レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2012/11/16
- 登録日時
- 2012/11/16 13:02
- 更新日時
- 2012/12/11 17:24
- 管理番号
- 福井県図-20121116
- 質問
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未解決
刑事ドラマでは、被疑者や拘留者に対してかつ丼がふるまわれるシーンがあります。
しかし、現実には、逮捕されて取り調べを受ける際、かつ丼が提供されることはない、と現役の刑事さんから伺いました。(コンビニ弁当を提供しているそうです)
刑事ドラマでは『取り調べといえば、かつ丼』という設定は、いつ、どのような経緯で始まったのかなどを教えてもらえますか?
- 回答
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当館で所蔵している資料に書かれていた情報をお伝えいたします。
(1)『なぜ取り調べにはカツ丼が出るのか?』テレビドラマと日本人の記憶 中町綾子/著 2010.12 メディアファクトリー ISBN:978-4-8401-3662-4 (請求記号:778.8/ナカマ 資料コード:1015707613)には、以下のような記述があります。
p.13「取り調べシーンにカツ丼を初めて「採用」したのは、55年公開の映画『警察日記』だと言われている」
「劇中、カツ丼は警官の温情を感じさせるアイテムとして用いられた」
「60年代になると、現実の世界でも「取り調べのカツ丼」を巡る逸話が登場する。当時、戦後最大の誘拐事件と言われた「吉展ちゃん誘拐殺人事件」の容疑者に取り調べの場でカツ丼を食べさせ、自供を促したとされるエピソードだ」
(実際には、カツ丼は食べさせていないという記述もあります)
p.115~ 第3章 カツ丼と殉職が伝えるもの
「人情派刑事(警察官)と取調室でも食事。この組み合わせの系譜はのちの刑事ドラマにも脈々と受け継がれた。」
「劇中では、山さんが取り調べ中の容疑者に食事を与えるシーンが幾度となく描かれた」
(2)『ミステリーファンのためのニッポンの犯罪捜査』相楽総一/取材・文 北芝健/監修 2006.12 双葉社 ISBN:4-575-29939-1(請求記号:317.7/サカラ 資料コード:1014914277)には、以下のような記述があります。
p.135「取調室での食事も認められていない。従って、刑事が出前のカツ丼を被疑者に食べさせ、「どうだ、美味いか。もうこれ以上、田舎のおふくろさんを悲しませるんじゃないぞ」と、お決まりの自白を迫るシーンも、以前はよくあったが、現在はドラマだけの世界になっている」
(3)『プロフェッショナルを演じる仕事術』若林計志/著 2011.11 PHP研究所 ISBN:978-4-569-80024-0(請求記号:336/ワカハ 資料コード:1015830621)の「第1章 取調室でカツ丼を食べる謎」には、以下のような記述があります。
・1955年にヒットした映画「警察日記」で初めて登場したと言われている。
・70年代の人気ドラマ「太陽にほえろ」の“落としの山さん”のように、刑事ドラマの演出で頻繁に使われるようになる。
・ドリフターズのコントなどでも盛んに使われるようになったことから、「取調室ではカツ丼が出る」「警察署ではカツ丼をおごってもらえる」というイメージが一般に定着したと言われている。
・興味深いのは、その後、実際の取調べでも刑事がカツ丼をおごるケースがかなりあった。
・警察庁の「平成20年度の警察捜査における取調べ適正化指針」では、事実上禁止されるに至った。これは裏を返せば文章で通達しなければいけないほど、そういう事実があったという事を物語っている。
(注)「警察捜査における取調べ適正化指針」は、インターネット上で公開されており、http://www.npa.go.jp/keiji/keiki/torishirabe/tekiseika_shishin.pdf これには、「(オ) 便宜を供与し、又は供与することを申し出、若しくは約束すること。」という文言はあるものの、直截に食事をおごることを禁じた文言になっているわけではない点、注意が必要です。
(4) 雑誌記事:青柳雄介「刑事ドラマのウソ・ホント (特集 刑事ドラマ人気の秘密を探れ!)」(ぎゃらく(502),30-33,2011.04 放送批評懇談会)が関連ありそうですが、所蔵していないため内容は確認できませんでした。
(5)留置に関する警察庁の資料
警察の留置業務(警察庁)http://www.npa.go.jp/syokai/ryuchi/toppage.html
の中に、食事についての説明が写真入であります。
http://www.npa.go.jp/syokai/ryuchi/Detention_house-J_080415-3.pdf
(6)被留置者の留置に関する規則 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H19/H19F30301000011.html
(食事の支給)
第十七条 留置主任官は、被留置者に対する食事の支給に当たっては、栄養及び衛生について検査しなければならない。
2 疾病者その他特別の理由のある者については、必要に応じ、かゆ食その他適当な食事を支給するものとする。
(7)wikipediaのカツ丼の項目に、詳しい記述があります。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%84%E4%B8%BC
- 回答プロセス
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1.自館OPACで件名「テレビドラマ」を検索→ヒットした208件のうち、『なぜ取り調べにはカツ丼が出るのか?』テレビドラマと日本人の記憶 中町綾子/著 2010.12 メディアファクトリー ISBN:978-4-8401-3662-4 (請求記号:778.8/ナカマ 資料コード:1015707613)が質問に合致しそうなので見る。
2.実際の取り調べについて調べてみることにし、自館OPACで一般件名「犯罪捜査」を検索→99件ヒット。
(ア)『ミステリーファンのためのニッポンの犯罪捜査』相楽総一/取材・文 北芝健/監修 2006.12 双葉社 ISBN:4-575-29939-1(請求記号:317.7/サカラ 資料コード:1014914277)
(イ)『日本の警察・犯罪捜査のオモテとウラ』北芝健/監修 2010.4 永岡書店 ISBN:978-4-522-47620-8(請求記号:317.7/ニツホ 資料コード:1015700360)
p.95 取り調べ中に出るのは水だけ
「では、もうひとつの伝説、「刑事の温情で被疑者に振る舞われる出前のカツ丼」についてはどうだろう。これもじつはありえない。カツ丼の器は瀬戸物である。叩き割れば刃物になるし、割りばしも凶器になる。そのため、取調室で食事をとることは一切禁止されている。」
3.WebcatPlusで「取調室」を一致検索。→73件ヒット。『プロフェッショナルを演じる仕事術』若林計志/著 2011.11 PHP研究所 ISBN:978-4-569-80024-0(請求記号:336/ワカハ 資料コード:1015830621)の第1章が「第1章 取調室でカツ丼を食べる謎」であるためこの本を確認。
4.CiNii Articlesで「刑事ドラマ」を検索
青柳雄介「刑事ドラマのウソ・ホント (特集 刑事ドラマ人気の秘密を探れ!)」(ぎゃらく(502),30-33,2011.04 放送批評懇談会)が関連ありそうだが、所蔵していないため確認できず。
5.Googleで「留置所 食事」をキーワードに検索→警察庁のサイトがヒットする。
警察の留置業務(警察庁)http://www.npa.go.jp/syokai/ryuchi/toppage.html
食事の箇所
http://www.npa.go.jp/syokai/ryuchi/Detention_house-J_080415-3.pdf
引用
「写真はある留置施設で支給された標準的な食事の一例ですが、国民生活の実状等を勘案して十分なものであるように、資格のある栄養士が定期的に栄養のバランスをチェックしており、年々その内容の充実に努めています。
また、被留置者は、官給の食事以外に、食事、菓子類、乳製品等を自己の負担で購入することができます。」
6.Googleで「福井県警察 留置 食事」を検索→福井県公安委員会H20.6.13 http://www.pref.fukui.jp/kouaniinkai/kaigiroku08/0806/080613.html がヒット。
この中に、「被留置者の処遇については、食事のカロリー計算や入浴方法など人権問題も含めて法律等で規定されている。また、同委員会は、被留置者の処遇等の適正確保を目的に視察を行っている。」
との記述があったため、留置に関する法律、規則を調べる。
被留置者の留置に関する規則 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H19/H19F30301000011.html
(食事の支給)
第十七条 留置主任官は、被留置者に対する食事の支給に当たっては、栄養及び衛生について検査しなければならない。
2 疾病者その他特別の理由のある者については、必要に応じ、かゆ食その他適当な食事を支給するものとする。
(差入物に関する意見聴取等)
第十八条 留置主任官は、弁護人等(法第七十五条第三項 に規定する弁護人等をいう。以下同じ。)以外の者が被留置者(法第十四条第二項第一号 に掲げる者に限る。以下この項及び第二十四条において同じ。)に交付するため物品(信書を除く。)を留置施設に持参し若しくは送付した場合において当該物品が刑事訴訟法 (昭和二十三年法律第百三十一号)の定めるところにより交付を受けることが許される物品であるかどうか、被留置者が自弁物品等(法第四十六条第一項第五号 に規定する自弁物品等をいう。以下この項において同じ。)を購入するため領置されている現金を使用することを申請した場合において同法 の定めるところにより購入する自弁物品等の交付を受けることが許されるかどうか又は被留置者が弁護人等以外の者への物品(法第二百二十七条 において準用する法第百三十三条 に規定する文書図画(第二十四条において単に「文書図画」という。)に該当するものを除く。)の交付(信書の発信に該当するものを除く。)を申請した場合において当該物品が同法 の定めるところにより交付が許される物品であるかどうかについて、捜査主任官の意見を聴くものとする。
2 糧食の差入れ及び自弁購入は、これを禁止してはならない。
7.コメントにより、wikipedia カツ丼の項目をご教示いただく。
- 事前調査事項
- NDC
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- 行政 (317 8版)
- 映画 (778 8版)
- 参考資料
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- 福井県立図書館蔵書検索
- webcatplus
- CiNii Articles
- キーワード
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- 刑事ドラマ
- カツ丼
- 照会先
- 寄与者
-
- 市川市中央図書館
- 備考
- より有益な情報をお持ちの方は、福井県立図書館までお知らせください。
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000114085