暦の百科事典(新人物往来社)より
睦月:正月は貴賤が往来して拝賀し、親族相集まって娯楽遊宴する睦び月で、この睦び月がむつきの語源であるという説が一般的である(『節用集』『二中暦』)。大かたの辞典には、この説がのっている。(以下省略)
如月:『竹取物語』に「きさらぎ十日頃」とあるが、きさらぎは古代においては、きわめて用例が少ない。
きさらぎの意味するところは、ほとんどわかっていない。(以下省略)
弥生:『枕草子』に「やよひ三日はうらうらとのどかに照りたる」と用いられているが、やよいについては、あまり異説はない。草木のいよいよ生い茂る月、「いやおひ」繁る月の意味とされている。(以下省略)
卯月:卯の花の咲く月というのが定説となっている(『奥義抄』『和訓栞』『類聚名物考』など)。(以下省略)
皐月:(前略)さつきとは「さのつき」の略である。五月に関する言葉には、この“さ”が多い。
たとえば、サナエ(早苗)、サツトメ(早乙女)、サミダレ(五月雨)、サツキバレ(五月晴)などである。つまり“さ”は五月を意味する言語であったと解釈される。
水無月:陰暦では六月は酷暑の最中である。
字義どおり梅雨も終わって水も涸れ尽きるという説(新井白石『東雅』)がある。反対に、田植えもすみ田ごとに水を張る「水張り月」であるという説もある(『和訓栞』)。(以下省略)
文月:ふづき。7月7日の七夕にちなんだ呼び名だという。万葉集(二〇八九)にも、「思い来し 恋ひつくすらむ 七月(フミツキ)の宵は 我は悲しも」というのがあり、この七月をフミツキと読ませている。
葉月:はづきの由来には諸説ある。まず、木の葉が黄葉して落ちる月、すなわち「葉落月」がなまったものであるという説がある(『和訓栞』『奥義抄』)。「葉月とは、この月や粛殺の気生じ、百弁葉を落す。ゆえに葉落月といふ。今略して葉月と称す」と説明してある(似雲『年浪草』)。(以下省略)
長月:古来から、ながつきは「夜長月」の略であるとの説が有力である。つまり、秋の夜長の頃という意味である(『下学集』『二中暦』)。(以下省略)
神無月:(前略)「神嘗月」「神祭月」または「神の月」がかみなづきの語源であるとする説もある。(以下省略)
霜月:霜月という名の由来については、字義どおり霜が降る月であるからとする説が有力である(『下学集』『東雅』)。(以下省略)
師走:しはすを師走と書く由来については諸説がある。一二月は一年の終わりで、皆忙しく、師走も趨走(ちょこちょこ走るの意)するので「師趨」となり、師走となったとする説が一般的である(『下学集』)。(以下省略)