レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年07月15日
- 登録日時
- 2021/03/25 15:25
- 更新日時
- 2021/03/25 15:28
- 管理番号
- 千県西-2020-0018
- 質問
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解決
利根川中流と江戸川をむすぶ鮮魚街道(なまかいどう・なまみち)沿いには、鯖の像があると知人に聞いた。これについて調べたい。
- 回答
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調査の結果、鯖ではなく「鯖を持った弘法大師の像」が街道筋に奉られて「鯖大師」と呼ばれ、千葉県以外にもあることがわかった。以下の資料を提供した。
(1)鯖大師の像について、次の資料を紹介した。
【資料1】『世界大百科事典』(平凡社 2007)
「大師信仰」
「旅姿の大師をばかにしたので悪いことが起こったとする型の伝説も多い。その一つに鯖大師伝説がある。行商人に大師が鯖を1匹請うが,行商人は与えない。そこで,〈大坂や八坂坂中鯖一つ大師にくれで馬の腹病む〉の呪文をとなえて,立ち去る。すると馬が腹痛を起こしたので,以後鯖を片手に持つ大師像をまつったとする伝説である。」
「サバ」
「古い街道筋の要所である坂や峠に僧がサバを手にもつ像を祭って〈鯖大師〉と呼び,弘法大師が旅僧の姿でサバ1匹を請うたのに,商人または馬子が荷物のサバを与えなかったために罰せられたという伝説を伝えている場合がある。徳島県海部郡海陽町の旧海南町鯖瀬の八坂八浜の伝承は代表的であるが,これは坂や峠の神に食物の初穂を供える風習と,これを仏教で生飯(さば)と称したことが転訛(てんか)してこの伝説となったらしい。」
【資料2】『世界大博物図鑑2 魚類』(荒俣宏著 平凡社 1989)
p330 鯖大師
「古い街道筋の要所である坂や峠に、僧がサバを手にもつ像を祀って<鯖大師>とよぶものがある。(以下略)(≪魚の文化史≫)」
【資料3】『魚の文化史』(矢野憲一著 講談社 1983)
p168-174 10 サバ大師とサバの道
【資料4】「沼南散策(4) 持法院2 観音堂(柏市・藤ケ谷)」
(http://kamagaya-sanpo.blogspot.com/2017/06/blog-post_18.html)
インターネット情報。鯖大師像のカラー写真あり。
【資料5】『東葛印旛大師藤ケ谷結願記念誌』(准四国八十八箇所東葛印旛大師藤ケ谷大師組合 2007)
p93 持法院の仏像として鯖大師のカラー写真1点あり。
【資料6】「鯖大師について」(『我孫子市史研究センター会報』 我孫子市史研究センター 通巻1号~通巻108号[合冊] 2011.03-2020.02)通巻81号 2008.11 p2-3
(http://abikosisiken.main.jp/kaihou/kaihou_index.html)※バックナンバーから選択
円福寺(新四国相馬霊場第55番札所)の鯖大師堂右側面に彫られた説明文について、概要が記されている。また、鯖大師堂は湖北地区公民館裏手にもあるとのこと。
【資料7】「なま街道を上る荷」
(http://88souma.com/pdf/namakaido.pdf)
インターネット情報。「新四国相馬霊場88ヶ所を巡る会」の団体サイトに活動報告があり、「なま街道を上る荷」のページの最後に、「なま街道と鯖大師」の説明と、円福寺(我孫子市柴崎)の鯖大師像のカラー写真あり。地図中には持法院(柏市)の像の記載もある。明治・大正期に寄進されたとのこと。
【資料8】『我孫子市史資料 金石文篇1 石造物』(我孫子市金石文編集委員会編集 我孫子市教育委員会 1979)
p38 弘法塔
「八十八ヶ所の縮小版が各所にできて、円頂法衣に五鈷杵をもつ石の坐像が、村々の寺や辻に置かれた。」、「当地で弘法の造塔が盛んだったのは明治末から大正初期ころと思われる。このほか、「鯖大師」というのがある。」とあり。
【資料9】『五来重著作集 第4巻 寺社縁起と伝承文化』(五来重著 法藏館 2008)
p349-357 牛方山姥と鯖大師
鯖大師の信仰と昔話について考察している。
【資料10】『日本石仏事典』(庚申懇話会編 雄山閣出版 1995)
p351-352 鯖大師
伝説について記述あり。また、「石仏でも、四国八十八所霊場の写しとして、番外に鯖大師を造像する。」とあり。
(2)確認済みだが該当する情報がない資料
質問者が探している情報の掲載はなかった。
『東葛印旛・大師講 鎌ケ谷市郷土資料館調査報告書1』(鎌ケ谷市郷土資料館編集 鎌ケ谷市郷土資料館 1990)
『楽しい東葛いしぶみ事典(東葛流山研究 第32号)』(流山市立博物館友の会事務局 2014)
p82 藤ヶ谷鮮魚街道常夜燈
『我孫子市史 民俗・文化財篇』(我孫子市史編さん委員会編集 我孫子市教育委員会 1990)
p521-527 相馬霊場の大師堂と大師像
鯖大師像の記述はない。円福寺の木造大師像などについては触れられている。
『白井のあゆみ 白井市郷土資料館10周年記念誌』(白井市郷土資料館編集 白井市郷土資料館 2005)
p131 図1 東葛飾印旛大師講巡拝順路図
40 下柳戸阿弥陀堂のそばに「サバ大師」と書かれている(柳戸は旧沼南町)。本文中に解説はない。
- 回答プロセス
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Googleで「(鮮魚)街道」「鯖」「像」などと検索した結果、我孫子市や柏市の寺社に「鯖大師」の像があることがわかった(柏市の事例として【資料4】)。
辞典類を横断検索できるデータベース「ジャパンナレッジLib」の全文検索で、同様の検索語や「鯖大師」で検索したところ、【資料1】『世界大百科事典』や『日本大百科全書』に、街道沿いにある大師像についての記述を見つけた。また、Googleブックスで【資料2】を見つけ、【資料3】を確認した。
これらを参考に、探しているのは「鯖大師像」のことでよいかと質問者に了解を得たうえで調査を続行し、さらに千葉県関係資料や民俗関係の資料を探索した。
千葉県関係資料の書架(地域史、民俗、交通、石造物等)をあたったほか、千葉県立図書館OPAC(蔵書検索システム)や、千葉県関係資料検索「菜の花ライブラリー」(http://www.library.pref.chiba.lg.jp/nanohana/)、NDLサーチ等を、「鯖大師」、「大師像」、「鮮魚街道(生街道 なまかいどう、なまみち)」などで検索し、資料を確認した。
柏市の事例に関する【資料5】、我孫子市の事例に関する資料(【資料6】~【資料8】)や、関連する民俗・石造物関係の資料(【資料9】、【資料10】)が見つかった。
(インターネット最終アクセス:2021年02月20日)
- 事前調査事項
- NDC
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- 関東地方 (213 9版)
- 交通史.事情 (682 9版)
- 仏像 (718 9版)
- 参考資料
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- 【資料1】『世界大百科事典』(平凡社 2007)
- 【資料2】『世界大博物図鑑2 魚類』(荒俣宏著 平凡社 1989)(1100726313)
- 【資料3】『魚の文化史』(矢野憲一著 講談社 1983)(9101596666)
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【資料4】「沼南散策(4) 持法院2 観音堂(柏市・藤ケ谷)」
(http://kamagaya-sanpo.blogspot.com/2017/06/blog-post_18.html) - 【資料5】『東葛印旛大師藤ケ谷結願記念誌』(准四国八十八箇所東葛印旛大師藤ケ谷大師組合 2007)(1102096319)
- 【資料6】「鯖大師について」(『我孫子市史研究センター会報』 我孫子市史研究センター 通巻1号~通巻108号[合冊] 2011.03-2020.02)(0501454807) 通巻81号 2008.11 p2-3
- 【資料7】「なま街道を上る荷」(http://88souma.com/pdf/namakaido.pdf)
- 【資料8】『我孫子市史資料 金石文篇1 石造物』(我孫子市金石文編集委員会編集 我孫子市教育委員会 1979)(1100804447)
- 【資料9】『五来重著作集 第4巻 寺社縁起と伝承文化』(五来重著 法藏館 2008)(0106072823)
- 【資料10】『日本石仏事典』(庚申懇話会編 雄山閣出版 1995)(1101363024)
- キーワード
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- 街道
- 鮮魚街道
- 生街道
- 鯖大師
- 石造物
- 千葉県
- なまみち
- なまかいどう
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000295788