レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015/04/16
- 登録日時
- 2016/10/29 00:30
- 更新日時
- 2016/11/05 15:33
- 管理番号
- 0000001371
- 質問
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解決
北陸地方から足尾銅山に移住した人たちを調査しています。なぜ、足尾銅山へ移住したのか、わかる資料があるのかお教えください。
- 回答
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(1)『足尾銅山史』(村上安正著 随想舎 2006.3)p426の従業員の出身地に関する記述を見ると、
「(昭和)14年10月末調べの結果では、地元栃木県2,255人、隣接する群馬県703人を合わせると2,958人となって64.5%に達する。但し栃木県に原籍を持つもののうち、足尾町に原籍を置く者が圧倒的多数を占めると考えられる。明治期に足尾銅山に転入し、そのまま定着した層がそれに当る。過去のデータでは、彼らの出身地は北陸、東北及び近県であった。そこで角度を変えて広域地域圏で分類すると、関東甲信静3,180人(69.0%)、東北・北海道739人(16.0%)、北陸456人(10.0%)となっていて、東海以西は極めて少ない。このような事実から、関東は京浜工業地帯を控えて労働市場が極めてタイトであり、足尾銅山で不足する労働力を補充する地域圏として、東北及び北陸の地方に目が向けられるのも当然であった。」
と、あります。
(2)金崎肇「北陸地方の出稼ぎ」(『地理学評論』Vol. 35 (1962) No. 6 P 251-262 )
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/grj1925/35/6/35_6_251/_pdf 確認日:2015-04-16)
p255には、大正8年の「北陸3県よりの季節労務者の供給人員」という表がありますが、石川県の鉱山従事者の数字は棒線となっており、統計はなく、特に栃木県や鉱山への出稼ぎが多かったという記述は見つけられません。
(3)そこで、『足尾銅山史』にあるように、「明治期に足尾銅山に転入し、そのまま定着した層」の「出身地は北陸、東北及び近県」ということが要因であるのではないかと思い、
・『金沢市史 通史編3』 金沢市史編さん委員会∥編集 金沢市 2006.3
・『石川県史 第4編』 石川県∥編 石川県図書館協会 1974
・『石川百年史』 石林文吉著 石川県公民館連合会 1972
等に明治期に石川県から移出した労働力に関する記載があるか確認してみましたが、そのような記述を見つけることができませんでした。
(4)土井徹平「近代の鉱業における労働市場と雇用 : 足尾銅山及び尾去沢鉱山の「友子」史料を用いて」 (『社會經濟史學』 76(1), 3-20, 2010-05-25)という論文があり、その抄録が以下のように記載されています。
本稿では,足尾銅山と尾去沢(おさりざわ)鉱山を対象として,1900年代から1910年代における鉱業の労働市場と雇用の特質について考察した。近代の鉱山には,「坑夫」(採鉱夫・支柱夫)の同職集団である「友子(ともこ)」が存在しており,坑夫は友子を通じて同職者の「渡り」(鉱山間での移動)を保障するとともに就職の斡旋を行った。また友子は,内部で技能伝承を行うことで,市場に対し熟練労働力を供給する役割を果たしていた。したがって近代の鉱業の雇用あるいは労働市場の特質を明らかにするためには,友子を介した雇用の実態を解明する必要がある。しかし友子と雇用との関係については研究の蓄積がなく,友子の発達が労働市場に及ぼした影響についても,はっきりした結論が得られていない。このことをふまえ本稿では,友子の運営資料を用いることで,鉱山の雇用の実態を分析した。そして,友子を介した「渡り」や技能伝承の結果,近代の鉱山では労働力の需給バランスが保たれていたこと,そして市場構造に地域的な差異があったことを明らかにした。
(http://ci.nii.ac.jp/naid/110009498083 確認日:2015-04-16)
この論文をご覧になれば、お調べのことに関する記述があるのではないかと推定されます。
なお、この論文は、当館には所蔵しておりません。
論文の取り寄せにつきましては、お近くの図書館にご相談ください。
関連の論文として、
土井 徹平「新発見の足尾銅山本山坑友子史料について」(『 鉱山研究』 (85), 4-16, 2008-03)というものもあるようです。
(5)このほか、
・『日本銅鉱業史の研究』小葉田/淳著 思文閣出版 1993.3
・『「定住」の社会学的研究』橋本 和幸[ほか]著 多賀出版 1988.2
・『出稼』金崎 肇著 古今書院 1967
・『石川県と労働力』石川県職業安定課編 石川県職業安定課 1968
も確認しましたが、ご質問に関する記述を見つけることはできまんでした。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 金属工学.鉱山工学 (56 9版)
- 参考資料
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- 1 足尾銅山史 村上/安正?著 随想舎 2006.3 562.2/10001
- キーワード
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- 足尾銅山
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000198853