レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2008/04/23
- 登録日時
- 2010/04/27 02:00
- 更新日時
- 2011/01/19 15:00
- 管理番号
- 長野市立長野-08-001
- 質問
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未解決
アインシュタインが来日したときに残した言葉の原文が掲載されている資料があるか。
「世界の未来は進むだけ進み、その間に幾度か争いは繰り返されて、最後の戦いに疲れる時が来る。そのとき人類は真の平和を求めて、世界の盟主をあげねばならない。この世界の盟主なるものは、武力や金力でなく、あらゆる国の歴史を抜き越えた、もっとも古く、もっとも尊い家柄でなくてはならぬ。世界の文化はアジアに始まってアジアに帰る。それはアジアの高峰、日本に立ち戻らねばならない。われわれは神に感謝する。われわれに日本という尊い国をつくっておいてくれたことを」
『世界に誇る日本の道徳力』 石川佐智子/著 コスモトゥーワン p22-23
- 回答
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原文の確認はできなかった。
アインシュタインの言葉ではなくドイツの国法学者シュタインの言葉をもとにされたものではないかという説もある。
- 回答プロセス
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「アインシュタイン講演録」 アインシュタイン/述 東京図書
「アインシュタイン日本で相対論を語る」 アルバート・アインシュタイン/著 講談社
「アインシュタイン・ショック1~2」 金子務/著 岩波書店
「アインシュタインの東京大学講義録」 杉元賢治/編著 大竹出版
「アインシュタイン選集1~3」 アインシュタイン/著 共立出版
「図説アインシュタイン」 千葉透/文 河出書房新社
「おしえて、アインシュタイン博士」 アリス・カラプリス/編 大月書店
上記のアインシュタインに関する所蔵資料を調べるが特に記載なし。
国立国会図書館に照会。
同図書館より、以下のような回答を得る。
ご照会の“世界の未来は進むだけ進み(後略)”という言葉の出典について、
当館所蔵の下記(1)~(18)の資料を通覧する限りでは、その原文の確認はできません
でした。
(1)『今、世界が注目する「日本文明」の真価』清水馨八郎. 祥伝社, 2002.12.
(祥伝社黄金文庫)【EC211-H10】
「アインシュタインの予言」(pp.257-259)の項に、“近代日本の発展ほど世界を驚かせたものはない。一系の天皇を戴いていることが今日の日本をあらしめたのである。私はこのような尊い国が世界に一ケ所くらいなくてはならないと考えていた。”とあり、これに引き続きご照会の文章を記載していますが、典拠情報はありません。
(2)『新歴史の真実』前野徹. 講談社, 2005.3. -- (講談社+α文庫)【GB411-H73】
「第6章:アインシュタインの予言 -アインシュタインが神に感謝した理由」
(pp.254-256)に、(1)と同じ文章が紹介されていますが、典拠情報はありません。
(3)『真実のメシア=大救世主に目覚めよ! 』河内正臣.山手書房新社, 1992.11【H81-E40】
p.66:「世界の盟主」と題して(1)、(2)のとほぼ同様の文章があります。“近代日本の発展ほど世界を驚かせたものはない。”と“一系の天皇を戴いていることが今日の日本をあらしめたのである。”の間に次の文章が付加されています。典拠情報はありません。
“この驚異的な発展は、他の国と異なる何ものかがなくてはならない。果たせるかなこの国の三千年の歴史がそれであった。この長い歴史を通して”。
(4)『アインシュタインは語る』アリス・カラプリス[他]. 増補新版. 大月書店, 2006.8【GK429-H25】
p.287:「日本と日本人」の項目の中に以下の類似の文章が掲載されています。
“遠からず人類は確実に真の平和のために世界の指導者を決めなければなりません。世界の指導者になる人物は軍事力にも資金力にも関心を持ってはなりません。すべての国の歴史を超越し、気高い国民性を持つもっとも古い国の人でなければなりません。世界の文化はアジアではじまったものであり、アジアに帰らなければなりません。つまりア
ジアの最高峰である日本に。私達はこのことに感謝します。天は私たちのためにこのような高貴な国を創造してくれたのです。”
文末に“仙台の東北大学でおこなった講演から.1922年12月3日”“フェルジング-528ページ参照.”とありますが、当館所蔵資料に東北大学における講演録は確認できませんでした。また巻末「参考文献」に掲載されている下記の文献(5)は当館では所蔵していないため、典拠情報の有無は不明です。
(5)フェルジング『アインシュタイン』[Folsing,Albrecht. Albert Einstein.Trans.Ewald Osers.NewYork: Viking,1997]
この他、以下の(6)~(15)のような文献を通覧しましたが、ご照会の文章の原文、出典に関する情報は得られませんでした。
(6)『アインシュタイン』 ジェレミー・バーンスタイン[他]. 大月書店, 2007.3. (オックスフォード科学の肖像)【GK429-H27】
(7)『評伝アインシュタイン』フィリップ・フランク[他] 岩波書店, 2005.9. (岩波現代文庫 ; 社会) 【GK429-H16】
(8)『アインシュタインの情熱』 Barry Parker[他]. 共立出版, 2005.9【GK429-H17】
(9)『我がアインシュタインの栄光と苦悩』青柳忠克. 創英社, 2002.2【GK429-G28】
(10)『アインシュタイン日本で相対論を語る』 講談社, 2001.10【GK429-G27】
(11)『アインシュタイン、神を語る』 ウィリアム・ヘルマンス[他]. 工作舎, 2000.4【GK429-G20】
(12)『関門・福岡のアインシュタイン』中本静暁 新日本教育図書, 1998.10【GK429-G11】
(13)『アインシュタイン150の言葉』 ディスカヴァー・トゥエンティワン, 1997. 【GK429-G6】科学者と世界平和 . -- 中央公論新社, 2002.1. -- (中公文庫) 【M53-G52】
(14)『アインシュタイン、ひとを語る』 金子務,板垣良一. 東海大学出版会, 1993.4【MC19-E16】
(15)『 わが世界観』 アインシユタイン[他]. -- 白揚社, 昭和22【044-E39ウ】
なお、次の文献(16)~(18)では、ご照会の言葉が、「アインシュタインの予言」「アインシュタインの言葉」などとして、各方面で引用されてはいるものの、典拠が明確でない点について議論されています。いずれにおいても、現在のところその原文の確認には到っていないようです。
(16)中澤英雄「アインシュタインと日本」(『致知』 2005.11 pp.120-125 【Z23-470】)
* 文献(3)収録の「世界の盟主」を引用し、これに対応するドイツ語や英語の原文は、アインシュタインの著作には存在せず、ドイツの国法学者シュタインの言葉をもとに要約・整形されたものである、これを紹介したのは思想家の田中智学である、などの記述があります。
著者:中澤英雄によるインターネットサイトにも関連の記述はあるようです。
「アルベルト・アインシュタインと日本」 http://www.yorozubp.com/0502/050228.htm (最終確認:2010年4月26日)
「アインシュタインと日本 Part 2」 http://www.yorozubp.com/0506/050626.htm (最終確認:2010年4月26日)
「(アイン)シュタインと日本 Part 3」 http://www.yorozubp.com/0511/051109.htm (最終確認:2010年4月26日)
(17)笹井宏次朗「「アインシュタインの言葉」を考察する--中澤英雄教授への反論」(『国体文化』 (990) [2006.10] pp. 27~32 【Z9-86】)
* 文献(16)への反論を展開しています。
(18)笹井宏次朗「続「アインシュタインの言葉」を考察する--中澤英雄教授への反論」(『国体文化』 (991) [2006.11] pp. 27~32 【Z9-86】)
* 文献(16)への反論を展開しています。
この他、文献(16)に関して、文献(19)のような新聞記事もありますので、紹介します。
(19)「ネットで流行「アインシュタインの言葉」日本絶賛 本人と無関係、シュタイン教授と人違い?東大教授がルーツ調査」(朝日新聞 (東京版) 2006年6月6日 夕刊 7面 【YB-2】 マイクロ資料)
以上の内容を質問者に回答する。
- 事前調査事項
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『世界に誇る日本の道徳力』 石川佐智子/著 コスモトゥーワン p22-23
- NDC
- 参考資料
- キーワード
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- アインシュタイン
- シュタイン
- 照会先
- 寄与者
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- 国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000066323