レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2012年7月24日
- 登録日時
- 2012/11/26 09:26
- 更新日時
- 2012/12/21 14:28
- 管理番号
- 中央-1-00434
- 質問
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未解決
カラムシ(植物)の日本語文献による呼び名の変遷を知りたい。
(1)例えば、『万葉集』では「ムシ」と記されているため、いつから「カラムシ」になったのか。
(2)「苧麻(チョマ。中国由来の呼び名)」は、いつ日本に入ってきたのか知りたい。
- 回答
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(1)について
・『日本国語大辞典 第3巻 おもふ-きかき』 小学館国語辞典編集部/編集 小学館 2001
p.1097の「からーむし」の項では、例文として『書紀(720)』、『和名抄(934頃)』が載っている。
語源説の項目中、出典として『和漢三才図会』が載っている。
※ただし、同辞典第1巻の凡例p.7によると、この辞典で採用する出典・用例を採用する文献は、その項目の意味・用法について、最も古いと思われるものを載せているとのことなので、必ずしも初出であるとは限らないようである。
・『和漢三才図会 16 東洋文庫』 寺島 良安/[著] 平凡社 1990
p.354の苧麻(からむし)の項目に、「紵麻(ちょま)」の記載があり。『和漢三才図会』は1712年頃から編纂されたようなので、遅くともその頃には「チョマ」という呼び名があったということになるかもしれない。
原本は日本漢文で書かれているとのことなので、国立国会図書館近代デジタルライブラリーで公開されている『和漢三才図会』の「苧麻」のページを見てみたが、「紵麻」のところにはヨミはふられていなかった。
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/898179 (2012.11.26最終確認)
・『日本国語大辞典 第9巻 ちゆうひ-とん』 小学館国語辞典編集部/編集 小学館 2001
p.143 「ちょま」の項では、『薬品手引草(1778)』が載っている。
当市図書館所蔵検索システムで「チョマ」や「万葉&植物」、「和歌&植物」で書名検索し、以下の資料を確認。
・『苧麻・絹・木綿の社会史』 永原 慶二/著 吉川弘文館 2004
チョマという呼び名の変遷に関する直接の記載は無いが、参考までに質問者に紹介した。
・『萬葉植物事典』 大貫 茂/著 クレオ 2005
p.106 むし[カラムシ]の項には、呼び名の変遷については記載無し。「栽培しているものをチョマ(苧麻)、カラムシと呼ぶ」という記述あり。
・『万葉植物新考』 松田 修/著 社会思想社 1970
p.510 むし(蒸)の項では、和歌「蒸衾(むしぶすま)なごやが下に臥したれど~」の中の「むし」は「カラムシ」であるという説を否定している。この和歌では、「暖かな衾」の意で、ものを暖めることや熱いことを「むす」というためであるとしている。
・『植物の漢字語源辞典』 加納 喜光/著 東京堂出版 2008
p.210の[苧]の項に、文献として『詩経』や『名医別録』が挙げられているが、日本の文献ではない。
レファレンス協同データベースで、季語の初出がわかる資料として、次の資料が出ていたので、確認。
・『図説俳句大歳時記 夏』 角川書店/編 角川書店 1973
p.617 苧(からむし) 苧麻(からむし) 眞芹(まを) 白芹(しらを) 枲(げ) 線麻(せんま) ラミー
考証の欄に、『初学抄』(寛永18)、『毛吹草』(正保2)以下に六月として所出、とあり。
『滑稽雑談』(正徳3)に、苧麻(まを)「時珍本草に曰、苧麻、紵に作る。」とあり。
いつ「むし」から「からむし」になったかということや、「ちょま」という読み方についても記載無し。
(2)について
『麻と日本人 私たちはいつから麻について知らなくなったのだろう』 河井 洋/著 竹林館 2009
苧麻がいつごろ日本に入ってきたかということは書かれていないが、p.24とp.32のあたりが質問の参考になるのではということで、質問者に紹介した。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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・『花の万葉秀歌』 熊田 達夫/写真 山と渓谷社 1995
p.114とp.238には「むし」で載っている。
・『語源辞典 植物編』 吉田 金彦/編著 東京堂出版 2001
p.70の「からむし 苧」の項では、「イラクサ科の多年草。茎の皮から繊維を採り、越後縮などの布を織る。『和名抄』に「麻苧」加良天之」と見える。」とあり。語源として、「繊維を取るのにカラ(幹)を蒸すことから」が定説。茎を湿らせた上、むしろをかけて長時間蒸し、自然発酵させてから繊維を取ったことから、単にムシとか蒸麻(ムシヲ)とか呼ばれた」とあり。
『和名抄』については、『日本大百科全書 24 りさ‐ん』(小学館 1988)p.825によると、平安時代931年~938年ごろの成立となっていた。
- NDC
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- 語源.意味[語義] (812 9版)
- 植物地理.植物誌 (472 9版)
- 参考資料
- キーワード
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- からむし
- ちょま
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000114864