レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2009/02/23
- 登録日時
- 2010/04/23 02:00
- 更新日時
- 2010/08/09 13:08
- 管理番号
- 長野市立長野-08-012
- 質問
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解決
菅原道真の歌「東風(こち)吹かば にほひをこせよ 梅の花、主(あるじ)なしとて春を忘るな」を「春な忘れそ」と書いてあるものもあるが、どちらが正しいのか。
- 回答
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文献によって記載が異なる。
「拾遺和歌集」「大鏡」「源平盛衰記」
では「春を忘るな」になっている。
「宝物集」「十訓集」「古今著聞集」「延慶本平家物語」「太平記」
では「春な忘れそ」になっている。
なお、所蔵がない文献では、
「古来風体抄」「定家八代抄」「高良玉垂宮神秘書紙背和歌」「源氏物語古注釈書」――春を忘るな
「真名本曾我物語」「神道集」「荏柄天神縁起」――春な忘れそ
となっていた。
文献が一番古いものは拾遺和歌集であるが、どちらが正しいかは一概に言えないのではないか。
- 回答プロセス
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『典拠検索新名歌辞典』p263「東風吹かばにほひおこせよ梅の花 主なしとて春を忘るな[拾遺・雑春・一〇〇六・菅原道真]」とある。この歌の出所が記載されている。所蔵している文献を調べてみる。
『新日本古典文学大系 7(拾遺和歌集)』p288「東風吹かばにほひをこせよ梅花主なしとて春を忘るな」
『新編日本古典文学全集 34(大鏡)』p75「東風吹かばにほひおこせよ梅の花あるじなしとて春を忘るな」
脚注に「流布本系では第五句「春な忘れそ」」とある。
『新定源平盛衰記 第4巻』p185「こち吹かばにほひおこせよ梅の花あるじなしとて春を忘るな」
『新日本古典文学大系 40(宝物集)』p100「東風ふかばにほひをこせよ梅の花あるじなしとて春なわすれそ」
p492『宝物集』和歌他出一覧に、他出の文献毎の五句の異同について表記あり。所蔵がない文献の参考。
『新編日本古典文学全集 51(十訓抄)』p238「東風吹かばにほひおこせよ梅の花主なしとて春な忘れそ」
『日本古典文学大系 84(古今著聞集)』p507「こちふかばにほひをこせよ梅花あるじなしとて春なわすれそ」
『延慶本平家物語 本文篇下』p117「東風吹バ匂ヲコセヨ梅ノ花アルジナシトテ春ナワスレソ」
『新編日本古典文学全集 55(太平記2)』p37「東風吹ば匂をこせよ梅花主じ無とて春な忘れそ」
『新編日本古典文学全集 53(曾我物語)』歌の掲載は見つけることはできなかったが、p231に飛梅の伝説についての記載あり。
- 事前調査事項
- NDC
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- 詩歌 (911)
- 参考資料
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- 『典拠検索新名歌辞典』中村 薫/編,久保田 淳/新訂 明治書院 2007.07 <R911.1ナ>
- 『新日本古典文学大系 7(拾遺和歌集)』佐竹 昭広/〔ほか〕編集委員 岩波書店 1990.01 <918シ>
- 『新編日本古典文学全集 34(大鏡)』橘 健二/校注・訳 小学館 1996.06 <918シ34>
- 『新定源平盛衰記 第4巻』水原 一/考定 新人物往来社 1990.02 <913.43シ>
- 『新日本古典文学大系 40(宝物集)』佐竹 昭広/〔ほか〕編集委員 岩波書店 1993.11 <918シ40>
- 『新編日本古典文学全集 51(十訓抄)』浅見 和彦/校注・訳 小学館 1997.12 <918シ51>
- 『日本古典文学大系 84(古今著聞集)』橘 成季/編 岩波書店 1978 <918ニ>
- 『延慶本平家物語 本文篇下』北原 保雄/編,小川 栄一/編 勉誠社 1990.06 <913.43エ>
- 『新編日本古典文学全集 55(太平記2)』長谷川 端/校注・訳 小学館 1996.03 <918シ55>
- 『新編日本古典文学全集 53(曾我物語)』梶原 正昭/校注・訳 小学館 2002.03 <918シ53>
- キーワード
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- 菅原道真
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000066229