レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年9月17日
- 登録日時
- 2021/09/17 15:59
- 更新日時
- 2021/10/27 19:19
- 管理番号
- 県立長野-21-128
- 質問
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未解決
飯塚道重「小諸御城下と「戌の満水」」の論文内で引用されている『洪水覚え書』の全文が見たい。
- 回答
-
『洪水覚え書』の所在は現在不明であり、全文が掲載されている資料も確認できなかった。
・斎藤洋一「古文書解読講座(第159回) 」『千曲』 第168号 2019 p.50-54に解説がある。
(前略)飯塚さんは、『小諸市誌』発行後に見つかった史料として「洪水覚書」をあげ、「藩士の河合
某が書き残したもので、全容をよくまとめてあるので、よく利用している」と語っておられます(信濃
毎日新聞編『「戌の満水」を歩く』)。そしてこの本には、その冒頭も掲載されています。 (中略)。
そこでこの「洪水覚書」を見たいと思って、何人かの方に所在をお尋ねしたところ、東御市に
お住まいの佐藤悦夫さんが、小諸藩の家老を務めた牧野家に伝わる「満水覚書」のことではないかと
教えてくださいました。
早速「満水覚書」を見せていただいたところ、記されていることはよく似ていますが、表題が
異なることと、「洪水覚書」は「藩士の河合某が書き残したもの」というところが大きく異なります。
「満水覚書」には「河合某」の記述はないからです。したがって現時点で二つの史料が同じものという
ことはできません。しかし、どちらも小諸の被災状況を伝える貴重な史料といえます。「洪水覚書」に
ついてご存じの方がいらっしゃいましたら、ぜひご教示をお願いします。
また、全文ではないが以下の資料で一部『洪水覚え書』に関する記載が見られたので合わせて紹介した。
・『寛保2年の千曲川大洪水「戌の満水」を歩く』信濃毎日新聞社出版部 信濃毎日新聞社 2021 p.43-45
一部略で『洪水覚え書』の訳文を掲載している。
・飯塚道重「小諸城下と戌の満水」『千曲塾 第1集 報告書』
国土交通省北陸地方整備局千曲川工事事務所調査課企画・編集 2002 p.68-77
『千曲』第107号で紹介されている箇所と異なる部分を含む引用を確認した。
<その他の調査資料>
・『小諸市誌 歴史篇3 近世史』小諸市誌編纂委員会編・刊 1991【N222/43/2-3】p.987-1010
・『信濃史料 索引』信濃史料刊行会編・刊 1972【N208/28A/31】
・『高原の城下町小諸藩歴史散歩』 飯塚道重 櫟 1998【215.2/イミ】
・『江戸時代の小諸藩』 塩川友衛編・刊 1997【N222/121】
・丸山厚至「古文書・言い伝え・痕跡から「戌の満水」を考察する(一)」『千曲』第165号 2018 p.6-21
・丸山厚至「古文書・言い伝え・痕跡から「戌の満水」を考察する(二)」『千曲』第166号 2018 p.9-22
・青木隆幸「「戌の満水」(「寛保の洪水」)試論 」『長野県立歴史館研究紀要』第20号 2014 p.2-13
- 回答プロセス
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1 質問者がみた論文を確認する。
p.35の参考資料で以下の記載を確認する。
「小諸市誌近世編」(小諸市教育委員会)
「小諸洪水流出改帳」(小山隆司家蔵)
「洪水覚え書」(小諸藩士・河合某手記)
2 長野県に関する史料等のデジタルアーカイブサイトを調べる。
「信州デジタルコモンズ」や「信州地域史料アーカイブ」でキーワード「洪水覚え書」「洪水」
「河合」「戌の満水」で検索をするが、『洪水覚え書』は確認できない(最終確認2021/10/22)。
3 市町村誌を確認する。
長野県市町村誌目次情報データベースで2と同様に検索し該当資料を確認したり、
1の参考資料で挙げられている『小諸市誌 歴史篇3 近世史』風災害の項目を見たりするが、
『洪水覚え書』の記載は見つからない(最終確認2021/10/22)。
4 『信濃史料』を調べる。
『信濃史料 索引』でキーワードとなりそうなものを引き該当巻を見るが、
『洪水覚え書』は確認できない。
5 キーワード「飯塚道重」や「小諸藩」で当館蔵書を検索する。
ヒットした資料を調べるが、『洪水覚え書』に関する記載はなし。
6 キーワード「戌の満水」で当館蔵書を検索する。
『寛保2年の千曲川大洪水「戌の満水」を歩く』p.43に、『洪水覚え書』は『小諸市誌 歴史編三』が
発行された後に発見されたと、小諸市誌編纂委員の飯塚道重の言で記述がある。また『洪水覚え書』の
訳文が一部略で掲載されている。
※ここでは『洪水覚書』と記されている。
7 論文が掲載された雑誌である『千曲』を発行している東信史学会に問い合わせする。
この件に関して詳しいことを知っている斎藤洋一氏(小諸市古文書調査室室長)を紹介される。
8 斎藤洋一氏に問い合わせをする。
『千曲』第168号の記事を紹介して「よく問い合わせを受けるが『洪水覚書』の所在は不明であり、
類似した『満水覚書』の所在のみ把握している」という回答を得る。
- 事前調査事項
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飯塚道重「小諸御城下と「戌の満水」」『千曲』第107号 2000 p.31-35
…水、鉄砲の如く早く辰の刻より四つ時(午前八時~一〇時)までの内なり。水の引く事はたちまち
なり。水高さ二、三丈にも及び候へども見届け申す者これなく、中沢川、松井川水出候事、六供、
成就寺、尊立寺、宅応寺、実大寺、東は光岳寺門脇まで押し破り、丸屋一軒も残さず本町を押し流し、
城内に入り候。(中略)泥水にて十間も流れて目を明け得る者なく、その上大石木山の如く流れ掛り、
子を抱き親を助けながらたちまち死する者もあり。或いは大木に乗りて流れ行くもありその様々の
死乱何程の人損じ候や。格別なるは家共流れくる内に、木に当り岩に当り候や、川中にて微塵に
押し倒れ、二、三十人一度に流死の有様、目を驚かせ候事大変筆紙に尽くし難し…(『洪水覚え書』)
- NDC
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- 中部地方 (215 10版)
- 社会福祉 (369 10版)
- 河海工学.河川工学 (517 10版)
- 参考資料
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信濃毎日新聞社出版部 編 , 信濃毎日新聞社. 寛保2年の千曲川大洪水「戌の満水」を歩く 増補改訂版. 信濃毎日新聞社, 2021.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I031508963-00 , ISBN 9784784073818 (【517.4/シナ】) -
国土交通省北陸地方整備局千曲川工事事務所調査課/企画・編集 , 国土交通省北陸地方整備局千曲川工事事務所調査課. 千曲塾 : 報告書 第1集. 国土交通省千曲川工事事務所, 2002-03.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I059350949-00 (【N517/179/1】)
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信濃毎日新聞社出版部 編 , 信濃毎日新聞社. 寛保2年の千曲川大洪水「戌の満水」を歩く 増補改訂版. 信濃毎日新聞社, 2021.
- キーワード
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- 戌の満水
- 寛保の洪水
- 洪水覚書/洪水覚え書
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 所蔵調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000304822