レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2019年10月16日
- 登録日時
- 2021/06/17 11:38
- 更新日時
- 2024/01/17 11:31
- 管理番号
- 984
- 質問
-
大正6~7年頃に描かれた上村松園の「清少納言」という作品と、特にその作品が出品された展覧会について知りたい。本人による随筆『青眉抄』にそのことについて書かれている。
- 回答
-
展覧会の名称や詳細については確認できず。
<資料1>
『青眉抄・青眉抄その後 上村松園全随筆集』(上村松園/著,求龍堂,2010)【1108904002】
収録の「青眉抄その後」p.231「画道と女性 ――喜久子姫御用の「春秋屏風」その他――」の中の「風俗画の時代について」で「大正六、七年頃、京都の林新助氏の何かの記念展覧会に描いた清少納言の図は、確かに三尺か三尺八寸くらいの堅幅」とあり。
<資料2>
『青眉抄その後』(上村松園/著,求龍堂,1986)【1100024320】
p.59に同じく「大正六、七年頃、京都の林新助氏の何かの記念展覧会に描いた清少納言の図は、確かに三尺か三尺八寸くらいの堅幅」とあり。
青空文庫でも閲覧可能( https://www.aozora.gr.jp/cards/000355/files/47305_31527.html )。
上村松園の「清少納言」図は数種存在しているが、お探しの作品は当館所蔵資料では確認できず。
<資料3>
『美術画報』45編巻2(大正10=1921年12月)に掲載されており、東京文化財研究所のwebサイトから確認できる(白黒図版)。
https://www.tobunken.go.jp/materials/gahou/215897.html
展覧会を開催した林新助については、以下の資料に掲載あり。
<資料4>
『人事興信録 上』(大正14年刊 復刻版)(興信データ,2001)【1107010355】
は之部p.59
<資料5>
『京都市姓氏歴史人物大辞典(角川日本姓氏歴史人物大辞典26)』(京都市姓氏歴史人物大辞典編纂委員会/編著,角川書店,1997)【1101754198】
p.547に「明治~昭和期の骨董美術商。株式会社京都美術倶楽部取締役。(後略)」とあり。
<資料6>
『上村松園書誌』(村田真知/編,美術年鑑社,1999)【1106045436】
p.186「展覧会出品記録」大正8年(1919年)5月7日から8日に「京都日出新聞創刊四十年記念絵画展」(京都美術倶楽部)開催の記載あり。
京都府立京都学・歴彩館所蔵の『京都美術』48号(大正8年12月)(芸艸堂)の「美術工芸界日誌」欄にも同様の記載あり。
上村松園の随筆にある「林新助氏」は「株式会社京都美術倶楽部取締役」であり、記念展覧会関連と考え、当時の『京都日出新聞』(マイクロフィルム版)を確認したが、「清少納言」図の出品については確認できず。
<資料7>
『日本経済新聞』2021年5月14日 朝刊39面
「上村松園作品100年ぶり発見、行方不明の「清少納言」、京都で初公開へ。」
電子版見出しは「上村松園の日本画、100年ぶり発見 京都で初公開」( https://www.nikkei.com/article/DGXZQOIH123VH0S1A510C2000000/ )
「行方不明となっていた作品が100年以上の時を経て発見された。(中略)発見されたのは、1917~18年ごろに描かれたとみられる「清少納言」という作品。」とあり。
【 】内は当館資料コード
インターネット情報は、2021年7月8日確認
- 回答プロセス
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まず、『青眉抄』の記述を確認。最初に書かれた『青眉抄』ではなく、『青眉抄その後』の方に収録されている。
<資料1>『青眉抄・青眉抄その後』(上村松園/著,求龍堂,2010)【1108904002】p.231
<資料2>『青眉抄その後』(上村松園/著,求龍堂,1986)【1100024320】p.59
「画道と女性 ――喜久子姫御用の「春秋屏風」その他――」の中の「風俗画の時代に就いて」の部分に、
「大正六、七年頃、京都の林新助氏の何かの記念展覧会に描いた清少納言の図は、確かに三尺か三尺五寸くらいの竪幅だった」とあり。
<資料3>『美術画報』45編2に掲載されているということは、質問者ご自身が調査済。
東京文化財研究所のwebサイト( https://www.tobunken.go.jp/materials/gahou/215897.html )を確認。
国立国会図書館デジタルコレクションも確認したが、画像の収録なし。
美術画報. 45(2)(534)( https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1898387 )(国立国会図書館/図書館送信参加館内公開)
<資料6>『上村松園書誌』(村田真知/編,美術年鑑社,1999)【1106045436】に収録の「第3部 年譜」及び「第4部 展覧会出品記録」の該当年代付近を通覧したが、「清少納言」図の出品情報は確認できず。
大正6~7年頃の新聞(『京都日出新聞』マイクロフィルム版)を閲覧したが、質問内容についての記載は確認できず。
展覧会を主催した林新助という人物に手がかりがないかと考え、調査。
<資料4>『人事興信録 上』(大正14年刊 復刻版)(興信データ,2001)【1107010355】(は之部p.59)に略歴あり。
<資料5>『京都市姓氏歴史人物大辞典(角川日本姓氏歴史人物大辞典26)』(京都市姓氏歴史人物大辞典編纂委員会/編著,角川書店,1997)【1101754198】p.547に「林新助」の項あり。
「明治~昭和期の骨董美術商。株式会社京都美術倶楽部取締役。(後略)」とあり。
京都府立京都学・歴彩館に雑誌『京都美術』((芸艸堂)1(明38.9)~48号(大8.12) ||キヨウ||K 歴彩館:B1書庫E)の所蔵があるので、大正6~7年(1917~1918)頃に林新助主催の展覧会情報の掲載がないか同館に問い合わせ、45巻末の展覧会情報に「春季平安会(林新助氏・八方堂は下河原河崎邸・新蕉堂は下河原近江家方)」という情報の掲載があったとの回答を得た。
当館所蔵『京都日出新聞』(マイクロフィルム版)で確認したところ、大正7年4月1日朝刊1面「春季平安会」、大正7年4月8日朝刊2面「春季平安会」の記事があったが、美術展覧会ではなく茶席のように見受けられる記載あり。
以下は後日の追加調査
<資料7>『日本経済新聞』2021年5月14日 朝刊39面
「上村松園作品100年ぶり発見、行方不明の「清少納言」、京都で初公開へ」という記事が掲載。
電子版見出しは「上村松園の日本画、100年ぶり発見 京都で初公開」( https://www.nikkei.com/article/DGXZQOIH123VH0S1A510C2000000/ )
(図版は原紙は白黒、電子版はカラー、日経テレコン21では画像なし)
この記事に本事例の作品について書かれていた。
「行方不明となっていた作品が100年以上の時を経て発見された。(中略)発見されたのは、1917~18年ごろに描かれたとみられる「清少納言」という作品。」とあり。
お探しの「清少納言」の絵であることはわかるが、過去に出品された展覧会についての言及は確認できず。
<資料6>『上村松園書誌』(村田真知/編,美術年鑑社,1999)【1106045436】の「第4部 展覧会出品記録」と京都府立京都学・歴彩館所蔵『京都美術』48号(大正8年12月)の「美術工芸界日誌」欄を確認。
大正8年5月7日から開催の「京都日出新聞創刊四十年記念絵画展」(京都美術倶楽部)の情報を発見。
「林新助氏」は「株式会社京都美術倶楽部取締役」であり、記念展覧会関連と考え、当時の『京都日出新聞』(マイクロフィルム版)を確認。
大正8年5月7日朝刊1面「空前の大展画」に陳列品中の主なものが載っているが、上村松園作品は「人物」となっている。
大正8年5月9日(5月8日夕刊)2面「本社四十年記念祝典第二日 一般観覧客に賑ふ現代名家絵画展覧 華香、松園に先生の揮毫画到来して異彩を加へ」の記事から、上村松園の「吹雪」が出品されていることがわかる。
また、大正8年5月10日朝刊1面には「上村松園先生 ふぶき (本社記念展覧会作品)」とする図版が掲載されている。
この月の紙面を通覧してみたが、上村松園に関する記事は上記3点以外に見つけられず、「清少納言」図の出品についての情報は得られなかった。
〈参考〉
上村松園の清少納言の絵が見たい。(岡山県立図書館)
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000270316
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本 (281 8版)
- 日本画 (721 8版)
- 参考資料
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<資料1>上村松園 著 , 上村松園 著 , 上村, 松園, 1875-1949. 青眉抄. 求龍堂, 2010.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010968827-00 , ISBN 9784763010278 -
<資料2>上村松園 著 , 上村, 松園, 1875-1949. 青眉抄その後. 求竜堂, 1986.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001824442-00 , ISBN 4763085220 -
<資料3>美術画報 45(2)(534). 画報社, 1921-12.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I000309286-00 (東京文化財研究所(上村松園 清少納言)https://www.tobunken.go.jp/materials/gahou/215897.html) -
<資料4>人事興信録 第7版上. 興信データ, 2001.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I026090604-00 , ISBN 4906667066 ((大正14年刊の復刻)) -
<資料5>竹内理三 [ほか]編纂 , 竹内, 理三, 1907-1997. 角川日本姓氏歴史人物大辞典 26. 角川書店, 1997.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002681424-00 , ISBN 4040022602 -
<資料6>村田真知 編 , 村田, 真知. 上村松園書誌. 美術年鑑社, 1999. (AA叢書 ; 7)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002889120-00 , ISBN 4892101397 -
〈資料7〉上村松園作品100年ぶり発見 行方不明の「清少納言」 京都で初公開へ. 日本経済新聞 2021年5月14日 朝刊 39面
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOIH123VH0S1A510C2000000/
-
<資料1>上村松園 著 , 上村松園 著 , 上村, 松園, 1875-1949. 青眉抄. 求龍堂, 2010.
- キーワード
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- 上村松園
- 清少納言
- 照会先
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- 京都府立京都学・歴彩館
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 郷土 人物
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000300374