レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2018年06月25日
- 登録日時
- 2020/03/26 18:05
- 更新日時
- 2020/03/26 18:09
- 管理番号
- 横浜市中央2588
- 質問
-
解決
古道、鎌倉街道上ノ道について、横浜市内、特に瀬谷区内を通る道を歩いてみたい。
参考になる文献を教えてほしい。
- 回答
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横浜市瀬谷区を通る鎌倉街道は、一般に上ノ道(かみのみち)と呼ばれ、「化粧坂(神
奈川県鎌倉市)、洲崎(同)、渡内(藤沢市)、柄沢(同)、飯田(横浜市)、瀬谷(
同)、鶴間(東京都町田市)、木曾(同)、小野路(同)、関戸(多摩市)、分倍(府
中市)、府中(同)、恋ヶ窪(国分寺市)、野口(東村山市)、堀兼(埼玉県狭山市)、
菅谷(比企郡嵐山町)、鉢形(大里郡寄居町)、雉ヶ岡(児玉郡児玉町)から上野・下
野・信濃方面に通じ」「建久四年(1193)源頼朝の入間野・那須野の狩や、元弘三年(
1333)新田義貞鎌倉攻めの進路になっている。」(『国史大辞典』吉川弘文館)とのこ
とです。
1 鎌倉街道(上ノ道)について
古道については、確たる道筋が現在も残っているわけではありません。風土記や古記
録・古文書等の史料、土地に残る石碑や伝承、残存する道や地形など、さまざまな手が
かりから推定されるものです。鎌倉街道(上ノ道)の道筋については、昭和時代の初期、
現地調査を重んじる在野の歴史地理学者であった高橋源一郎氏や、県立高校教諭ののち
神奈川県立博物館勤務となる古道研究家の阿部正道氏などにより、実地踏査の上で論じ
られています。
以下、街道に関する総論的な文献についてご案内します。
(1)『武蔵野歴史地理 第4冊(第8篇)』
高橋源一郎/編 武蔵野歴史地理学会 1932.9
p.572~597「鎌倉古街道」
武蔵野を通る鎌倉の古道は何本もあったとし、そのうち戸塚から二俣川に至り、
十日市場、長津田を越えて成瀬、本町田、小野路、関戸、分倍河原の先までを実際
に踏査して考察しています。この古道の特徴として、平坦な所を通った、最短距離
を通ったなど7項目を挙げ、街道沿いに残る遺跡(古道跡)について記しています。
(2)「論説 武蔵野に於ける鎌倉古街道に就いて」高橋源一郞
(「考古学雑誌」 18巻12号 日本考古学会 1928.12)p.739~757
(3)『「鎌倉」の古道 鎌倉国宝館論集 第2』 阿部正道/著 鎌倉市教育委員会 1958
p.22~35「鎌倉街道 藤沢方面~上ノ道」
風土記や史書、現地に残る石碑(板碑)などを参照しながら、吉田東伍氏の「大日
本地名辞書」の記述を引用し、古道(上ノ道)は柄澤(藤沢市)から境川沿いに北
進し、町田付近(井出沢)から多摩丘陵に入り小野路を経て関戸に至るとしていま
す。
こちらの資料は国立国会図書館デジタルコレクション(図書館内送信限定)で閲覧
できます。(https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2486524)
(4)『人文地理学の諸問題 小牧実繁先生古稀記念論文集』
小牧実繁先生古稀記念事業委員会/編 大明堂 1968.10
p.13~25「鎌倉街道について その分布と遺跡」(阿部正道/著)
(5)『かながわの古道 かもめ文庫』 阿部正道/著 神奈川合同出版 1981.3
2 鎌倉街道上ノ道を歩く
以下、歩くために参考にできる、地図等を掲載している書籍について、ご案内します。
(1) 上ノ道を歩く
ア『旧鎌倉街道探索の旅 1 上道・山ノ道編』
芳賀善次郎/著(塩澤裕/再編集) さきたま出版会 2017.4
本書の初版は1978年。芳賀善次郎氏は、学校教諭を経て東京・新宿の文化財調査
委員。南関東各地の郷土市史、県史そのほか、阿部正道氏著作を参考に、初版当時
の古道ブームの中、上ノ道を“歩く”ことを重点に、歩ける地図を付した古道解説
書です。鎌倉から東俣野、境川沿いに北上して本町田、関戸、若林、藤岡、高崎へ
と至るルートを紹介しています。2017年版は、上ノ道と山ノ道を合わせた合冊版と
して再編集。初版にあった枝道の紹介等が省かれ、構成も変更されているなど、芳
賀氏による初版との異同には留意する必要があります。
イ『鎌倉街道平成に歩く』 塩澤裕/著 さきたま出版会 2019.11
塩澤裕氏は、鎌倉街道を実際に歩いてたどるテレビ番組制作に携わった構成作家。
芳賀善次郎氏の示した道筋を現在の道にたどりながら解説しています。古道を探り
つつも失われた道筋を追求するのではなく、いま歩くことを主眼に、往時の古道に
できるだけ近い歩けるルートを示しています。現在の地図と写真(白黒)を付し、
歩きやすくなっています。
ウ『40代からの街道歩き《鎌倉街道編》』
街道歩き委員会/著(内田晃/著) 創英社/三省堂書店 2019.9
内田晃氏は、街歩きで著作活動を行っている旅行記者。安中を起点に南下、町田、
瀬谷、下飯田を抜け、鎌倉へ。全編カラーで写真が豊富、写真にはキャプションが
付き、地図は鉄道駅から鉄道駅までを一区間として路程を示しており、歩くことを
前提とした本の作りとなっています。
エ『横浜の古道 増補改訂版』
横浜市教育委員会文化財課/編 横浜市教育委員会文化財課 1996.3
横浜市内を通る近世の主要道を地形図上に図示した地図集。鎌倉道については、
近世道、境川東岸藤沢八王子往還としてその道筋を紹介しています。地形図に朱線
で道筋を示すほか、巻末に沿道に残る道標(庚申塔・地神塔等)と、表された碑文
を掲載。1987年刊行の初版の、図面を更新した増補改訂版。
(2) 横浜市瀬谷区(泉区)内を歩く
(区役所や地域の郷土史家が著したガイドブックなど)
ア『瀬谷の史跡めぐりガイドブック』瀬谷の史跡めぐりガイドブック編集委員会/編
横浜市瀬谷区役所地域振興課 2019.10
瀬谷区区政制50周年を記念して発行した、区内の史跡・名所を紹介するガイドブ
ック。「鎌倉古道北コース」で瀬谷駅以北を、「同南コース」で瀬谷駅以南を紹介。
コースは必ずしも古道をなぞる形ではありませんが、沿道の史跡・名所を訪ねなが
ら歩いて回るウォーキングガイドとなっています。
イ『泉区散策ガイド 水と緑と歴史の散歩道 改訂』
横浜市泉区役所総務部地域振興課/制作 2016.11
泉区区制30周年を機会に改訂した、区内歴史散歩のガイドブック。「鎌倉道・日
蓮ゆかりのコース」では、いずみ中央駅から境川沿いに北上するコースを設定、古
道と周辺の史跡・名所を紹介しています。巻末には「泉区の古道」として、鎌倉道
(藤沢八王子道)、たつ道(鎌倉道)、かまくらみちほか、区内を通る古道について、
地図を掲げ解説しています。
ウ『いずみいまむかし 泉区小史』
泉区小史編集委員会/編 泉区小史発行委員会 1996.11
p.156~161「鎌倉への道「かまくら道」」
俣野町から飯田を経て瀬谷を通る、境川沿いに北上する道を紹介。上ノ道を通っ
たであろう歴史上の人物についても掲げています。たつ道や、俣野町から東へ行き
中田町・和泉町の境を北上、阿久和・二ツ橋方向へ抜ける道も、間道かまくら道と
して挙げています。
エ「近世の道「藤沢・八王子道」と中世の道「鎌倉上の道」と「たつ道」」
馬場芳宏 (「とみづか」 37号 郷土戸塚区歴史の会 2011.6)p.24~27
境川東岸の古道を、中世の上の道とたつ道、近世の藤沢八王子道の3つに区別し
て論じています。たつ道(立道)は、境川と和泉川の合流点近くで上ノ道と分かれ、
台地上を北に直線的に伸びる道です。屈曲のある境川よりの道では軍道に適さず、
騎馬の早駆け等に適した直線的な道ができたと考察しています。上掲『横浜の古道』
(近世の道)を引き合いに、中世の道筋との違いを論じています。
※インターネット情報の最終確認日:2020.2.21
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
-
- 日本 (291 8版)
- 交通史.事情 (682 8版)
- 陸運.道路運輸 (685 8版)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000279603