まず「安須杜神話」(これは通称であり、正式名称ではない)ですが、1650年成立の羽地朝秀(はねじちょうしゅう)著による琉球の最初の正史『中山世鑑』(ちゅうざんせいかん)にある琉球国開闢伝説のことを指している。
この神話および『中山世鑑』、安須森(あすムイ 「ムイ」は沖縄の方言で木々が茂っていることを示す)についての背景的知識は『沖縄大百科事典』(沖縄タイムス社 1983)で把握できる。
この事典によると、『中山世鑑』の中ではこの安須森は琉球で最初に創られた御嶽とされている。
この神話を正確に読むためには『中山世鑑』を読む必要がある。活字になっているものでは、伊波普猷、東恩納寛惇、横山重編纂『琉球史料叢書 五』(東京美術 1972)などがあるが、1650年成立の古文書であるゆえに読むには専門家以外の人が読むには難解である可能性もある。
物語として読むには小島櫻禮著『日本の神話 : 国生み・神生みの物語』(世界の神話 10 筑摩書房 1983)に所収されている「琉球の神話」を読むのがベストだと思われる。
安須森やこの神話に関する資料とすれば、上記の『沖縄大百科事典』以外に
・『国頭村史』(国頭村役所 1967)
・『伊波普猷全集』(平凡社 1974-1976)
・山下欣一著 『南島民間神話の研究』(第一書房 2003)
・伊藤幹治著 『沖縄の宗教人類学』(弘文堂 1980)
などがある。