レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年09月25日
- 登録日時
- 2021/10/13 10:54
- 更新日時
- 2022/02/03 10:22
- 管理番号
- 相‐210014
- 質問
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解決
なぜ「水"も"滴る」なのかが気になり、語源について調べています。
インターネットによると、この表現が生まれたきっかけは諸説あるようなのですが、どのサイトも参考文献について詳しい記載がありません。
・事前調査事項にある内容が書かれている文献
・その他の説
について知りたいです。
- 回答
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・『研究社日本語口語表現辞典 第2版』山根智恵監修 研究社 2020
p.1046に「みずもしたたるいいおとこ【水も滴るいい男】ハンサムで魅力的な男性。」が立項されており、「人の顔や肌がみずみずしく美しい様子を表す「水の垂るような」に「由来している可能性があり、歌舞伎「助六」の水入りの場面や落語の「崇徳院」など、江戸時代は男女いずれにも使われていたと思われる」とあります。
・『水の言葉辞典』松井健一著 丸善 2009
p.305「水も滴る(みずもしたたる)」に「とくに、女性や役者などについて使う。江戸時代は「蜜も滴る」といわれていた」とあります。
・『日本語慣用句辞典』米川明彦、大谷伊都子編 東京堂出版 2005
p.427「水も滴る」に「用法」として「「水もしたたるダレナニ」「水もしたたるよう」。「水のしたたる」とも言う」とあり初出の時代を「江戸」としています。
・『故事俗信ことわざ大辞典』佐竹秀雄〔ほか〕編 小学館 2012
p.1288に「水の滴(したた)るよう」が立項されており、「水が滴るかのように人の顔や肌などが瑞々しく美しい。特に女性や役者などのきわだって美しいさまの形容。水の垂るよう」とあります。
・『日本国語大辞典 第12巻(ほうほ-もんけ)』日本国語大辞典第二版編集委員会、小学館国語辞典編集部編 小学館 2001
p.664~665に「水の垂(た)るよう」が立項されており「②人の顔や肌(はだ)などのみずみずしく美しいさまにいう。水のしたたるよう」とあり、用例として、「狂歌乗合船(1730)「水のたる男盛もあり来しをかはる渕瀬や老の洟(みづはな)」」などが記載されています。
・『歌舞伎ハンドブック』藤田洋編 三省堂 2006
p.167~168に「助六由縁江戸桜 すけろくゆかりのえどざくら 通称/助六」の解説があり、「天保三年(一八三二)三月、江戸市村座での上演時に現行演出が完成した(中略)古く『万屋助六』の心中浄瑠璃があり(中略)それを江戸に移して荒事狂言でなく世話風の色男につくりかえた」とあります。また「見どころ」に「『助六』は、江戸時代最大の歓楽郷吉原の華やかな場面を舞台」にしているとあります。
・『落語演目・用語事典』稲田和浩編 日外アソシエーツ 2021
p.81に「すとくいん【崇徳院】」が立項されており、「もともと上方の落語で、初代桂文治(作)と言われている」とあり名文句の一つとして「水のたれる女はいませんか」が紹介されています。
・『落語家事典 古今東西』諸芸懇話会、大阪芸能懇話会編 1989
p.249~250に「初代桂文治 かつらぶんじ」が立項されており「安永3年(逆算)~文化13年11月29日 43歳」とあります。
・『黙阿弥全集 第5巻』河竹黙阿弥著 春陽堂 1933
p.547~684「富士三升扇曽我」序幕p.555に「見るから水のたれさうな、ぼつちやり者が相手では」とあります。
表題裏の解説に、歌舞伎「富士三升扇曽我」(ふじとみますすえひろそが)について、「慶応二年二月、五十一歳の折守田座に於いて書卸されたもの」とあります。
(『日本国語大辞典 第18巻』小学館1975 「みずの垂(た)るよう」の用例より)
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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説1:歌舞伎役者に対して使われていた。「水(さえ)も滴る(ように見えるほどの)」という比喩表現
説2:遊女の間で使われていた。
- NDC
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- 語源.意味[語義] (812)
- 参考資料
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山根智恵 監修 , 佐藤友子, 奥村圭子 編集委員 , 山根, 智恵, 1959- , 佐藤, 友子, pub. 2013.11 , 奥村, 圭子. 研究社日本語口語表現辞典 = KENKYUSHA'S DICTIONARY OF JAPANESE COLLOQUIAL EXPRESSIONS 第2版. 研究社, 2020.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I030224570-00 , ISBN 9784767450223 -
松井健一著 , 松井, 健一. 水の言葉辞典. 丸善, 2009.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I003391223-00 , ISBN 9784621081433 -
米川明彦, 大谷伊都子編 , 米川, 明彦 , 大谷, 伊都子. 日本語慣用句辞典. 東京堂出版, 2005.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I011319083-00 , ISBN 9784490106770 -
佐竹秀雄, 武田勝昭, 伊藤高雄 編 , 北村孝一 監修 , 佐竹, 秀雄, 1947- , 武田, 勝昭, 1944- , 伊藤, 高雄, 1958- , 北村, 孝一, 1946-. 故事俗信ことわざ大辞典 第2版. 小学館, 2012.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I023386278-00 , ISBN 9784095011028 -
日本国語大辞典第二版編集委員会 編 , 日本国語大辞典第二版編集委員会. 日本国語大辞典 第12巻 第2版 ほうほ-もんけ. 小学館, 2001-12.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I107360438-00 -
藤田洋編 , 藤田, 洋. 歌舞伎ハンドブック 第3版. 三省堂, 2006.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I006263879-00 , ISBN 9784385410531 -
稲田和浩編 , 稲田, 和浩. 落語演目・用語事典. 日外アソシエーツ, 2021.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I012424034-00 , ISBN 9784816928611 -
諸芸懇話会, 大阪芸能懇話会編 , 諸芸懇話会 , 大阪芸能懇話会. 古今東西落語家事典. 平凡社, 1989.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I011184174-00 , ISBN 458212612X -
河竹黙阿弥 著 , 河竹糸女 補 , 河竹繁俊 編 , 河竹, 黙阿弥, 1816-1893 , 河竹, 糸, 1850-1924 , 河竹, 繁俊, 1889-1967. 黙阿弥全集 第5巻. 春陽堂, 1924.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001774455-00
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山根智恵 監修 , 佐藤友子, 奥村圭子 編集委員 , 山根, 智恵, 1959- , 佐藤, 友子, pub. 2013.11 , 奥村, 圭子. 研究社日本語口語表現辞典 = KENKYUSHA'S DICTIONARY OF JAPANESE COLLOQUIAL EXPRESSIONS 第2版. 研究社, 2020.
- キーワード
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- 諺--日本
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000306005