レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013/12/04
- 登録日時
- 2013/12/22 00:30
- 更新日時
- 2013/12/26 19:20
- 管理番号
- 6000013921
- 質問
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解決
土蔵の壁に家紋が描いてあるのを見かけた。火事除けに水の字が書いてあるのはよく見るが、こうした飾りをなんと言うかわかる本はあるか。また家紋以外の意匠も知りたい。
- 回答
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土蔵の壁面の装飾は妻飾り・丑鼻などと呼ばれ、火除けの水・龍の字のほか、家紋や吉祥文様などが鏝絵で描かれていることが多い。『民家のデザイン』などに意匠の紹介や解説があり。
- 回答プロセス
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52(建築)の書架を探し、資料の内容を確認する。
『よみがえる蔵 全国再生事例44選』(丸善出版)p7「なぜ蔵に魅かれるのか」に、一般的に蔵の切妻屋根の妻側2階には窓を設け、その上に丸い皿のような「丑鼻」を壁につけて「水」「龍」などの文字を火伏せのために描く、との記載があり。家紋についての言及はない。
『神社・寺院・茶室・民家 違いがわかる!日本の建築』(PHP研究所)p198-199「こて絵・なまこ壁は左官職人の腕の見せどころとの記載があり、上記「丑鼻」部分や扉などにこて絵が描かれるとした図があり。こて絵は漆喰で描かれた装飾画で、身近な動物や空想上の獣・七福神などが取り上げられることが多く、魔よけ・火よけ・商売繁盛の願いがこめられたとのこと。ただし丑鼻の名や家紋・水の字についての言及はなし。
『建築大辞典』(彰国社)で「丑鼻」を調べる。丑鼻はp125に項目があり、長野県地方の左官用語とのこと。長野では土蔵の梁に壁面から少し外に出ているものがあり、この梁の端を壁土で塗りこめて、家紋や屋号を入れたり、火除けのまじないとして水・竜などの文字の鏝絵をつけるとの記載があり。鏝絵(こてえ)についてはp579に項目があり、漆喰による浮彫り絵様の総称で、土蔵造りの店や蔵の妻の外壁に紋所・竜や水などの文字・松竹梅の絵などを描くことが江戸中期以降行われたなどの記載があり。
『民家のデザイン』(相模書房)p63-66「妻壁飾り」p67-70「妻飾りと胴の間飾り」に日本各地の民家の妻部分の装飾のイラストがあり。家紋や吉祥文様などの事例をたくさん見ることができる。p176-184「くらの窓」にも鏝絵の解説や、窓の上に紋所をあしらった事例の紹介があり。なお、特にp67で妻飾りについて、古い手法では屋根を受ける地棟が妻壁から突出したため円形や多角に整えたが、これが発達してさまざまな文様で飾るようになったとの記載があり、解説図が上記の丑鼻の構造に類似していた。そこで再度『建築大辞典』で「妻飾り」を調べるが、切妻または入母屋屋根の妻の部分の装飾的架構法の総称などとの記載があるものの、丑鼻との関連や水の字・家紋等に関する言及はなかった。
『鏝絵放浪記』(石風社)には家紋の事例はないが、全国各地の鏝絵の白黒写真等を見ることができる。
また学術コンテンツポータルGeniiで「鏝絵」を検索すると、論文や雑誌記事等がヒットし、本文をWEB上で見ていただけるものもあった。利用者にはこちらも合わせてご紹介し、豊中市で所蔵していない本・雑誌でも、必要な場合は複写の取り寄せや所蔵館のご紹介が可能な旨お伝えした。
このほか、『日本民家の造形』(淡交社)p235-237「土蔵、置き鞘、水屋蔵」には該当部分に飾りをつけた蔵の写真があるが、全体に写真が小さく、どのような意匠であるかはわからなかった。
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本の建築 (521 9版)
- 参考資料
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- 『よみがえる蔵 日本民家再生協会/編』(丸善出版)
- 『神社・寺院・茶室・民家違いがわかる!日本の建築 宮元 健次/監修』(PHP研究所)
- 『建築大辞典 彰国社/編』(彰国社)
- 『民家のデザイン 川島 宙次/著』(相模書房)
- 鏝絵放浪記藤田 洋三/著石風社
- キーワード
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- 土蔵(ドゾウ)
- 建築(ケンチク)
- 鏝絵(コテエ)
- 妻飾り(ツマカザリ)
- 丑鼻(ウシバナ)
- 長野県(ナガノケン)
- 家紋(カモン)
- 紋所(モンドコロ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 一般
- 登録番号
- 1000142278