レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2018/03/08
- 登録日時
- 2018/03/12 00:30
- 更新日時
- 2020/09/19 11:16
- 管理番号
- 千県中児童-2017-5
- 質問
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解決
アンデルセン作「かえるのおうさま」の絵本を見たい。所蔵しているか?
- 回答
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当館所蔵の「かえるのおうさま」の絵本は2冊ありますが、どちらもアンデルセンではなくグリムの絵本です。
また、当館に所蔵していませんが、東京都立多摩図書館所蔵の『お伽アンデルセン』(川口 宏著 アンデルセン原著 一書堂書店 1927)という資料の内容細目に「蛙の王様」がありました。
都立多摩図書館に問い合わせたところ、「蛙の王様」はグリム童話の「かえるの王さま」とほぼ同内容の作品とのことですが、「蛙の王様」に著者表記はなく、巻末の紹介にアンデルセンの作と読める記述があるそうです。紹介には「アンデルセン」ではなく「アンデルゼン」と記述されているそうです。
このほかに、当館では所蔵していませんが、『かえるのおうさま グリム童話 チャイルド絵本館 アンデルセン&グリム 4』(グリム原作 チャイルド本社 2002)のようにグリム作『かえるのおうさま』でシリーズ名が「チャイルド絵本館. アンデルセン&グリム」となっているものがあります。
なお、アンデルセンの作品でかえる(ひきがえる)が出てくるものには、「おやゆびひめ」「ひきがえる」などがあり「ひきがえる」は絵本にはなっておらず、「おやゆびひめ」は絵本19冊所蔵があります。
- 回答プロセス
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(1)図書館の蔵書検索
書名「かえるのおうさま」&資料種別「児童資料」で検索すると、「かえるのおうさま」はグリムのものが出てくる。
グリムの絵本が2種類あると伝えたところ、アンデルセン作はないのかとのこと。
著者「アンデルセン」&全項目「かえるのおうさま」ヒットなし。
著者「アンデルセン」&全項目「かえる」で検索すると、以下の資料が検索される。
・『おやゆびひめ』(ハンス・クリスチャン・アンデルセン作 童話館出版 1996)など
あらすじに「かえるにさらわれ」とある。ヒキガエルに誘拐されているが、ヒキガエルは王子や王さまではない。最後にツバメに連れられて出会い結婚する王さまは白い花の王さま。
・『アンデルセン童話全集 2』(ハンス・クリスチャン・アンデルセン作 西村書店 2012)
・『完訳 アンデルセン童話集 7(小学館ファンタジー文庫)』(アンデルセン著 小学館 2010)
作品に「ヒキガエル」または「ひきがえる」あり。ヒキガエルは王子や王さまとは関係なさそう。
なお、「はだかのおうさま」ではないかと確認したが、違うということだった。
(2)参考図書で探す
・『世界文学綜覧シリーズ 13 世界児童文学個人全集・作品名綜覧』(日外アソシエーツ株式会社編集 日外アソシエーツ 2000)
タイトルが「かえる」から始まる作品を確認するが、アンデルセンのものなし。ただし、『世界名作 イソップ・グリム・アンデルセン(イソップ)9』(国際情報社 1974)のようにグリムの「かえるの王さま」とアンデルセンの作品が一緒に収録されている本はある。
・『作品名から引ける世界児童文学全集案内』(日外アソシエーツ株式会社編集 日外アソシエーツ 2006)もアンデルセンの「かえるのおうさま」なし。
・『世界の物語・お話絵本登場人物索引』(DBジャパン編集 DBジャパン 2008)
・『世界の物語・お話絵本登場人物索引 1953-1986 ロングセラー絵本ほか』(DBジャパン編集 DBジャパン 2009)
この2冊も「かえる」「ひきがえる」で探すが、アンデルセンの作品は見当たらず。
・『世界児童・青少年文学情報大事典1~16』(藤野幸雄編訳 勉誠出版 2000~2004)で「かえるのおうさま」を探すが、アンデルセンは見つからず。
・『オックスフォード世界児童文学百科』(ハンフリー・カーペンター著 原書房 1999)で「かえるのおうさま」を引くが、グリムや類話の「世界のはての井戸」に言及があるのみ、アンデルセンについては書かれていない。
・『図説児童文学翻訳大事典 第4巻』(児童文学翻訳大事典編集委員会編 大空社 2007)の書名(邦訳)索引で「かえるのおうさま」を引くが、グリム、イソップのみ。
(3)国立国会図書館サーチで探す
国立国会図書館サーチの詳細検索を書名「かえる」&著者「アンデルセン」で検索したところ、ほとんどはグリムの作品と混ざった全集が検索されるが、東京都立多摩図書館所蔵の【資料1】『お伽アンデルセン』という資料の内容細目に「蛙の王様」があった。
(4)東京都立多摩図書館に問い合わせ
都立多摩図書館に問い合わせ、現物を確認していただいたところ、『お伽アンデルセン』中の「蛙の王様」はグリムとほぼ同内容の作品だとのこと。
本の巻末に同じシリーズの紹介があり、『お伽グリム』(都立多摩図書館でも未所蔵)が紹介されているので、グリムとアンデルセンを著者は分けて翻訳していると考えられる。
なお、『お伽グリム』は国立国会図書館サーチ及びCiniiBooksでは所蔵館が見当たらなかった。
(5)アンデルセンの著作リストから「かえる」がでてくる作品を探す。
・インターネットで公開されているH.C. Andersen Centret(http://andersen.sdu.dk/index_e.html)のIndex of Works(http://andersen.sdu.dk/vaerk/register/index_e.html)を「frog」で検索するが、該当なし。「king」で検索すると「The Marsh King's Daughter」が検索される。
「The Marsh King's Daughter」は、ウェブサイト「デンマーク語はどうですか?」の中の【資料3】「アンデルセンの童話(物語)の題名リスト」によれば「沼の王の娘」ということなので、『アンデルセン童話集1~10(岩波文庫)』(大畑末吉訳 岩波書店 1976~1979)を確認したが、主役が娘のため「かえるのおうさま」ではないと考えられる。
「prince」で検索すると「The Wicked Prince」が検索される。「The Wicked Prince」は「わるい王さま」で『アンデルセン童話集1~10(岩波文庫)』(大畑末吉訳 岩波書店 1976~1979)の「わるい王さま」を参照したところ別の作品。
・同じくH.C. Andersen Centret の【資料2】the complete Andersenで「frog」をキーワードに検索すると、「frog」が作品中に含まれる作品が検索される。
(http://andersen.sdu.dk/vaerk/hersholt/index_e.html)
・検索された作品を、日本語タイトルを手がかりに「山室静訳『アンデルセン童話全集 1~8』(アンデルセン著 講談社 1984)を参照し確認したが、「かえるのおうさま」に該当する作品ではないと思われる。
以下、邦訳タイトルはウェブサイト「デンマーク語はどうですか?」の中の【資料2】「アンデルセンの童話(物語)の題名リスト」より。日本語タイトルは大畑末吉訳を参照して作成されている。
『コウノトリ』The Storks (Storkene)
『ナイチンゲール』The Nightingale (Nattergalen)
『妖精の丘』The Elf Mound (Elverhøi)
『鐘が淵』The Bell (Klokken)
『ツック坊や』Little Tuck (Lille Tuk)
『沼の王の娘』The Marsh King's Daughter (Dynd-Kongens Datter)
『アンネ・リスベット』Anne Lisbeth (Anne Lisbeth)
『コガネムシ』The Beetle (Skarnbassen)
『氷姫』The Ice Maiden (Iisjomfruen)
『プシケ』The Psyche (Psychen)
『鬼火が町にと沼のばあさんそう言った』The Will-o'-the-Wisps Are in Town (Lygtemændene ere i Byen, sagde Mosekonen)
『ヒキガエル』The Toad (Skrubtudsen)
『パイターとペーターとペーア』Peiter, Peter, and Peer (Peiter, Peter og Peer)
『木の精ドリアーデ』The Dryad (Dryaden)
『ヨハンネばあさんの話』What Old Johanne Told (Hvad gamle Johanne fortalte)
『門のかぎ』The Gate Key (Portnøglen)
訳不明 Lucky Peer (Lykke-Peer)
訳不明 Croak! (Qvæk)
同じくthe complete AndersenでToad(ヒキガエル)をキーワードに検索すると、Toadが含まれる下記の作品が検索される。
『親指姫』Thumbelina (Tommelise)
『人魚姫』The Little Mermaid (Den lille Havfrue)
『野の白鳥』The Wild Swans (De vilde Svaner)
『鐘』The Bell (Klokken)
『幸福な一家』The Happy Family (Den lykkelige Familie)
『パンを踏んだ娘』The Girl Who Trod on the Loaf (Pigen, som traadte paa Brødet)
『ヒキガエル』The Toad (Skrubtudsen)
『歯いたおばさん』Aunty Toothache (Tante Tandpine)
frogにしてもtoadにしても、かえると王さまが結びつくような内容の絵本は見当たらず。
(6)その他参照した資料
他に下記の資料も参照したが、アンデルセン作の「かえるの王さま」は見当たらなかった。
『アンデルセン童話集 10(岩波文庫)』(ハンス・クリスチャン・アンデルセン著 大畑 末吉訳 岩波書店 1979)の作品名索引で「かえる」「蛙」「カエル」とつく作品を探すが、「ヒキガエル」のみ。
・『明治期アンデルセン童話翻訳集成第1巻~5巻』(アンデルセン著 ナダ出版センタ- 1999)の目次を参照するが、該当しそうな作品なし。
・『図説児童文学翻訳大事典 第2巻 原作者と作品』(児童文学翻訳大事典編集委員会編 大空社 2007)でアンデルセンの項(p56-112)のうちアンデルセン童話初訳一覧(p64-70)を確認、該当しそうな作品なし。
・『児童文学翻訳作品総覧 5 明治大正昭和平成の135年翻訳目録 北欧・南欧編』(川戸道昭編集 大空社 2005)で翻訳作品別目録(p46-204)を確認したが、「かえるのおうさま」に類する書名なし。アンデルセン翻訳総合年表(p205-315)で『お伽アンデルセン』の出版年(昭和4年)前後を見たが、『お伽アンデルセン』は記載されていなかった。年表すべては確認していない。
- 事前調査事項
- NDC
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- その他のゲルマン文学 (949 9版)
- 漫画.挿絵.児童画 (726 9版)
- 参考資料
- キーワード
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- アンデルセン,ハンス・クリスチャン(アンデルセン,ハンス・クリスチャン)
- 絵本(えほん)
- Andersen Hans Christian(アンデルセン ハンス・クリスチャン)
- かえるのおうさま(かえるのおうさま)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 書誌的事項調査
- 内容種別
- 児童書
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000232430