結論として、適切な資料を見つけることはできませんでした。
調査プロセスは以下のとおりです。
・大阪府立図書館蔵書検索(
http://p-opac.library.pref.osaka.jp/osp_search.html)
・Google books(
http://books.google.co.jp/)
・CiNii Books(
http://ci.nii.ac.jp/books/)
・CiNii Articles(
http://ci.nii.ac.jp/)
・国立国会図書館サーチ(
http://iss.ndl.go.jp/)
等を、キーワード「欧米」「アメリカ」「イギリス」「ヨーロッパ」「一斉」「授業」「評価」「画一」「教育」「改革」などを組み合わせて検索しました。
また、当館の教育分野の書架で参考になりそうなものがないか内容を確認しました。
Google Booksでヒットした『学力があぶない(岩波新書 新赤版)』(大野晋/著 岩波書店 2001.1)第5章「これからの教育をどうするか」(対談 上野健爾、大野晋) の中には「日本の場合は一斉授業といって全員同じ課題を先生の話を聞きながら考えていく形になっていますが、ヨーロッパやアメリカでは同じクラスであっても個人でいろいろなことをやるという形態が普通です。アメリカとかヨーロッパの場合、逆に日本の一斉授業の効果に着目して、それを少し取り入れようとしているところがあるわけです。」という上野氏の発言が載っています。(p.178)
引用文献『現代教育用語辞典』(北樹出版 2003.11)p10「欧米では、教育効率と教育効果の観点から行き過ぎた個別指導が見直され、一斉教授の利点が再評価されている。」の執筆者の「冨田福代」でCiNiiを検索したところ、イギリスの教育改革について研究をされている方で、いくつかの論文はオープンアクセスで閲覧可能になっていますがこの根拠となる記述は見当たらないようです。
なお、『諸外国の教育の動き 2002:アメリカ合衆国 イギリス フランス ドイツ 中国 その他(教育調査)』(文部科学省生涯学習政策局調査企画課/編 財務省印刷局 2003.3)【貸出不可】で、当時の各国の教育事情について概観することができます。
アメリカは、「落ちこぼれを作らないための初等中等教育法」制定1年という時期でその成果がまとめられていますが、この連邦法の目標の骨子には「学力テストの実施と結果の公表(アカウンタビリティの重視)」、「基礎学力(読解力中心)向上政策への集中投資」があります。(p.2)
また、フランスの教育政策の基本方針でも「小学校における読み書き指導の徹底」(p.74)、ドイツでは各州文部大臣会議で近年の学力に関する危機感が急激な高まりから「全国共通到達目標を示した教育スタンダードを設定すること、及びこのスタンダードの達成状況を確認するために州内統一学力調査と全国学力調査を定期的に実施すること」に合意(p.114)とあります。
イギリスの教育改革については、「イギリス教育改革の変遷:ナショナルカリキュラムを中心に」(吉田多美子/著『レファレンス』55(11)国立国会図書館調査及び立法考査局 2005.11)に詳しいです。国会図書館ホームページで閲覧可能です。
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/287276/www.ndl.go.jp/jp/data/publication/refer/200511_658/065805.pdf各国とも全国共通のカリキュラムや統一学力テストの導入と結果公表といった教育改革を実現の時期、あるいは導入後の評価を行っている時期にあたり、基礎学力の向上を徹底することを目標に挙げているということから一斉授業を再評価しているのかもしれませんが、具体的にそれに言及した資料は見つけることができませんでした。
(参考資料『個性を生かす教育(新時代をひらく学校改善シリーズ)』(今野喜清/編著 教育出版 1989.11)p.42に「基礎学力をつけるには一斉学習を主とする方がよい」という記述があります。
また、『アメリカの現代教育改革:スタンダードとアカウンタビリティの光と影』(松尾知明/著 東信堂 2010.1)p.163に「ドリル学習やワークシートによるテスト練習が増える」といった授業づくりに関する記述があります。)
以下に、一斉授業の再評価についての記述はありませんが、欧米の授業の現場について参考になりそうな資料を紹介します。
『ヨーロッパの教育現場から:イギリス・フランス・ドイツの義務教育事情』(下条美智彦/著 春風社 2003.4)
『日本学力回復の方程式:日米欧共通の試み』(釣島平三郎/著 ミネルヴァ書房 2006.8)