レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2017/07/14
- 登録日時
- 2018/01/15 00:30
- 更新日時
- 2018/01/19 12:38
- 管理番号
- 北方 17-0040
- 質問
-
解決
根室市長節の地名の読みについて、「ちょうぼし」となった経過を知りたい。
また、「ちょうぶし」と読むのが間違いであるかどうか知りたい。
●その質問の出典や情報源、調査済み事項など
地元住民が「ちょうぼし」と言い慣わしている。
また、「ちょうぼし」は国土地理院の地図に記載されており、戦前の文献でも散見される。
根室市の町名に「長節」はあるが、読み方の記載はない。
長節湖は野付風蓮道立自然公園においては「ちょうぼしこ」とされており、根室市においても根室十景のひとつとして「LAKE CHOBOSHI」とされている。
- 回答
-
地名の由来は諸説あり、回答資料1~8を要約すると次のとおり
1.長節湖の湖沼名に由来
2.アイヌ語に由来①
チ・オ・プシ・イ=我ら・自ら・破る・もの
「チヲブシ。おのずから破れると訳す。此沼折節自然と破れる故、字になすという」(上原地名考)
3.アイヌ語に由来②
チェプ・ウシ=魚・多い
「チェプウシ。魚処。二沼あり。沼中にボラ魚多し。今人チョープシと云ふは非なり」(永田地名解)
その後の読み方の変遷について記述のある資料は発見できなかったが、
古くはチヨウフシやチヲブシとも呼ばれていたとのこと(回答資料1)
また、十勝支庁豊頃町に同じく「長節」という地名があり、十勝は「ちょうぶし」、
根室は「ちょうぼし」と読まれている(回答資料9~10)
各資料の記述を次のとおり紹介する
・『角川日本地名大辞典 1-[1]』(回答資料1)
p883「ちょうぼし 長節〈根室市〉」
古くはチヨウフシ・チヨブシといった。
地名は長節湖の湖沼名に由来。
アイヌ語のチ・オ・プシ・イ(我ら・自ら・破る・ものの意)により(北海道の地名)、
増水時に長節湖が海とつながったことにちなむという(蝦夷地名考並里程 記)。
一説にはチェプウシ(魚所の意)に由来し、長節湖に「ボラ魚」が多かったことにちなむという
(北海道蝦夷語地名解)。
・『道東地方のアイヌ語地名』(回答資料2)
p360「チエプウシ沼」
上原地名考は「チヨブシ おのずから破れると訳す。此沼折節自然と破れる故、字になすという」とある。
松浦能都之也布誌は「チヨブシ。ここから山の方には沼があるが、
むかしその沼の中に一本の石が飛んで来て、立石になったという伝説がある。
それにちなんだ名である」と記してあるが、松浦氏の伝説と地名チヨプシとのつながりがはっきりしていない。
山田秀三氏は上原説をうけて「つまちチ・オ・プシ・イ(我ら・自ら・破る・もの→破れるもの)と解した。
永田地名解は「チェプ・ウシ。魚処。二沼あり沼中にボラ魚多し今人チョープと言うのは非なり」と
別な解をしている。
・『北海道の地名』(回答資料3)
p244「長節(ちょうぼし)」
上原熊次郎地名考は「チヲブシ。おのづから破れると訳す。
此沼折節自然と破れる故字になすといふ」と書いた。
つまりオ・チ・プシ・イ(我ら・自ら・破る・もの→破れるもの)と解した。
水量が増すと沼が自然に破れる湖沼はよくある。
永田地名解は「チェプ・ウシ。魚処。二沼あり。沼中にボラ魚多し。
今人チョープシと云ふは非なり」と書いた。その永田氏も十勝の当縁(現中川郡豊頃町)
長節沼でチオプシ説を書いている。
・『北海道地名分類字典』(回答資料4)
p130「ちょう 長 長節」
ちょうぼし、根室市の字名
①チェプchep・ウシus=魚・多い(永田・魚処)
②チti・オo・プシpus・イi=自ら・川尻を・破る・もの(上原・増水し海と繋がった)
・『北海道地名誌』(回答資料5)
p707「長節(ちょうぼし)」
長節湖の傍の地区。
アイヌ語「チェプウシ」(魚の多い)から出たもので長節湖についた名と思う。
・『根室・千島両国ノ地名ニ就イテ』(回答資料6)
p3「根室千島両国の地名に就て」
地名:長節
アイヌ語:チュプウシ
義解:二沼アリ沼中ニ ボラ 多シ
・『根室市史 上巻』(回答資料7)
p6~7「長節」
永田氏地名解では「チェプウシ。魚処。二沼アリ沼中ニ『ボラ魚』多シ、
今人『チョーブシ』ト云フハ非ナリ」とある。チェプウシなら魚の沢山いることであるが、
この沼には魚をとるらしい舟が一艘もなく、また水鳥も集まっていない。
チュチュプウシで木賊の多いところかとも思ったが、木賊もあまりいない。
・『日本歴史地名大系 1 北海道の地名』(回答資料8)
p1537「(根室支庁根室市)チョブシ」
漢字表記地名「長節」のもとになったアイヌ語に由来する地名、岬名。
仮名表記は「チョブシ」(「東行漫筆」「観国録」「協和私役」、玉虫「入北記」、戌午日誌」能都之也布誌)、
「チョフシ」(島「入北記」、「場所境調書」「廻浦日記」)のほか、「チヲブシ」(地名考並里程記)、
「チヨウフシ」(「東蝦夷地場所大概書」、「蝦夷日誌」一編、「行程記」)、
「チヤウフシ」(東蝦夷地場所大概書)がある。
・『北海道地名漢字解』(回答資料9)
p61「【ちょう 長】長節」
ちょうぼし、根室市
ちょうぶし、十勝・豊頃町の沼名
・『難読・異読地名辞典』(回答資料10)
p230「長節」
①ちょうぼし 北海道根室市―。
②ちょうぶし 北海道十勝支庁中川郡豊頃町―。
- 回答プロセス
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以下の資料も参考とした。
1『北海道蝦夷語地名解』
(永田方正∥著 草風館 1984.9 請求記号:291.034/NA/イ 資料ID:1111365936
p398「Chep ushi チェプウシ」)
2『日本地名大事典 第7巻 北海道』
(渡辺光∥等編 朝倉書店 1968 請求記号:291.034/NI 資料ID:1101857280
p163-164「ちょうぶしぬま 長節沼」(十勝支庁豊頃町))
3『大日本地名辞書 第8巻 北海道・樺太・琉球・台湾 吉田東伍∥著』
(富山房 1970 請求記号:291.03/Y 資料ID:1101857272
4『北海道地名解 礒部精一∥著』
(富貴堂 1918 請求記号:291.034/I 資料ID:1101800116)
- 事前調査事項
- NDC
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- 北海道地方 (211 7版)
- 参考資料
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- 1 角川日本地名大辞典 1-[1] 北海道 「角川日本地名大辞典」編纂委員会∥編 角川書店 1987.10 291.03/HO/1-1 p883
- 2 道東地方のアイヌ語地名 鎌田 正信∥著 北海道機関紙印刷所(印刷) 1995 ア.29/KA p360
- 3 北海道の地名 山田 秀三∥著 北海道新聞社 1984.10 291.034/Y p244
- 4 北海道地名分類字典 本多 貢∥著 北海道新聞社 1999.10 291.034/HO p130
- 5 北海道地名誌 NHK北海道本部∥編 北海教育評論社 1975.8 291.034/NI p707
- 6 根室・千島両国ノ地名ニ就イテ 長尾 又六∥著 長尾又六 1928 291.034/NA p3
- 7 根室市史 上巻 渡辺 茂∥編著 根室市 1968 212.2/NE/1-イ p6/7
- 8 日本歴史地名大系 1 北海道の地名 平凡社 2003.10 291.03/HO/イ p1537
- 9 北海道地名漢字解 本多 貢∥著 北海道新聞社 1995.1 291.034/HO/イ p61
- 10 難読・異読地名辞典 楠原/佑介?編 東京堂出版 1999.3 291.03/NA 〔一般資料〕p230
- 1 北海道蝦夷語地名解 永田方正∥著 草風館 1984.9 291.034/NA/イ p398「Chep ushi チェプウシ」
- 2 日本地名大事典 第7巻 北海道 渡辺光∥等編 朝倉書店 1968 291.034/NI p163-164「ちょうぶしぬま 長節沼」(十勝支庁豊頃町)
- 3 大日本地名辞書 第8巻 北海道・樺太・琉球・台湾 吉田東伍∥著 富山房 1970 291.03/Y
- 4 北海道地名解 礒部精一∥著 富貴堂 1918 291.034/I
- キーワード
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- 根室
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事項調査
- 内容種別
- 地名
- 質問者区分
- 図書館
- 登録番号
- 1000228301