引用して紹介いたします。
①『日本鉄道史 中編(自明治26年度至同39年度)』鉄道省 1921
p459-「第十五 参宮鉄道」
この中でp460に運賃についての記載がありました。
「明治三十一年三月十五日ヨリ旅客賃金ヲ改正シ三等一哩ノ率ヲ一銭五厘トシ二等ヲ三等ノ三割増、一等ヲ二等ノ二倍トス、尋テ再ヒ之ヲ改正シ二等ヲ三等ノ五割増、一等ヲ三等ノ三倍トス、三十四年六月十五日ヨリ三等一哩ノ率ヲ一銭八厘トシ二等、一等ノ三等ニ對スル割合ハ従前ノ通トス」
また伊勢新聞マイクロフィルムの参宮鉄道全線開通(明治30年11月11日)、運賃改正(明治31年3月15日、明治34年6月15日)前後の記事・広告を探してみたところ、次のような記述が見られました。
②伊勢新聞マイクロフィルム・明治30年11月11日
参宮鉄道株式会社の広告「開業広告 時刻表竝賃金 左の通り」として時刻表を掲載し、その横に「一、宮川駅筋向橋駅間 賃金貮銭
一、筋向橋山田間全上
一、津宮川間従前の通」と記載されています。翌日11日にも同内容の広告が記載されています。どちらも荒い画像となりますが11日の方が比較的鮮明に見ることができます。
③伊勢新聞マイクロフィルム・明治31年3月15日
1面の下方の小さな記事「汽車賃値上げ実施 関参両鉄道とも愈(いよい)よ今(こん)十五日より一哩(まいる)一銭五厘の割に値上げ実行す」
①のp459には「(前略)津山田間二十六哩十五鎖全通ス」とあります。1鎖(チェーン)=80分の1哩となりますので、ここから明治31年・34年の値上げ時の運賃を計算してみると39銭3厘ほどになります。(392.8125厘)
ただし、実際の金額を記載した資料は見つけられませんでしたので、あくまでも参考までに計算上の金額として紹介させていただきます。
この他には参宮鉄道の運賃を記載した資料を見つけることができませんでした。
調査済みの資料は次の通りです。
『三重県統計書 明治23年』三重県 1892
『明治前期全国府県別統計集成 12 復刻版 (岐阜県 三重県の統計)』藤井 隆至/編 東洋書林 1999
『参宮特急史』エリエイ出版部 1980
『想い出の伊勢電特急』椙山 満/編集 椙山満 1987
『週刊歴史でめぐる鉄道全路線 NO.25(紀勢本線/参宮線/名松線)』朝日新聞出版 2010
『日本の地方鉄道網形成史』武知 京三/著 柏書房 1990
『近代日本と地域交通』武知 京三/著 臨川書店 1994
『地域交通体系と局地鉄道』三木 理史/著 日本経済評論社 2000
『50年のあゆみ』近鉄津新町駅 1984
『県史あれこれ』三重県総務部学事文書課 1990
『日本の国鉄』原田 勝正/著 岩波書店 1984
『津市史 第5巻』西田 重嗣/執筆 津市役所 1969
『伊勢市史 第4巻 近代編』伊勢市 2012
『伊勢市史』伊勢市役所 1968
『宇治山田市史 上巻』宇治山田市役所 1929
『三重県史 資料編 近代3 (産業・経済)』三重県 1988
『近代日本商品流通史資料 第11巻(鉄道局年報) (鉄道輸送主要貨物数量表』逓信省鉄道局/編 日本経済評論社 1979