レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20140515
- 登録日時
- 2014/07/16 13:23
- 更新日時
- 2016/02/14 12:28
- 管理番号
- 町田-100
- 質問
-
未解決
江戸時代の新吉原について、敷地をとりかこむ「おはぐろどぶ」には、普段使われない跳ね橋があったそうだが、どのあたりにあったのか知りたい。
- 回答
-
・資料①~③に、跳ね橋の存在についての記述があるが、橋の場所まではわからない。
①『文政江戸町細見』p.218
②『江戸吉原図聚』p.111
③『お江戸吉原草紙』p.28
・資料④と⑤には地図があるが、明治以降のものであり、質問者の求める情報ではなかった。
④『廓の生活』p.28-29
⑤『明治吉原細見記』p.18に、「新吉原廓内明細図」あり。
- 回答プロセス
-
(1)江戸切絵図を確認するが、はね橋の位置まではわからない。
(2)当館所蔵の、新吉原についての本をあたる。
『文政江戸町細見』p.218に、「非常用に九ヶ所刎ね橋がかかる」とある。
『江戸吉原図聚』p.111に、溝にはね橋が九ヶ所……普通時には上げられていた」とある。
『お江戸吉原草紙』p.28に、「非常用にはね橋がそなえてあるが、普段は上げてあり……遊女の棺おけはそこから担ぎだされた」とある。
『廓の生活』p.28-29に、「吉原細見全図 磯部鎮雄版写」という図があり、おはぐろ溝にかかる橋のようなものが7箇所描かれている。しかしいつの時代の地図なのかがわからず、磯部鎮雄を国会サーチで検索すると1940年代からの著作物があり、地図も近代のものであると思われる。
『明治吉原細見記』p.18に、「新吉原廓内明細図」があり、おはぐろ溝にかかる橋が「非常門」として7箇所描かれている。明治27年のもの。p.74には、「跳ね橋」の説明として、「お歯ぐろ溝を背にした楼は、勝手口から溝を渡る「跳ね橋」を設けていた。……(中略)……顔なじみの客は、ちょっと挨拶してこの跳ね橋を下ろさせて出入りした。」とある。
(3)インターネット情報
Googleで「おはぐろどぶ はねばし」で検索すると、次のサイトがヒット。
第128話落語「首ったけ」 http://ginjo.fc2web.com/128kubittake/kubittake.htm
(2014年7月16日確認)
「首ったけ」という噺に鉄漿溝の跳ね橋が出てくることがわかる。
資料⑥『古典落語②』に収録されているため確認すると、吉原で火事が起こった際に花魁が跳ね橋を通って避難しようとする姿が描かれている。
跳ね橋の場所や橋の運用方法についてはわからなかった。
情報提供による追記(2016/2/8)
(4)木村荘八『吉原ハネ橋考』底本の親本:「東京の風俗」毎日新聞社1949年2月20日発行
http://www.aozora.gr.jp/cards/001312/files/47735_34088.html(青空文庫所収)(2016/2/10確認)
著者が記憶していた跳ね橋の位置が手書きの地図にあり。
橋の正確な位置はわからないが、ハネバシについての説明が詳しい。
ハネバシは戸板のようなものであり、廓内から廓外への専用門であった。廓外地域は廓内より低地であり、橋の先端に綱がとりつけてあって、必要なときにはこの綱で橋を渡し、不要の時には引き上げておいた、とある。
(5)関根金四郎 『江戸花街沿革誌』1894
(国立国会図書館デジタルコレクション)(2016/2/10確認)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/987826
p.105に11月酉の日には市が立ち、この日に限って廓内にて西河岸より外に通じる門を開き、桟橋をかけて遊客を入れるとある。天保のころに津国屋香以がよんだ「刎橋や酉一日の天の川」という句も紹介されている。
この行事は、文政の頃まではなかったため、近代よりはじまったらしい。
- 事前調査事項
- NDC
-
- 風俗習慣.民俗学.民族学 (38 8版)
- 参考資料
-
-
犬塚稔 著 , 犬塚, 稔, 1901-. 文政江戸町細見. 雄山閣出版, 1985.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001744022-00 , ISBN 4639004834 -
三谷 一馬/著 , 三谷‖一馬. 江戸吉原図聚. 立風書房, 1984.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I000070946-00 -
田中夏織 著 , 田中, 夏織, 1973-. お江戸吉原草紙. 原書房, 2002.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003606004-00 , ISBN 4562035439 -
中野栄三 著 , 中野, 栄三. 廓の生活. 雄山閣出版, 1981. (生活史叢書 ; 15)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002849328-00 , ISBN 4639000367 -
斎藤真一 著 , 斎藤, 真一, 1922-1994. 明治吉原細見記. 河出書房新社, 1985.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001772838-00 , ISBN 4309260721 -
落語協会 編 , 落語協会. 古典落語 2 (艶笑・廓ばなし 下). 角川春樹事務所, 2011. (ハルキ文庫 ; ら2-2. 時代小説文庫)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I023107092-00 , ISBN 9784758435819
-
犬塚稔 著 , 犬塚, 稔, 1901-. 文政江戸町細見. 雄山閣出版, 1985.
- キーワード
-
- 新吉原
- おはぐろ溝
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000156223