レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013/08/09
- 登録日時
- 2013/11/15 00:30
- 更新日時
- 2013/12/20 11:05
- 管理番号
- 0000000043
- 質問
-
未解決
ある資料に、「明治24年、有島生馬の父の武が、大蔵省国債局長として麹町永田町官舎に住んだ」、とあった。
その詳しい住所は分かるか。また、当時の地図でこの官舎が確認できるものは所蔵しているか。
- 回答
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■ 有島武(1842-1916)について:
明治期の官僚・実業家。鹿児島出身。大蔵省で横浜税関長・国債局長などを歴任した後財界に転じ、第十五銀行取締役・日本郵船会社監査役などを務めた。子息に作家の有島武郎(1878-1923)・有島生馬(1882-1974)・里見弴(1888-1983)がいる。1896年(明治29) 東京市麹町区下六番町(現在の千代田区六番町)に構えた広壮な邸宅は、長男・武郎が相続し、「白樺派」をはじめとする文人たちの活動拠点の一つとなった。
■ 住所について:
以下の資料から、1891年(明治24)当時有島武が永田町官舎に住んでおり、その住所が「東京市麹町区永田町2丁目12番地」と確認できる。
(* 概ね現在の「東京都千代田区永田町2-1, 8」、国会議事堂と日枝神社の間、衆議院第二議員会館のある辺りに該当。)
1) 有島武郎研究会編『有島武郎事典』(勉誠出版、2010年):
244頁 「東京」の項に、「有島家は東京麹町(現、千代田区)永田町2丁目12番地の官舎(1891(明治24)・8) […] へと居を移す」とあり。
2) 『日本紳士録』第2版(交詢社、1892年):
520頁 に「有島武」掲載。「大蔵省国債局長 麹町区永田町2丁目12」とあり。
※ 当館所蔵なし。国立国会図書館 HP「国立国会図書館デジタル化資料」で館外から閲覧可。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/780091 (* 520頁はコマ番号267に相当)
■ 地図について:
当館所蔵およびインターネット上で利用可能な明治期東京地図の復刻や、明治30年頃の地誌の復刻で確認したが、「東京市麹町区永田町2丁目12」に当該官舎の所在が明記されているものは見出せなかった。
確認した地図・地誌の復刻は以下の通り。
3) 『江戸から東京へ 明治の東京』(『古地図ライブラリー』4)(人文社、1996年)
4) 『明治時代東京区分図』(東京堂出版、1976年)
※ 明治期に発行された複数の東京地図の複製復刻。以下の 5), 6) の地図も含む。
5) 『決定版 図説・明治の地図で見る鹿鳴館時代の東京』(学習研究社、2007年)
※ 参謀本部陸軍測量局『五千分一東京図』測量原図(明治9 ~ 明治17年測量)の復刻。
6) 『古地図・現代図で歩く 明治大正東京散歩』(『古地図ライブラリー』別冊)(人文社、2003年)
※ 東京郵便局『明治四十年 東京市十五区番地界入地図』を編集・復刻し、現代図と対照できるようにしたもの。
7) 『地籍台帳・地籍地図 [東京] 第5巻 地図編 1』(柏書房、1989年)
※ 東京市区調査会『東京市及接続郡部 地籍地図』(大正元年発行)の復刻
※ 原図は国立国会図書館 HP「国立国会図書館デジタル化資料」で館外から閲覧可。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/966079 (* 永田町二丁目はコマ番号35に相当)
8) “Goo地図「古地図」“ (インターネット) http://map.goo.ne.jp/history/index.html
※ 検索サイト “Goo” が運営する地図サイト。「古地図」で東京の明治と現在の地図を対照できる。
9) 『東京名所図会 麹町区之部』(睦書房、1969年)
※ 『新撰東京名所図会』(『風俗画報』臨時増刊)(明治30~33年発行)の復刻。
119 頁, 216頁に「永田町」の項あり。「総理大臣官舎」「大蔵大臣官舎」など紹介されているが、当該官舎について記載なし。
- 回答プロセス
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■ 有島武・生馬について基本情報を得るため、人名事典類で確認
・臼井勝美ほか編『日本近現代人名辞典』(吉川弘文館、2001年)
39頁 「ありしまいくま 有島生馬」あり。生没年 1882年~1974年 大正・昭和期の画家・小説家 父は有島武、兄に有島武郎、弟に里見弴、とあり。
・秦郁彦編『日本近現代人物履歴事典』第2版(東京大学出版会、2013年)
31頁 「有島武 (ありしまたけし)」あり。生没年 1842年~1916年 大蔵官僚から財界へ転じた経歴が分かる。明治24年8月~明治26年5月まで大蔵省関税局長。ほか、長男・有島武郎、四男・里見弴とあり。
■ 居住地についての手がかりを得るため、有島武および「有島三兄弟」の伝記・作家研究類を検索
・有島武・有島生馬:所蔵なし
・有島武郎研究会編『有島武郎事典』(勉誠出版、2010年):
244頁 「東京」の項に、「有島家は東京麹町(現、千代田区)永田町2丁目12番地の官舎(1891(明治24)・8) […] へと居を移す」とあり。
・小谷野敦『里見弴伝』(中央公論新社、2008年):
21頁に、「[明治]24年(1891)7月、父は大蔵省国際局長となり、一家は麹町区永田町の官邸に移った。」とのみ。
・新井巌『番町麹町「幻の文人町」を歩く』(言視舎、2012年)
22-26頁「旧有島邸は、どこにある?」には、1896年(明治29) 東京市麹町区下六番町(現在の千代田区六番町)に構えた広壮な邸宅について記載あるも、永田町官舎について記載なし。
■ 裏付けを得るため、「国立国会図書館デジタル化資料」で、当時の『職員録』・紳士録類を確認
・『大蔵省職員録』:明治22年まで
・『職員録』:明治24年は、大蔵省職員掲載の「甲」欠本。明治23年では有島武の住所は「在横浜」、明治25年では「麹、下二番、41」となっている。
・『日本紳士録』第2版(交詢社、1892年):
520頁 に「有島武」掲載。「大蔵省国債局長 麹町区永田町2丁目12」とあり。
※ 当館所蔵なし。国立国会図書館 HP「国立国会図書館デジタル化資料」で館外から閲覧可。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/780091 (* 520頁はコマ番号267に相当)
■ 確認できた住所「東京市麹町区永田町2丁目12」を、当館所蔵およびインターネット上で利用可能な明治期東京地図の復刻や、明治30年頃の地誌の復刻で確認したが、当該官舎の所在が明記されているものは見出せなかった。 確認した地図・地誌の復刻は「回答」の項を参照。
- 事前調査事項
- NDC
- 参考資料
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- 1 有島武郎事典 有島武郎研究会編 勉誠出版 2010.12 910.26ア 978-4-585-06065-9
- 2 明治の東京 人文社編集部解説・編集 人文社 2006.5 TC4/018/4 4-7959-1903-8
- 3 明治時代東京区分図 槌田/満文編 東京堂出版 1976 TC4/093
- 4 図説明治の地図で見る鹿鳴館時代の東京 原田/勝正監修 学研 2007.10 TC4/286 978-4-05-604706-6
- 5 古地図・現代図で歩く明治大正東京散歩 人文社 2003.10 TC4/019 4-7959-1293-9
- 6 地籍台帳・地籍地図<東京> 第5巻 地図資料編纂会編 柏書房 1989.3 TC4/030 4-7601-0474-7
- 7 東京名所図会 麹町区之部 睦書房 1969 TC2/002
- 1 番町麹町「幻の文人町」を歩く 新井/巌著 言視舎 2012.4 TC2/312 978-4-905369-30-1
- 2 里見弴伝 小谷野/敦著 中央公論新社 2008.12 910.26サ 978-4-12-003998-0
- 3 日本近現代人物履歴事典 秦/郁彦編 東京大学出版会 2013.4 R281 978-4-13-030153-4
- 4 日本近現代人名辞典 臼井/勝美編 高村/直助編 吉川弘文館 2001.7 R281 4-642-01337-7
- キーワード
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- 東京都
- 千代田区
- 麹町区
- 永田町
- 官舎
- 有島武(1842-1916)
- 官僚
- 大蔵省
- 実業家
- 財界人
- 銀行家
- 有島武郎(1878-1923)
- 有島生馬(1882-1974)
- 里見弴(1888-1983)
- 文学者
- 文化人
- 文藝
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査 所蔵調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000140564