レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2019/3/19
- 登録日時
- 2019/04/17 13:59
- 更新日時
- 2019/10/14 09:21
- 管理番号
- 島根参2019-03-004
- 質問
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解決
現行法規総覧の序文(「刊行に寄せて」法務府法制意見長官,佐藤達夫)に「・・・法令の数はいかに多くとも、それが人々の知り得ない、又は知り難い状態におかれていたのでは、それこそ、高竿の先にひるがえるディオニシウス王の布告と異ならず、到底今日の民主主義・法治主義の下における法令としての意義をなさない。・・・」と書かれている。この「ディオニシウス王の布告」とはどういう意味で使われているのか知りたい。
- 回答
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『外国人物レファレンス事典 古代-19世紀』(日外アソシエーツ 1999)を調査。王、または君主とある「Dionysios」は以下のとおり。
Dionysios Ⅰ(前5・4世紀) シラクーザの僭主。カルタゴの進出をくいとめ、南イタリアへも遠征。
Dionysios Ⅱ(前4世紀) シラクサの僭主(在位前367~356,前354~343)。ディオニュシオス1世の長男。
『古代ギリシア人名事典』(原書房 1994),『岩波西洋人名辞典』(岩波書店 1981),『岩波=ケンブリッジ世界人名辞典』(岩波書店 1997),『岩波世界人名大辞典』(岩波書店 2013)を調査。「ディオニシウス」の項に「法」「布告」に関する記載なし。
『平凡社大百科事典 10』,『日本大百科全書 16』を調査。「ディオニシウス」の項に「布告」「法」に関する記載なし。
『古代ギリシアの歴史』(講談社 2004),『図説世界の歴史 2 古代ギリシアとアジアの文明』(創元社 2003)を調査。索引に「ディオニシウス」なし。
『興亡の世界史0 3 通商国家カルタゴ』(講談社 2009)p226~「シチリアをめぐる混沌」にディオニュシオスの名前が出てくるが、王の布告に関する記載なし。
国立国会図書館オンラインで「ディオニシウス 法」を検索したところ、『法窓夜話』(穂積陳重 著,有斐閣,大正5 ※国会図書館デジタルコレクションインターネット公開)p38~39に「一二 ディオニシウス縣柱の法」が収載されていることが判明。当館に岩波書店刊『法窓夜話』の所蔵があり、以下の記述を紹介した。
『法窓夜話 [正] 岩波文庫』(岩波書店 1980)
p54 「一二 ディオニシウス、懸柱の法」
昔シラキュース王ディオニシウス(Dioniysius)は、桀紂(夏の桀王と殷の紂王)にも比すべき暴君であったが、彼は盛んに峻法を設けて人民を苦しめた。一つの法令を発するごとに、これを一片の板に書き付け、数十尺の竿頭高く掲げて、これをもって交付と号した。人民は竿頭を仰ぎ見て、また何か我々を苦しめる法律が出来たなと想像するのみで、その内容の何たるかを知ることができず、丁度頭の上で烈しい雷鳴が鳴るように思うて、恐れ戦くの外はなかったと言い伝えている。立法者にして殊更に文章の荘重典雅を衒わんがために、好んで難文を草し奇語を用うる者はディオニシウスの徒である。・・・(後略)
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 法律 (320 8版)
- 古代ギリシア (231 8版)
- 参考資料
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穂積 陳重/著 , 穂積‖陳重. 法窓夜話 [正]. 岩波書店, 1980. (岩波文庫)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I000100396-00 , ISBN 4003314719 (p54 当館請求記号 青岩波文庫1/147-1)
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穂積 陳重/著 , 穂積‖陳重. 法窓夜話 [正]. 岩波書店, 1980. (岩波文庫)
- キーワード
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- 法令
- 悪法
- 立法
- 古代ギリシャ
- 専制君主
- カルタゴ
- シラクサ
- 法律家
- 倫理
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000255082