レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2011年10月25日
- 登録日時
- 2012/03/11 14:33
- 更新日時
- 2012/05/31 18:41
- 管理番号
- 埼浦-2011-101
- 質問
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解決
「世界恐慌(1929年に始まる)で、チモールをはじめ、すべての医薬品の輸入が止まり、以来、埼玉県下でヤマジソを栽培してチモールを製造することになった。」との雑誌記事をみたが、埼玉県内の具体的な栽培地が知りたい。※チモールはシソ科やセリ科の植物油の主成分で防腐剤、殺菌剤、駆虫剤、合成メントールの原料として用いられる。(『大百科事典』平凡社 1985の要約)
- 回答
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《GeNii》を〈山紫蘇 & 栽培〉で検索し、下記の論文より、南埼玉郡(日勝村、武里村、内牧村、豊春村、稲間村)及び北葛飾郡(豊野村、幸松村)で栽培していたことがわかった。
内務技師 刈米 達夫、渥美 嶮次郎著「山紫蘇栽培竝にチモール製造試驗成績(大正9年7月26日官報所載)」(「藥學雜誌 462」 p747-758 益社団法人日本薬学会 1920年8月)オープンアクセス論文で、ウェブで全文を読むことができる。
(http://ci.nii.ac.jp/naid/110006667324 国立情報学研究所 2011/10/25最終確認)
p749「チモール騰貴の影響により、大正6年以来埼玉県下に於いて、山紫蘇の栽培に着手せるものあり。南埼玉郡(日勝村、武里村、内牧村、豊春村、稲間村)及び北葛飾郡(豊野村、幸松村)を中心として、稍多量の産額あるに至れり。」とあり。
埼玉県下紫蘇産額の大正6年、大正7年、大正8年の収穫量、価格、単価の記載あり。
また、「現在我国に於て山紫蘇を栽培しつつあるは前期埼玉県下のみなり。」との記述あり。
その他、内務省薬用植物試験地での栽培方法報告が掲載されている。
刈米達夫著の山紫蘇とチモールに関する論文が他に2編見つかったが、栽培地の記述はなかった。
上記の内容から、所蔵資料を調査し、下記の資料を紹介した。
『埼玉県薬用植物大要』
p3 「明治以降、内外の需要急だったハッカ等の栽培及び製油が興隆しはじめ、本県では先ず粕壁町の老薬鋪金子氏等が自家の畑にこれを試みはじめた」との記述あり。
また、大正7年内務省薬草調査会が粕壁町の金子七右衛門所有の薬用園を粕壁委託試験地とし、約800種を栽培、大正11年内務省東京衛生試験所に薬用植物栽培試験所、後に国立衛生試験所粕壁薬用植物栽培試験部として存続した記述あり。上記刈米氏の栽培地「内務省薬用植物試験地」はこれを指すと思われる。
《独立行政法人医薬基盤研究所》のウェブサイトによると、試験場は1979年に閉場。現在の独立行政法人医薬基盤研究所に移管された。
(http://wwwts9.nibio.go.jp/rekishi01.html 医薬基盤研究所 2011/10/21最終確認)
『春日部市史 5 民俗編』(春日部市教育委員会社会教育課文化財係編 1993)
第二章第四節 「畑と畑作 1 明治初期と大正初期の作物」
p160 大正二年の武里村の畑作作物品種の紹介に「③蔬菜類 ウ茎葉類 紫蘇 あおそ・しろそ・縮緬」とあり。(「武里村郷土誌」からの引用)
《Google》を〈山紫蘇 & チモール〉で検索し、下記の論文を紹介した。
「資料1 細葉山紫蘇抽出液の開発の経緯」(典拠不明)
(http://www.env.go.jp/council/10dojo/y104-28/mat03_2-2.pdf 2011/10/12最終確認)
- 回答プロセス
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その他調査済み資料。※該当の記述がなかったもの
『業務功程 大正6~10年版』(埼玉県立農事試験場)
『業務功程 大正11~14年版』(埼玉県立農事試験場)
『大正8年度業務功程』(埼玉県立農事試験場)
『埼玉県植物誌』(埼玉県教育委員会 1962)
p79「分類と分布」の「シソ科」のなかに「ヤマジソ japonicum BENTH」あり。
p18「薬植用物」の「シソ科」のなかに「ヤマジソ」あり。
「全草中に精油1~2%(チモール、パラシモール等)チモールは十二指腸虫駆除用。」とあり。
『埼玉県植物誌 1998年版』(伊藤洋編 埼玉県教育委員会 1998)
p199「ヤマジソ」あり。分布についての記述なし。チモールについての記述なし。
『新編埼玉県史 通史編 6 近代』(埼玉県 1989)
『新編埼玉県史 別編 3 自然』(埼玉県 1986)
『あなたの健康に役立つ薬草ハンドブック』(埼玉県薬剤師会編著 埼玉新聞社 1986)
『牧野新日本植物図鑑』(牧野富太郎著 小野幹雄〔ほか〕編集 北隆館 1989)
p654「ヤマジソ Mosla japonica(Benth.) Maxim.」
「北海道、本州、四国、九州、朝鮮半島南部に分布し、山ろくの野原や丘などにはえる一年草。(略)駆虫剤のチモールをとる植物でヤマジソといわれているものは本種でなく、同属の他の植物を誤認したものである。」とあり。
『原色牧野和漢薬草大図鑑』(岡田稔〔ほか〕編集 北隆館 1988)
p453「ヤマジソヤマジソ Mosla japonica(Benth.) Maxim.」
成分にチモールあり。
「ホソバヤマジソ」にチモールの記述あり。
- 事前調査事項
- NDC
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- 薬学 (499 9版)
- 工芸作物 (617 9版)
- 参考資料
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- 「藥學雜誌 462」(公益社団法人日本薬学会 1920.8)
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『埼玉県薬用植物大要』(埼玉県衛生部 1957)
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『春日部市史 5 民俗編』(春日部市教育委員会社会教育課文化財係編 1993)
- キーワード
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- 山紫蘇(ヤマジソ)
- チモール
- 薬用植物
- 埼玉県‐工芸作物
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000103442