レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2017年11月05日
- 登録日時
- 2018/01/18 20:06
- 更新日時
- 2018/01/31 17:02
- 管理番号
- 岩手-305
- 質問
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解決
岩手県にニホンオオカミが生息していたのはいつごろまでか。宮沢賢治「狼森と笊森、盗森」の狼森には狼が生息していたのか。
- 回答
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岩手県におけるニホンオオカミの絶滅時期については、下記の資料に記載があり、明治10~20年代とされるが、いずれも推測となっている。
◆『いわてレッドデータブック 岩手の希少な野生生物 2014年版』岩手県環境生活部自然保護課∥発行 2014年
p.230「ニホンオオカミ カテゴリー区分絶滅」
“岩手県内には江戸末期まで広く生息していたと考えられるが、明治20年代に絶滅したと推定される。”
◆『野生動物と生きる 岩手のシカとクマ』岩手県立博物館∥編集 岩手県文化振興事業団∥発行 2009年
p.27「姿を消した獣たち」
“藩政時代から、狼が馬や家畜を襲い、時には人も襲うため、東北地方では狩猟や毒餌による狼退治が盛んに進められていました。明治の初め頃、岩手県では狼の駆除に懸賞金がつけられました。上の写真の剥製は〔写真のキャプション:ニホンオオカミ東京大学農学部蔵〕、明治14年(1881)に購入された岩手県産の雌のニホンオオカミであると伝えられていますが、この後まもなく岩手県からオオカミが消えたと推測されます。”
◆『消えゆく岩手の自然 生き物たちのメッセージ』岩手県立博物館∥編集 岩手県文化振興事業団∥発行 2004年
p.5「ニホンオオカミ」
“ニホンオオカミは明治10年代にあっという間に絶滅してしまいました。”
◆『ニホンオオカミは消えたか?』宗像 充∥著 旬報社∥発行 2017年
p.205
“岩手県では、一八七五~一八八〇年までに計二〇一頭の狼が捕獲されている(中沢智恵子『明治時代、東北地方で行われた狼駆除』)。背景には馬産地への狼による被害への対処として、県が設けた駆除手当金制度がある。しかし捕獲頭数は一八八〇年には二二頭に減り、地域的な個体群の崩壊を想像させる。同様の制度は東北各県にあった。”
◆「明治時代東北地方におけるニホンオオカミの駆除」中沢智恵子∥著
https://www.jstage.jst.go.jp/article/wildlifeconsjp/12/2/12_KJ00006439986/_pdf
岩手県が実施した駆除手当金制度について、布達の内容や捕獲数などがまとめられている。
獲狼賞与規則について、“1902(明治35)年時点で有効な岩手県内の達・告示等を収録した「岩手県現行令達類聚」中に存在しないので,1902(明治35)年以前に廃止されたことがわかる.〔中略〕今回の調査では1889(明治19)年の獲狼賞与規則を最後に,翌年以降の岩手県のオオカミに関する公文書記録は見つからなかった.”とある。
また、狼森のある雫石町の地域資料を確認したところ、『雫石町史』に雫石における近世の狼害に関する記載があった。
◆『雫石町史』雫石町∥発行 1979年
⇒p.590「第四編 藩政下の雫石 第五章 社会と生活 第八節 狩猟と生活 二、マタギ 狼」
そのほか「狼」のつく地名の由来について、狼との関係を記した資料があり参考として紹介する。
◆『狼 その生態と歴史』平岩米吉∥著 動物文学会∥発行 1981年
p.161「三 狼害と狼という地名」
“狼が多い地方では、そのよい面があらわれると、狼を祀る神社ができ、また、悪い方面が目立つと、狼という名のつく地名になって残る。だいたい、関東から中部地方では神社ができ、東北(奥羽)では狼という地名がたくさん残った。”
p.163~194「(二)狼という地名」前書部分を抜粋
“ところで、ここに取りあげた「南部藩家老日誌」や「東遊雑記」をはじめ、この地方の民俗を扱ったものには、狼という字のつく地名がいくつもあらわれてくる。東北地方は開発が遅れていたので、それだけ狼も棲みよかったのであろう。”
◆『谷川健一全集14:地名 日本の地名 続日本の地名他 1』谷川健一∥著 冨山房インターナショナル∥発行 2007年
p.232~233「オオカミ 狼森・狼沢」
“このような東北地方の各県に狼のつく地名が点々とあるのは、狼の数が多く、害も含めて、さまざまな交流があったことを示している。”
◆『定本宮澤賢治語彙辞典』原子朗∥著 筑摩書房∥発行 2013年
p.99~100「狼」
“賢治作品で方言オイノとルビをふって登場するのは民話や伝説上の狼で、現実にはもう狼の生態は見られなかったわけである。”
◆『岩手の地名百科 語源・方言・索引付き大事典』岩手日報社∥発行 1997年
p.72「狼穴(おいのあな・二戸石切所)」
ほか小見出し地名として「狼久保」「狼森」などあり。
“岩手方言「おいぬ」「おいの」「おいね」「おおいぬ」「おかべ」「おおかめ」「おいす」で、ニホンオオカミの生息、狼を眷属とする山神、三嶺神社信仰。”
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 動物地理.動物誌 (482)
- 小説.物語 (913)
- 参考資料
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岩手県環境生活部自然保護課 編 , 岩手県. いわてレッドデータブック : 岩手の希少な野生生物 2014年版. 岩手県環境生活部自然保護課, 2014.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I026587089-00 (当館請求記号:122/イワ/2014) -
岩手県立博物館/編集 , 岩手県立博物館. 野生動物と生きる : 岩手のシカとクマ. 岩手県文化振興事業団, 2009.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I000463042-00 (当館請求記号:K/489.86/ヤセ) -
岩手県立博物館 編集 , 岩手県立博物館. 消えゆく岩手の自然 : 生き物たちのメッセージ. 岩手県文化振興事業団, 2004.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I036211569-00 (当館請求記号:K/462.122/イワ/) -
宗像充 著 , 宗像, 充, 1975-. ニホンオオカミは消えたか?. 旬報社, 2017.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I027797111-00 , ISBN 9784845114870 (当館請求記号:489.56/ムナ/) -
中沢 智恵子 , 中沢 智恵子. 明治時代東北地方におけるニホンオオカミの駆除. 2010-03-01. 野生生物保護 : Wildlife conservation Japan 12(2) p. 19-38
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000024-I004535196-00 -
平岩米吉 著 , 平岩, 米吉, 1898-1986. 狼 : その生態と歴史. 動物文学会, 1981.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001514927-00 (当館請求記号:489.5/ヒ2/1) -
谷川健一 著 , 谷川, 健一, 1921-2013. 谷川健一全集 第14巻(地名 1). 冨山房インターナショナル, 2007.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008441297-00 , ISBN 9784902385342 (当館請求記号:081.6/タニ/14) -
原子朗 著 , 原, 子朗, 1924-2017. 定本宮澤賢治語彙辞典 = The Newest Dictionary of Miyazawa Kenji Glossary. 筑摩書房, 2013.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I024729748-00 , ISBN 9784480823670 (当館請求記号:ケン/910.268/ハラ/) -
芳門申麓 著 , 芳門, 申麓, 1920-. 岩手の地名百科 : 語源・方言・索引付き大事典. 岩手日報社, 1997.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002718435-00 , ISBN 4872012305 (当館請求記号:KR/291.0189/ヨシ/) -
雫石町史編集委員会/編集 , 雫石町. 雫石町史. 雫石町, 1979.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I012312108-00 (当館請求記号:K/213.1/シ3/)
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岩手県環境生活部自然保護課 編 , 岩手県. いわてレッドデータブック : 岩手の希少な野生生物 2014年版. 岩手県環境生活部自然保護課, 2014.
- キーワード
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- 狼害
- ニホンオオカミ
- 宮沢賢治
- 狼森
- 絶滅
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土 地名
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000228732