レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2007/12/14
- 登録日時
- 2008/11/13 02:11
- 更新日時
- 2008/11/21 17:59
- 管理番号
- 埼久-2008-005
- 質問
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未解決
橋の渡り初め(橋の落成式に始めて人の渡ること、またその式典)とはどのようなことを行うのか。またその歴史について知りたい。
- 回答
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以下の資料に関連記述があり、提供する。
1 神事に関する資料
橋梁竣工祭儀の主要な部分としての渡り初めについては、神道関係資料に比較的詳しく記述があり。いずれも長老者の家の三世代夫婦による渡り初め。
『諸祭式要綱 続』p101-107 〈橋梁竣功祭(渡初式)〉」の項に用具や祭壇の設置、式次第など詳細に記述あり。起源は「聖武天皇時代の橋供養が橋梁竣功祭の初見で、渡り初めの起源は明らかではない」とあり。
『雑祭式講義全書』p283-285 〈「架橋竣工祭-渡橋式〉の項 起源故実、祭具、祭儀、渡橋式の次第などの記述あり。「徳川時代に三夫婦による渡り初め式が始まり」「祭祀としては近世に発達したもの」とも記されている。
『雑祭式作法綱要』p63-64 〈渡橋祭(架橋竣工)〉の項 作法故実、祭式次第の記述あり。
2 文化誌、民俗、歴史関係の資料
①親・子・孫三世代健在の夫婦を先頭に行うことが記述されている資料
『江戸の橋』p244、『橋の世界』p5、『橋と日本人』p159-160、『日本民俗大辞典 下』〈橋〉の項、『明治世相百話』p214-215
『甲子夜話 3』p184-185 文政6年両国橋の橋開きについて具体的な記述あり。
②長寿の人や高齢の夫婦を先頭に行うことが記述されている資料
『名橋巡ぐり』p14-15 〈橋供養と渡り初め〉の項 一般に行われる祝賀行事の順序などの記述あり。
『大田南畝全集 11』p311 〈両国橋渡初〉の項 簡単な記述あり。
③権力者を先頭に行うことが記述されている資料
『甲子夜話 1』p241 日本橋の架け替えに伴い、長寿の老人が渡り初めをすることが取り沙汰されていたが、町奉行、町与力などが総見分渡初めと称して行った旨の記述あり。
3 渡り初めの起源を論じた資料
飯島吉治「村境と橋」(『自然と文化 1984夏季号-特集 橋』p37-41) 人柱伝説、橋供養、渡り初めなどが存在する理由を論じている。
『いまは昔むかしは今 2 天の橋地の橋』p110-120 〈橋供養の日に〉の項 橋供養、渡り初にかかわる故事などがあり。
『木霊論:家・船・橋の民俗』p302-306 〈渡り初め(築橋儀礼)〉の項 絵馬(明治7年奉納)や『甲子夜話』に見られる三夫婦の渡り初めの様子を紹介。「古い時代の橋の「渡り初め」の様子を具体的に知ることは、今日では困難になっているが」という記述あり。
4 個々の橋の渡り初めに関する記述のある資料
『歴博万華鏡』p54-55 〈都市祭礼 橋の渡り初め〉の項 福島県磐梯町の落合日橋川新橋1650年、両国橋架け替え1855年、京都の加茂川にかかる四条新大橋1857年、伊勢宇治橋1909年の「渡り初め」の記述あり。
『名橋巡ぐり』p104-106 〈宇治橋渡始式〉の項 明治42年に行われた「渡始式」の次第の記述あり。
『八百八橋物語』p132-133 〈中之島と難波橋〉の項 大正4年難波橋渡り初めの大阪朝日新聞の記事を引用。
『古事類苑 4 地部3』p191-193 〈渡初〉の項 9つの文献「雍州府志」「國花萬葉記」「一話一言」「半日閑話」「武江年表」(2件)「甲子夜話」(2件)「言成卿記」が列挙されている。
5 雑誌記事
『日本古書通信 2001.9』p9-11「巷説かわら版物語(9) 「日本橋」渡り初め奇譚-五代夫婦の謎」 江戸時代の瓦版と『甲子夜話』が伝える故事を解説したもの。
6 新聞記事
『明治の読売新聞縮刷版CD-ROM』を〈渡り初め〉で検索。明治8年から三代夫婦や高齢者などによる渡り初め式の記事が82件ヒットする。
7 インターネット情報
検索エンジン《Google》を〈渡り初め & 橋〉で検索すると、三代夫婦渡り初め儀式のニュースなどが多数ヒットするが、いくつかのサイトにまとまった記述がある。
「小さな橋の博物館」
橋に関する情報発信・収集をしているサイト。「三代夫婦の渡り初めについて(私説)」と題したページで、起源を示す文献は見あたらないとしている。(http://www1.harenet.ne.jp/~wawa/B/bridge.html 2007/12/14最終確認)
8 小説や随筆で渡り初めに言及したもの
『柳橋物語』『日本の橋』などがあった。
- 回答プロセス
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〈渡り初め〉〈渡初〉〈橋〉〈土木〉〈建築儀礼〉をキーワードに各種事典類、自館目録と《NDL-OPAC》を検索。またNDC分類515〈橋梁〉、38〈民俗〉、176〈神道〉、21〈歴史〉の棚にあたる。
さらに同じキーワードで《NDL-OPAC(雑策)》《MAGAZINEPLUS》《明治の読売新聞CD-ROM》《Google》を検索。それぞれの資料に該当記述や参考文献がないかを確認した。
- 事前調査事項
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「日本国語大辞典 第2版」ほか国語辞典 「国史大辞典」「日本庶民生活史料集成 9」「日本大百科全書」「平凡社大百科事典」「神道事典」「祝詞事典」「橋のなんでも小辞典」「橋の文化誌」
- NDC
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- 橋梁工学 (515 9版)
- 通過儀礼.冠婚葬祭 (385 9版)
- 参考資料
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- 『諸祭式要綱 続』(神社新報社 1965)
- 『雑祭式講義全書』(佐伯書店 1971)
- 『雑祭式作法綱要』(佐伯書店 1971)
- 『江戸の橋』(三省堂 2006)
- 『橋の世界』(藤原稔 山海堂 1994)
- 『橋と日本人』(上田篤 岩波書店 1984)
- 『日本民俗大辞典 下』(吉川弘文館 2000)
- 『明治世相百話』(山本笑月 中央公論社 1983)
- 『名橋巡ぐり』(畑中健三 太陽堂 1929)
- 『大田南畝全集 11』(岩波書店 1988)
- 『甲子夜話 1』(平凡社 1977)
- 『甲子夜話 3』(平凡社 1977)
- 『いまは昔むかしは今 2 天の橋地の橋』(福音館書店 1991)
- 『木霊論:家・船・橋の民俗』(神野善治 白水社 2000)
- 『歴博万華鏡』(国立歴史民俗博物館 朝倉書店 2000)
- 『自然と文化 1984夏季号』(観光資源保護財団)
- 『八百八橋物語』(松籟社 1984)
- 『古事類苑 4 地部3』(神宮司庁 1913)
- 『日本古書通信 2001.9』
- 『柳橋物語』(山本周五郎 新潮社 1968)
- 『日本の橋』(保田與重郎 講談社 1990)
- キーワード
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- 橋梁-歴史
- 建築儀礼
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 図書館
- 登録番号
- 1000048910