レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015年07月10日
- 登録日時
- 2015/07/10 15:09
- 更新日時
- 2015/07/19 14:46
- 管理番号
- 150710001
- 質問
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雁皮(がんぴ)の名の由来・語源
- 回答
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諸説あるが「カニヒ」又は「カミヒ」の転嫁とする説が有力。
①「カニヒ」の転訛
・「斐」は「斐麻(ひお)」の斐で古くは「かにひ」とも呼ばれたもので、それが後世に「雁皮(がんぴ)」に変ったものとされる。
正倉院文書にみられる「斐紙」というのはガンピ紙の事を意味する。単にガンピ繊維のみで抄造した紙に限るのではなく他の繊維に混合して抄造したものも総称すると考えられる。【資料1】
・カニヒ→ カンヒ → ガンピ と変化したか。慶長3年修善寺村紙谷の農民文左衛門宛徳川家康からの壺形黒印状に「かんひ」という紙原料の名が出てくる。【資料3】
・讃岐(香川)の方言に「ひよ」がある。これは「斐麻」の転嫁であろう。いずれも雁皮のこと。【資料5】
・かにひ
(雁皮またはフジモドキの各古名に比定する説あり。)一説に「かには」「かにひ」「かんば」「かば」は同源で、樹皮もしくは有用樹皮の称と。【資料7】
②「カミヒ(紙斐)」の転訛
雁皮(がんぴ)は日本の特産で、中国にはなく、製紙に用いた記録もない。カミヒ(紙斐)がやがてガンピ(雁皮)に転じたとも考えられる。【資料1】
③「カニヒ」は「カミヒ(紙斐)」の転訛
「ガンピ」は古名「カニヒ」の転訛 「カニヒ」は「紙斐(カミヒ)」の転訛
カミヒ → カニヒ → ガンピ 【資料6】
【参考1】
「雁皮紙」(がんぴし)
ガンピを原料として漉いた紙。古代に斐紙、中世に鳥子紙(とりのこし)とよばれた。
「雁皮」(がんぴ)
古代から日本独特の製紙原料とされている植物。ジンチョウゲ科。【資料4】
【参考2】
清少納言の「枕草子」の「草の花は」の段に「かにひの花、色は濃からねど、藤の花によく似て、春と秋に咲く、をかしげなり。」は紙料に用いる雁皮ではなく、ふぢもどき、さつまふじ、ちょうじざくら等の異名ありて観賞用として庭園に栽培される植物だが、この植物も製紙用の雁皮と同じ瑞香科に属する。(中略)平安朝時代に於いて偶然かもしれないが、今の雁皮属も沈丁花属も等しく「かにひ」と称へたらしい。【資料8】
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- パルプ.製紙工業 (585 9版)
- 参考資料
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【資料1】正倉院事務所/編集 , 正倉院事務所(宮内庁). 正倉院の紙 : 宮内庁蔵版. 日本経済新聞社, 1970.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I015773217-00 - 【資料2】町田, 誠之. 斐紙考. 紙の博物館, 1968. 百万塔 26 p. 1-7
- 【資料3】宍倉 佐敏. 雁皮の研究. 東京, 1996. 和紙文化研究 4号 p. 44-61
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【資料4】久米康生 著 , 久米, 康生, 1921-. 和紙文化辞典. わがみ堂, 1995.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002544905-00 - 【資料5】大澤忍. 雁皮付斐. 和紙研究會, 1939. 和紙研究 第3号 p. 63-72
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【資料6】大槻文彦 著 , 大槻‖文彦. 新編大言海. 冨山房, 1982.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I001249620-00 , ISBN 457200062X -
【資料7】木村陽二郎監修 , 木村, 陽二郎(1912-). 図説草木名彙辞典. 柏書房, 1991-11.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000074-I000065715-00 , ISBN 4760107312 - 【資料8】関彪. 雁皮はかにひの転化. 日本製紙聯合會, 1931.2. 紙業雑誌 25巻12号 p. 293-294
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【資料1】正倉院事務所/編集 , 正倉院事務所(宮内庁). 正倉院の紙 : 宮内庁蔵版. 日本経済新聞社, 1970.
- キーワード
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- 雁皮(ガンピ)
- 斐紙(ヒシ)
- カニヒ
- 紙斐(カミヒ)
- 斐麻(ヒオ)
- 語源
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- その他
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000177051