レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年10月17日
- 登録日時
- 2021/03/08 14:52
- 更新日時
- 2023/07/26 10:27
- 管理番号
- 千県東-2020-0013
- 質問
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解決
ナデシコには「撫子」だけでなく「石竹」「瞿麦」など様々な漢字の書き方や別名があるが、それはなぜか。また名前や漢字の由来はどういうものか。
- 回答
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【資料1】『図説花と樹の大事典』(植物文化研究会編 柏書房 1996)
p320-321「ナデシコ(撫子)」
和名の由来として、以下の4つが挙げられていました。
①小さくかわいい花を愛児に擬してナデシコ(撫子)といったもの
②ナデスリクサ(撫擦草)の意
③密生するためナヅミシゲ(泥茂)の意
④ナテチクサウ(南天竺草)の意味
また古典和歌の中では、大陸文化の影響からか「石竹」「瞿麦」と漢名で表記されていることが書かれていました。
p249「セキチク(石竹)」
こちらは「ナデシコ科の多年草。中国原産」「平安時代に渡来したと考えられ(中略)日本種のヤマトナデシコに対して、外来種をカラナデシコと呼んだ」と書かれていました。
【資料2】『野草の名前 夏 山溪名前図鑑』(高橋勝雄写真・解説 山と溪谷社 2003)p94-95「カワラナデシコ」
ナデシコが『万葉集』で「瞿麦之花」として登場することについて、「中国から渡来の「瞿麦」が「撫子」に相当すると思い、「瞿麦」の字に「ナデシコ」の名を当てた」との記述がありました。
また、中国から石竹類が入ってきた際にこれらを「唐撫子」と呼び、在来種を「河原撫子」や「大和撫子」と呼んで区別したことが書かれています。
更にカワラナデシコが古代「都古奈都(とこなつ)」「度古奈都(とこなつ)」とも呼ばれていたことについて、「花期が長いので、夏が続くという意味で「常夏」である」とありました。
【資料3】『植物和名の語源』(深津正著 八坂書房 1999)
p274-275「ナデシコ」
大和撫子の名の起こりとして、「寛平年間(890年頃)、きさいの宮の歌合せのとき、素性法師が詠んだ(略)歌に始まるとされている。」との記述がありました。
また唐撫子=石竹の名について、「初生葉が小さな竹の葉に似て、細い茎に節があるから起こったという」と書かれていました。
【資料4】『四季の花事典』(麓次郎著 八坂書房 1999)
p228-233「ナデシコ」
名前の変遷について【資料1】から【資料3】までと同様の記述があります。
また「瞿麦」という名については、「この名は元来、中国原産のセキチクで、種子が麦あるいは燕麦に似ているとしてつけられた」、「セキチクの種子が薬物として本草書とともに、早く渡来し、実植物を確認せぬまま、種子が似ていることと、文献とから盲目的にカワラナデシコを瞿麦と認定したとも思われる」とありました。
【資料5】『漢字の植物苑 花の名前をたずねてみれば』(円満字二郎著 岩波書店 2020)p105-107「ナデシコというには武骨だなあ」
中国での「瞿麦」と「石竹」は厳密にいうと違う植物を指すが、よく似ているので同じものとして扱われることを指摘したうえで、「その両者は特徴がナデシコに似ていたことから、日本ではナデシコと同じ植物だと思われていた」とありました。
【資料6】『草木名の語源』(江副水城著 鳥影社 2018)
p263-264「ナデシコ・セキチク・トコナツ」
著者の唱える「新音義説」にのっとり、「ナデシコ」と別名である「トコナツ」の語源が説明されています。それによると、ナデシコは「美しい赤い(花)」、トコナツは「とても紅い美しい(花)」の意味であると書かれていました。
【資料7】『語源辞典 植物編』(吉田金彦編著 東京堂出版 2001)
p173「なでしこ」
「語源」の項目では、「撫で愛する、なでいつくしむ、その花(子)」が由来であるとされていました。
- 回答プロセス
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・ナデシコの基本情報を確認するため、分類記号470(植物学)の参考図書の書架を確認し、【資料1】【資料4】を見つけた。
・当館蔵書検索を全項目「名前」&分類記号470で検索し【資料2】を、全項目「語源」&分類記号470で検索し【資料3】【資料6】を、件名「植物」&分類記号81(日本語)で【資料7】を見つけた。
・国立国会図書館オンラインをキーワード「名前」&分類記号470で検索し、【資料5】を見つけた。
・情報が見つけられなかった資料
『植物の名前の話』(前川文夫著 八坂書房 1981)
『植物和名の語源探究』(深津正著 八坂書房 2000)
『草花もの知り事典』(平凡社編 平凡社 2003)
『植物の和名・漢名と伝統文化』(寺井泰明著 日本評論社 2016)
『花の由来』(安藤宗良著 婦女界出版社 1990)
『植物名の由来』(中村浩著 東京書籍 1998)
『草木の本』(湯浅浩史文 光琳社出版 1998)
『草木帖 植物たちとの交遊録』(飯泉優著 山と渓谷社 2002)
(インタ-ネット最終アクセス:2020年11月26日)
※参考資料末尾の数字は資料番号です。
- 事前調査事項
- NDC
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- 被子植物 (479 9版)
- 花卉園芸[草花] (627 9版)
- 語源.意味[語義] (812 9版)
- 参考資料
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- 【資料1】『図説花と樹の大事典』(植物文化研究会編 柏書房 1996)(2100365231)
- 【資料2】『野草の名前 夏 山溪名前図鑑』(高橋勝雄写真・解説 山と溪谷社 2003)(2101583647)
- 【資料3】『植物和名の語源』(深津正著 八坂書房 1999)(2101087765)
- 【資料4】『四季の花事典』(麓次郎著 八坂書房 1999)(2101050470)
- 【資料5】『漢字の植物苑 花の名前をたずねてみれば』(円満字二郎著 岩波書店 2020)※県立図書館未所蔵
- 【資料6】『草木名の語源』(江副水城著 鳥影社 2018)(1102534476)
- 【資料7】『語源辞典 植物編』(吉田金彦編著 東京堂出版 2001)(2101388722)
- キーワード
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- 植物―命名法(ショクブツ-メイメイホウ)
- 語源(ゴゲン)
- ナデシコ(ナデシコ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000294831