レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年09月08日
- 登録日時
- 2022/11/07 10:17
- 更新日時
- 2022/11/07 11:33
- 管理番号
- 横浜市中央2668
- 質問
-
解決
江戸時代の古文書で「風怪状」というものがあるらしいが、それはどんなものですか。
活字で読めるものはありますか。
- 回答
-
1 風怪状について
以下の資料により、「風怪状」は、固有の史料名ではなく、地震の後に書かれた落書
の一種であると分かりました。
(1)『近世災害情報論』 北原糸子/著 塙書房 2003.5
p.102 「戯詞 『藤岡屋日記』に収録された戯詞には、(中略)地震押さえを託された
鹿島大明神に対して、京都地震に続いて信州地震が起きるなど「手緩、不束ニ付、
差控」を命ずるなど封廻状をもじった「風怪状」と題されるものがある。」
(2)『江戸の情報屋 NHKブックス』 吉原健一郎/著 日本放送出版協会 1978.12
p.116「幕府の罪人処分のさいにだされる封廻状をもじった「風怪状」の落書も作られた。」
(3)「世間話研究の意義」 宮田登/著
(『日本昔話研究集成 1 昔話研究の課題』 名著出版 1985.6)
p.419「『藤岡屋日記』は、(中略)その中に「風怪状」なる資料がしばしば集められている。
いわゆる風聞をメモした書付で、どういうルートかは不確かであるが、世間の噂話
を伝達したらしい。「風怪状」は「封廻状」とも記されており、その形式は封印した
状文となっている。」
(4)「風怪状その他」古賀英正/著
(『防災』40 東京連合防火協会 東京連合防火協会 1954-08)p.6~7
「地震の押への神として知られた鹿島神宮や地震の主大鯰などに与へて風怪状と云ふ
お叱状の事が、小島典膳の『地震考』に載っている」とあり、
鹿島の神、那須の要石、赤色の凶星、大奈満壽(大鯰)への通達であると書かれています。
国立国会図書館デジタルコレクションでも読むことができます
(国立国会図書館/図書館・個人送信限定)。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2805174
なお、小島典膳は別名濤山(『日本人名大事典 第2巻』平凡社 1979.7 p.582)ですが、
小島濤山の『地震考』では上記内容を確認することができませんでした。
『随筆文学選集 第8』 楠瀬恂/編輯 書斎社 1927.8
p.441~458
(5)『鯰絵 震災と日本文化』 里文出版 1995.09
p.115「この善光寺地震に素材を求めた「風怪状」なる落書が『藤岡屋日記』に
拾われているが、そこでも地震鯰は大罪人として瓢箪所(評定所)から「常陸神へ御願、
奈落へ蟄居申付」られているので、この善光寺大地震の原因も、鹿島の神の
油断から生じたとする観念があったと考えられる」
2 活字化された風怪状
(1)文政13(1830)年の京都の地震
ア「宝暦現来集 巻之十九」
(『続日本随筆大成 別巻 7 近世風俗見聞集』 吉川弘文館 1982.10)
p.316~318
「地震史料集テキストデータベース」でも読むことができます。
https://materials.utkozisin.org/articles/search?q=%E9%A2%A8%E6%80%AA%E7%8A%B6
イ「兎園小説拾遺」 滝沢馬琴著
(『日本随筆大成 第2期 5』 日本随筆大成編輯部/編 吉川弘文館 1974.2)
p.133~134
ウ『江戸時代落書類聚 中巻』 矢島隆教/編 東京堂出版 1984.9
p.30~31
エ「浮世の有様 三」(『日本庶民生活史料集成 第11巻 世相』 三一書房 1970)
p.162-163
(2)弘化4(1847)年の信州の地震
ア『藤岡屋日記 第3巻 近世庶民生活史料』 鈴木棠三,小池章太郎/編 三一書房 1988.7
p.153~154
イ『江戸時代落書類聚 中巻』 矢島隆教/編 東京堂出版 1984.9
p.238~239
3 古文書の風怪状
(1)『連城叢書. 31』 小寺 玉晁/著
「古典籍総合データベース(早稲田大学)」
https://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/i04/i04_00696_0131/index.html
PDFで37ページ目からです。
(2)『鹿島香取神社風怪状』(文政雑記)
「国立公文書館デジタルアーカイブ」
https://www.digital.archives.go.jp/item/754017
URL最終確認日 2022年8月28日
- 回答プロセス
-
(1)事典・辞書類の調査
『国史大事典』等の日本史系の参考図書、百科事典、国語辞典等に「風怪状」はあり
ませんでした。
『国書総目録』に、3の史料の掲載がありました。
『日本国語大辞典 第11巻』 日本国語大辞典第二版編集委員会/編 小学館 2001.11
「風怪状」はなく、字は違いますが「封回状」の項がありました。
「ふう-かいじょう 【封回状】近世、要務の重職および関係長官などへ、武士の罪の
責罰処分などを老中より報告する場合の、極秘の封書状 *禁令考-前集・第一・巻七・
寛政五年三月七日「封回状 凡裁決する各状を内外へ告知するを封回状と云、是幕府之
定例也」
(2)オンラインでの調査
国立国会図書館サーチで1(1)および(4)を発見。その他、Googleブックス、
Google scholar、CiNii Research等を使用しました。
URL最終確認日 2022年8月28日
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本史 (210 8版)
- 社会福祉 (369 8版)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000323609