レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015年6月3日
- 登録日時
- 2015/08/25 14:26
- 更新日時
- 2015/09/13 10:16
- 管理番号
- 2015.9-01
- 質問
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解決
江戸時代の庶民には苗字がなかったはずだが、苗字が記載された例もあるのはなぜか。
- 回答
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資料1.支配を徹底するためには身分を峻別させる必要があったため、苗字を禁止して称呼の原則に根本的な差別を付けた。
また、その例外は、
①郷士などのように由緒ある家で、以前から苗字・帯刀御免のもの、
②孝行その他奇特の褒賞として許されたもの、
③町年寄・庄屋・名主・用達町人など役柄によって許されるもの、
との3つに限られていた。
資料2.公然と名乗ることはしなかったが、家系図などには堂々と書き込んでいた家が多かったし、祭りの寄付などには隠れ姓を堂々と記したりしているのが、神社の玉垣に残されている。
資料3.長野県東筑摩郡坂北村の碩水寺の天明3(1783)年と文化13(1816)年の同寺再建の奉加帳には、苗字を書いていない寄付者は一人もいない。
また、中野区江古田の氏神氷川神社の弘化3(1846)年の造営奉納取立帳には、全村85軒の戸主の姓名が書き連ねられている。
他にも各種の例があり、庶民も従来から苗字を有したが、普通の場合には使用せず、神事に関する場合にだけこれを使用したものと考えられる。
そのことが分かる例が、栃木県都賀郡新井村の安永2(1773)年の五人組帳と安永10年の新井村医王山浄光院の法流金寄進帳である。五人組帳は公的な書類であるので名前だけを記しているのに対し、私的な寄進帳には苗字を入れて記載されている。
資料4.p158~166に苗字を例外的に名乗れた例、p167~168に庶民が苗字を名乗っていたことがあったことが記載されている。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 系譜.家史.皇室 (288)
- 参考資料
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渡辺三男 著 , 渡辺, 三男, 1908-. 苗字名前家紋の基礎知識. 新人物往来社, 1994. (入門シリーズ)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002323963-00 , ISBN 4404020929 (p100~101) -
松島茂光 著 , 松島, 茂光, 1933-. 苗字の話 : 先祖探しの方法. 近代文芸社, 1995.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002391241-00 , ISBN 4773336846 (p39) -
豊田 武/著 , 豊田‖武. 苗字の歴史. 中央公論社, 1978. (中公新書 ; 262)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I000096975-00 , ISBN 4121002628 (p135~146) -
奥富敬之 著 , 奥富, 敬之, 1936-2008. 日本人の名前の歴史. 新人物往来社, 1999.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002822697-00 , ISBN 4404028172 (p158~168)
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渡辺三男 著 , 渡辺, 三男, 1908-. 苗字名前家紋の基礎知識. 新人物往来社, 1994. (入門シリーズ)
- キーワード
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- 姓氏
- 苗字
- 名字
- 氏姓
- 江戸時代
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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国立国会図書館デジタルコレクションで、資料3の参考文献に上がっていた『庶民家族の歴史像』洞富雄/著を見ることができる。
p171~176「江戸時代の庶民にも苗字はあった」
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3026595
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000178952