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レファレンス事例詳細(Detail of reference example)

[転記用URL] http://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000078741
提供館
(Library)
愛知芸術文化センター愛知県図書館 (2110019)管理番号
(Control number)
愛知県図-01192
事例作成日
(Creation date)
2003/8/1登録日時
(Registration date)
2011年02月21日 02時02分更新日時
(Last update)
2011年12月27日 17時53分
質問
(Question)
「社会主義」と「共産主義」という日本語に最初に翻訳したのは誰か。
回答
(Answer)
誰が最初に「社会主義」、「共産主義」という翻訳語を用いたかはっきりとはわかりませんでした。それぞれの語が使用された最古の文献は、調査の範囲内では以下のとおりですが、それ以前に他の使用者がいる可能性もあります。

・「社会主義」 
「闢邪論 第二」『朝野新聞』論説(1879(明治12)8月12日 第1777号)(資料14に収録。p.12-14)
資料14の解題者である西田長壽は、この論説の筆者を、朝野新聞の末廣重恭(局長)か高橋基一(印刷長)のうち、おそらく前者の末廣重恭ではないかと推測していますが、断定はできないようです。使用者が明確な場合に限れば、やや時代は下りますが、次の図書資料に「社会主義」という語の使用が確認できました。
久松定弘編著『理想境事情-一名社会党沿革』(進学舎、1882(明治15)年2月出版)
(国立国会図書館近代デジタルライブラリーで閲覧できます。 http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/784378/1
ウールセイ著・宍戸義知訳『古今社会党沿革説』1巻(1882(明治15)年5月序、7月出版)
(国立国会図書館近代デジタルライブラリーで閲覧できます。 http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/991337/1
                                    
・「共産主義」
藤林忠良・加太邦憲編『仏和法律字彙』(1886(明治19)年出版、標題紙には「1885」とあり)(資料1『近代日本学術用語集成 第2巻』に収録。20p)
ただし、「共産ノ主義」という語であれば、これ以前の、城多虎雄「論欧州社会党」『朝野新聞』連載(1882(明治15)6月23日 第2608号)(資料14に収録。p.31-51)で使用されていたことが確認できました。

なお、資料10『日本国語大辞典』p436には、「『―主義』という言い方がまだ確立されていなかった明治初期は、「哲学字彙」に「communism 共産論」とあるように「―論」が多かった。しかし、ほぼ同じ頃、「社会主義」が現れ、まもなく一般化したのに伴って、「共産論」も「共産主義」と改訳された。」とあります。『哲学字彙』は1881(明治14)年に刊行されたものです。
また資料6『近代漢語の研究』p76には、「「共産論」から「共産主義」への改訳は明治10年代の末ごろ(『仏和法律字彙』1886が初出)のようである。」とあります。
回答プロセス
(Answering process)
資料2『近代漢語研究文献目録』の「社会主義」(p127)、「共産主義」(p61)の項に掲載されている資料(資料3、資料4、資料5など)を見る。紹介されている中で最も古い文献が、最初の使用例である可能性があると考えた。

「社会主義」→ウールセイ原著・宍戸義知訳『古今社会党沿革説』1882(明治15)年(資料3、資料4による)
「共産主義」→藤林忠良・加太邦憲『仏和法律字彙』1886(明治19)年(資料5による)

次に、インターネット上の検索エンジン(Google)を使って、「社会主義」「明治初期」「受容」などの単語で検索した結果、大学の機関リポジトリを通じて全文公開されている関連学術論文2件(資料11、資料12)を探し出した。これら2件の論文に紹介されていた1870~80年代の社会主義、共産主義関連文献(図書、雑誌論文、新聞記事)の本文を、資料13、14や国立国会図書館近代デジタルライブラリー、西周『百学連環』(1871(明治4)年頃)(資料15に収録)で調査したところ、前述の資料よりも古い時期に、「社会主義」と「共産ノ主義」が使用されている例が確認された。

「社会主義」→「闢邪論 第二」『朝野新聞』論説(1879(明治12)8月12日 第1777号)(資料14による)
久松定弘編著『理想境事情-一名社会党沿革』(進学舎、1882(明治15)年2月出版)(国立国会図書館近代デジタルライブラリーによる)
「共産ノ主義」→城多虎雄「論欧州社会党」『朝野新聞』連載(1882(明治15)6月23日 第2608号)(資料14による)

ちなみに、「社会主義」以外の訳語例として「社会説」「社会党」「会社之説」「社会論」などが、また、「共産ノ主義」以外の訳語例として「通有之説」「共同党」「共産党」「共産論」などが、1870年頃~1882年にかけての文献で使用されていたことがわかった。
事前調査事項
(Preliminary research)
NDC
語源.意味[語義]  (812 9版)
参考資料
(Reference materials)
資料1『近代日本学術用語集成 第2巻』 龍溪書舎 1988.6 (1104097048 R/031/キン/409704)
資料2『近代漢語研究文献目録』 李漢燮/編 東京堂出版 2010.2  (1109911653 R/814.03/イ/991165)
資料3『明治大正 新語俗語辞典』 樺島忠夫/[ほか]編 東京堂出版 1984.5  ((1101355176 R/813.7/カ/))
資料4『明治・大正・昭和の新語・流行語辞典』 米川明彦/編著 三省堂 2002.10  ((1108230825 R/814.7/ヨネ/823082))
資料5『現代に生きる幕末・明治初期漢語辞典』 佐藤亨/著 明治書院 2007.6  ((1109195524 R/813.4/サト/919552))
資料6『近代漢語の研究 日本語の造語法・訳語法』 高野繁男/著 明治書院 2004.11  ((1108610083 814/タカ/861008))
資料7『明治事物起原 2』石井研堂/著 筑摩書房 1997.6  (1107281392 031.4/イシ/728139)
資料8『社会主義事始 「明治」における直訳と自生』 山泉進/編著 社会評論社 1990.5  (1105511850 B/309.02/ヤマ/551185)
資料9『ラーネッド博士伝 人と思想』 住谷悦治/著 未来社 1973.11  (1100191533 B/289.3/ラ10/)
資料10『日本国語大辞典 第4巻』第2版 小学館 2001.4 (1107968601 R/813.1/シヨ/796860)
資料11 鈴木啓史『利潤分配制と社会主義-日本における大正期から昭和戦後期に至るまでの受容と変容の歴史』 大阪大学大学院人間科学研究科博士学位論文、2010年度、p.128-129.( http://ir.library.osaka-u.ac.jp/metadb/up/LIBCLK003/f_2010_24160h.pdf
資料12 佐々木敏二「<研究>日本の初期社会主義(1)」『経済資料研究』7号(1974)、p.1-12. ( http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/79680/1/ade_7_1.pdf
資料13『明治文化全集 2巻 自由民権篇』第4版 日本評論社 1967.12 (1101121800 081.6/メ-2/2)
資料14『明治文化全集 15巻 社会篇(続)』第2版 日本評論社 1968.5  (1101121936 081.6/メ-2/15)
資料15『西周全集 1巻』日本評論社 1945.2  (1100422434 B/121.9/ニ2/1-1)
キーワード
(Keywords)
社会主義
共産主義
翻訳
照会先
(Institution or person inquired for advice)
寄与者
(Contributor)
備考
(Notes)
「社会主義」の語を最初に用いたのは、1876(明治9)年に同志社英学校に着任したD.W..ラーネッド(1848-1943)だとする文献もあります。
資料7『明治事物起原』の、「わが国にて最初に社会主義といふ語を用ひた人」(p246)では、「京都同志社の教師ラーネツト博士」が、「明治十六年秋経済学を教授」する中で、「社会主義」について述べたとし、「ラ博士が、社会主義なる語を用ひた最初の人であるか否かは、私も断言し得ないのであるけれども、兎に角、それが明治十六年秋のことであつたのだから、可なり古いことであるといふ点は、何人も之を承認するであらうと思ふ。(後略)」(経済往来第五巻一号、安部磯雄氏の文による)」とあります。
資料8『社会主義事始』p283には、「「社会主義」という翻訳語が、いつ頃から使用されはじめたかについては、雑誌『批判』誌上で、住谷悦治と田中惣五郎との論争がおこなわれたことがあるが、1880年頃、同志社大学においてラーネッド教授の講義においてであろうといわれている。」とあります。「1880(明治12)年頃」が正しければ、「回答」で紹介した文献よりも古い可能性があります。

この点について確認するため、資料9『ラーネッド博士伝』(住谷悦治著)を参照したところ、「わが国における「社会主義」という語の最初の使用者」(p265~)、「「社会主義」の訳字」について」(p278~)などの節がありました。これによれば、資料7の安部磯雄の言う「社会主義という語」は、日本訳語としての「社会主義」ではなく、英語でいうSocialsmに該当すべきものであり(p267)、また、ラーネッドは1878(明治11)年から原書による経済学の講義を、翌1879年から自身の講義案による経済学の講義を行い、その講義案を門弟の伊勢時雄が翻訳して1880~1881年(明治13~14年)に『七一雑報』誌上に掲載し、これがのち1886(明治19)年『経済新論』として出版されたが、その中には「社会主義」、「共産主義」の文字は見えず、「社会説」「社会党」「共産党」などが使用され、Socialismなどの訳語として「社会説」「社会党」が使用されていると指摘しています(p282)。

以上によれば、当時のラーネッドの講義は英語で行われたようであり、日本人による講義案の翻訳を含めても、ラーネッドが「社会主義」という訳語の最初の使用者とは見なしがたいと判断できます。
調査種別
(Type of search)
内容種別
(Type of subject)
質問者区分
(Category of questioner)
登録番号
(Registration number)
1000078741解決/未解決
(Resolved / Unresolved)
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