レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2018年10月20日
- 登録日時
- 2018/12/12 00:30
- 更新日時
- 2020/01/13 00:30
- 管理番号
- 3A18005308
- 質問
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解決
大阪市中央区玉造にある玉造稲荷神社は、1857年(安政4年)江戸幕府公許の大阪市内で演芸が出来る神社9社の中の一つだが、残り8社の神社はどこか。
- 回答
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安政4年に江戸幕府公許の大阪市内で演芸が出来る神社について以下の資料に関連する記述がありました。
『大阪編年史 第23巻 自安政3年6月至文久2年12月』 (大阪市立中央図書館市史編集室/編集 大阪市立中央図書館, 1977.3)
p.87-88「御触及口達」(安政四年)に、「市中為繁栄、諸興行物井茶屋差免之事」とあり、「生玉・座摩・天満天神社・上難波町・仁徳天皇社・御霊社・玉造稲荷社・堀江和光寺・難波村法善寺・高津社等」と記述があります。
『岩波講座日本歴史 第13巻』(大津透ほか編集、岩波書店、2015)
p.308 神田由築「芸能と文化」の「三 序列化と多様化の時代」に「3 天保期の文化」の項があり、「天保改革で禁止されていた寺社境内での興行が安政四年に再開されるのを機に」という記述があります。
なお、天保13(1842)年8月20日の触書で寄席等興行が寺社境内で認められた9社について記述のある資料を以下にご紹介いたします。
『[雑誌]芸能懇話』2005年8月号、16号(大阪芸能懇話会編、大阪芸能懇話会, 2005)
p.129 中川桂「近世寄席概観」の「大坂の寄席所在地:寺社地」の項に、「天保改革の際、江戸での寄席取締に続いて、大坂でも天保十三年の八月二十日付で、九ヵ所の寺社に宛てて触書が出された。」とあり、その触書で「昔咄」(落語)等の興行を認めた九社として「生玉(生国魂)神社、坐摩神社、天満天神、博労稲荷(難波神社)、御霊神社、玉造稲荷、和光寺(阿弥陀池)、法善寺、高津神社」とあります。
『落語の空間』(延広真治、山本進、川添裕編集、岩波書店, 2003.8)
p.117-135中川桂「上方寄席事情」のp.122-123「一 近世上方の寄席:天保改革後の寄席興行」の項に天保の改革により興行に多くの規制が加えられた旨の記述があり、「(一八四二(天保十三)年)五月、寺社境内の寄席も九軒に制限された。」ということ、大坂においても、一八四二(天保十三)年八月二〇日付で九社について出された触書で「寄席の軒数には制限を加えず、興行を認める九カ所の寺社を設定した」「九寺社とは生玉神社、坐摩神社、天満天神、博労稲荷、御霊神社、玉造稲荷、和光寺、法善寺、高津神社である。」とあります。
寺社名はありませんが、大坂の寄席芸への注意に関連する記述がある資料を参考まで紹介いたします。
『芸能伝承の世界』(天野文雄、須田悦生、渡辺昭五、三弥井書店、1999)
p.354-354 中川桂「寄席芸としての話芸」の「二 天保改革と大坂の寄席:天保改革と大坂での寄席対策」の項に大坂での寄席芸への注意の初見は「天保十三(一八四二)年四月十六日付の口達」、同年の八月二十日付の「大阪天満宮所蔵の控文書中にある、寺社境内の寄席興行についての触書」で、寺社境内での寺社興行を9ヶ所に限定した旨の記述があります。
『大阪天満宮所蔵古文書目録』(大阪天満宮史編纂会編集、大阪天満宮、 1989)
目録のなかでは上記の天保十三(一八四二)年八月二十日付の大阪天満宮所蔵の控文書そのものは確認できませんでしたが、p.28「天満天神社(社内小屋掛縮請書)」天保13.5.21という古文書があり、注記に「町奉行の小屋掛についての仰渡しに対する、生玉明神、座摩社・天神社・仁徳天皇社・御霊社・玉造社・和光寺・法善寺などの請書。」とあります。
- 回答プロセス
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1.大阪文献資料目次検索(館内限定)で、”玉造稲荷神社”を検索するが有用情報なし。
2.当館の大阪関係資料の書架で演芸史関係資料をブラウジングして見つけた『上方演芸大全』の参考文献を確認し、資料1、2が見つかる。
3.『芸能懇話 2005年8月号 / 16号』(資料2)中川桂「近世寄席概観」の注記の参考文献を確認し、資料3が見つかる。
4.「御触書」関連の資料を確認するが、有用情報なし。
5.国立国会図書館レファレンス協同データベースの類似例「人形芝居について調べている。天保12年に天保の改革による厳しい倹約令が出されているが、この禁令が何年に解消されたのか知りたい。確認できる資料を教えてほしい。」(http://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000220499 )(2019.12.3確認)の参考文献を確認し、資料4が見つかる。
6.資料2に記載のあった大阪天満宮所蔵の天保13年の御触書を確認するため、『大阪天満宮社報』を確認するが、有用情報なし。
7.『大阪天満宮所蔵古文書目録』(資料5)を確認。
8.『大阪編年史』の安政4年を含む巻である資料6を確認。
- 事前調査事項
- NDC
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- 演劇 (770 9版)
- 近畿地方 (216 9版)
- 参考資料
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- 当館書誌ID <5111069936> [雑誌巻号] 芸能懇話 2005年8月号 / 16号 特集 上方の寄席 大阪芸能懇話会/[編] 大阪芸能懇話会 2005.08 (資料1)
- 当館書誌ID <0000840641> 芸能伝承の世界(講座日本の伝承文学 第6巻) 天野 文雄/編 三弥井書店 1999.3 9784838230648 (資料2)
- 当館書誌ID <0010585586> 落語の空間(落語の世界 3) 延広 真治/編集 岩波書店 2003.8 9784000263009 (資料3)
- 当館書誌ID <0013456640> 岩波講座日本歴史 第13巻 近世 4 大津 透/編集委員 岩波書店 2015.3 978-4-00-011333-5 (資料4)
- 当館書誌ID <0080146055> 大阪天満宮所蔵古文書目録 大阪天満宮史編纂会/編集 大阪天満宮 1989 (資料5)
- 当館書誌ID <0070117964> 大阪編年史 第23巻 自安政3年6月至文久2年12月 大阪市立中央図書館市史編集室/編集 大阪市立中央図書館 1977.3 (資料6)
- キーワード
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- 大阪府大阪市中央区
- 玉造稲荷神社
- 演芸
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000248174