レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 登録日時
- 2020/11/04 11:42
- 更新日時
- 2022/01/29 16:40
- 管理番号
- 北九2020中央068
- 質問
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解決
儒学者亀井南冥による北九州の「白島碑」(崗縣白島碑)に関する資料はありますか
ほかにも関係資料があれば教えて下さい。
- 回答
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亀井南冥が後に官職を取り上げられる(西学問所甘棠館学長を罷免)遠因の一つとして、
「太宰府碑」と「白島碑」=崗縣白島碑石打ち砕きの一件があげられます。
そのうち「白島碑」は亀井塾の門人で山鹿浦大庄屋秋枝廣成(あきえだ・ひろなり)に依頼を受けた南冥が
文を作り、弟の崇福寺住職曇栄が筆を揮って書きあげたものでしたが、藩より建立中止の命が出て打ち壊されました。
亀井南冥の伝記の中でその事柄を確認できる資料と石碑に特化して記述のあるもの等、下記の資料をご紹介しました。
大正6年出版の『大典記念筑豊沿海志』には大正新陛下即位の大典記念に脇の浦・脇田の記念事業として破壊された「白島の碑」の再建にむけた当時の脇田組合長亀津亀太郎氏の思いが記されています。
若松図書館所蔵 本田十一郎(号の本田白仙として大正五年『安屋記』を執筆。)著『安屋村・脇田浦 郷土史 第二篇 』には「白島碑」が予定通り再建されたことと建立の場所が記されています。(南冥撰「白島碑」と再建の由来を記したふたつの石碑が建立。)
吉田初三郎の鳥瞰図が再建後の時期と合致しており初三郎全盛期の昭和8年(1933)若松市政二十周年記念事業として描かれた若松市鳥瞰図に台風被害にあう前の「白島碑」が描かれていることが確認できます。
- 回答プロセス
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自館端末にて「亀井南冥」「白島碑」をキーワードに検索。
「白島碑」では該当がなく郷土の棚をブラウジング、市内の地域資料所蔵館の資料を確認しました。
白島碑の原碑の拓本を雙鉤(籠字に写し取ること)したものの写真が「亀井南冥 ・昭陽全集」第八巻上の巻頭に掲出されていました。
こちらは南冥の弟曇栄が住持を務めた博多崇福寺永寿院に伝わったもので
秋月の旧亀陽文庫に寄贈され能古島の能古島博物館(現亀陽文庫)が現在所蔵しています。
ふたつの石碑が建立されたことが資料から判明、同時期である吉田初三郎全盛期の「若松市鳥観図(1933年)」に描かれていると郷土史家の方よりお知らせいただきました。(今回のことから関連石碑が現存することが判明,倒れた後再建の場所から移設されているもの。碑文の内容照合による。)
若松えびす神社の東側の鳥居が若松の船手支配安川慶治寄進で1780年(安永9年)亀井南冥撰である記載と銘文解釈が「文化財を守る会 No62」会報に有り。携わっているのが南冥の子昭陽・曇栄等諸説あることが北九州市史・遠賀郡誌・恵比須神社御神徳記・若松繁盛記より判明。
秋枝廣成の墓標の碑文(亀井南冥撰)が「芦屋の墓誌と碑誌 上巻」に収録されていました。
- 事前調査事項
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亀井南冥(1743~1814年)。福岡藩の儒医(儒者兼医師)東西学問所のうち西学問所の「甘棠館(かんとうかん)」の初代学長(祭酒)となる。志賀島で発見された金印についての鑑定を依頼され『後漢書』の一説を用い後漢の光武帝から賜った金印であると学説をいち早く考証。その後、寛政2年(1790年)に寛政異学の禁が出され、朱子学以外の学問が禁止されると、各藩にも影響が出て活躍がかえって妬まれていた南冥自身を標的にされ失脚。藩命により蟄居の処分を受けさらに甘棠館は焼失して廃止。息子の昭陽(しょうよう)とともに亀井塾を再開し藩学の中から姿を消したが以後、亀門の学問は私塾の中で守り継がれていき慶応4年に廃業するまで100年に及ぶ期間存続。亀井塾から育ったのが咸宜園を創設した広瀬淡窓( 1782 - 1856)や高場乱(1831~1891年)秋月藩の原古処・国学者伊藤常足。
昭陽の愛弟子徳永玉泉が叔父にあたる旧福岡藩士安川敬一郎がおり、安川の設立した明治専門学校(現九工大)には渋沢栄一揮毫の論語由来の書が残されている。
- NDC
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- 日本史 (210)
- 参考資料
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北九州の文化財を守る会会報 No.53 昭和60年10月1日号 「白島拝領のぐわいと亀井南冥」森川政美
No.62 昭和63年2月1日号 「若松恵比寿神社から高塔山へ」 -
亀井南冥昭陽全集 第8巻 上 亀井 南冥/[著] 亀井 昭陽/[著]マーク番号:93205865
葦書房 1980 分類:121.56 (0011185980) - 儒俠亀井南冥 高野江 鼎湖/著マーク番号:94325967 丸善(発売) 1913 分類:121.56 (0010990141)
- 若松市史 全 復刻版 福岡県若松市役所/編名著出版 1974.12 「秋枝廣成」の項目に関連記載あり771p~773p、「脇田脇浦御理由上る口上書」306p~307p (0017017153)
- 若松市史 第2集 若松市史第二集編纂委員会/編纂 若松市役所 1959.4 分類:219.1 白島碑57p 白島53~66p (0011173234)
- 筑豊沿海志 筑豊水産組合/編 1917 筑豊水産組合 1917 分類:K295 168p~171p (0012529871)
- 福岡県碑誌 筑前之部 荒井 周夫/編纂 大道学館出版部 1929 分類:210.028 K280 931p~933p (0011195401)
- 儒俠亀井南冥 高野江 鼎湖/著 マーク番号:94325967丸善(発売) 1913 分類:121.56 (0010990141)
- 亀井南冥小伝 河村 敬一/著 4-905327-28-8 978-4-905327-28-8 花乱社 2013.10 分類:121.56 (0312800329)
- 亀井南冥と一族の小伝 庄野 寿人/編亀陽文庫のしおり 亀陽文庫 1974 分類:K123 (0011771060)
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郷土先賢詩書画集 緒方 無元/編 緒方 久一郎/編
郷土先賢顕彰会 1975 分類:728 K728 (0011240108) - 海流に民の声 野依 いさむ/著白島原油基地レポート 裏山書房 2002.2 分類:568.6 (0212020911)
- 儒学者亀井南冥 早舩 正夫/著 4-905327-23-3 978-4-905327-23-3 花乱社 2013.1 分類:121.56 (0017464447)
- 安屋村・脇田浦 郷土史 第二篇 本田 十一郎/著 [本田十一郎] [出版年不明] 分類:219.1 (0212241137)
- 安屋記 本田 白仙/編纂 永田 栄市郎/書写 永田 栄市郎 2005.7 分類:K211.5 (0211606256)
- 北九州市史 近世 北九州市史編さん委員会/編集 北九州市 1990 分類:219.1 藩校と私塾(福岡藩)1097p (0012388443)
- 美しき九州 益田 啓一郎/編 「大正広重」吉田初三郎の世界 海鳥社 2009.2 分類:291.9 K295 19p (0016653743)
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若松100年 若宮 幸一/編集 田上 繁/編集 地図に描かれた風景 旧古河鉱業若松ビル100周年記念事業実行委員会 2019.11
(「若松市鳥瞰図」 昭和8年 1P) (0018464594) - 芦屋の墓誌と碑誌 上巻 藤本 春秋子/著 浜木綿発行所 1982.5 分類:281.02 (0011225224)
- 滄溟の海原 伊高 正弘/著 若松恵比須神社御神徳記 若松恵比須神社々務所 1985 (0011190030)
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郷土の先達 第二巻 一般社団法人東京福岡県人会「郷土の先達」上梓特別委員会/編集
福岡県東京福岡県人会 2020.3 148頁~150頁 (0018527747) - 若松市史 福岡縣若松市役所/編 福岡縣若松市役所 1937.12 771頁~773頁(大願寺/当時の秋枝勘次郎墓標写真等/現在秋枝家の墓標は取りまとめられている) (0011084092)
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北九州市の文化財随想 [北九州市の文化財を守る会/編]
北九州市の文化財を守る会四十周年記念誌
北九州市の文化財を守る会 2012.5 分類:219.1 タイトルコード:1000001050232
(北九州市の文化財を守る会会報 No.62 昭和63年2月1日号 「若松恵比寿神社から高塔山へ」と同じ内容)
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北九州の文化財を守る会会報 No.53 昭和60年10月1日号 「白島拝領のぐわいと亀井南冥」森川政美
- キーワード
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- 亀井南冥
- 白嶋
- 白島
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 所蔵調査
- 内容種別
- 白嶋 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000289136