レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 登録日時
- 2021/10/26 16:47
- 更新日時
- 2023/03/01 13:22
- 管理番号
- Obu2021-4
- 質問
-
解決
女王アリや女王蜂でない、働きアリ、ハチが車などで移動させられ元の組織に戻れなくなった場合、その後どのように生きていくのか知りたい。
(自活するのか、他の組織に所属するのか)
- 回答
-
『アリハンドブック 』(寺山守/解説 文一総合出版 2018)
p.86「用語解説」より「社会寄生:社会性昆虫であるアリが、他のアリの種の巣内に入り、その中で生活すること。」「恒久的社会寄生:社会寄生の中で寄生者は寄生する相手の女王を殺さず、コロニーの中で終生同居する寄生様式。」とある為、他種、他コロニーで生活する事が可能だと考えられる。
※詳細は下記「回答プロセス」を参照。
『ハチハンドブック』(藤丸篤夫/著 文一総合出版 2014)
p.5「用語解説」より「社会寄生:社会性のスズメバチやハナバチなどで見られる寄生で、同種または他種の巣に入り込んで巣を乗っ取り、巣に残った働きバチを労働力として使う。自らも働きバチを産む一次寄生タイプと、新女王やオスしか生まない完全寄生のものがいる。」とある為、一部のハチは他種の巣の中で生活が可能だと考えられる。
『昆虫たちの世渡り術 』(海野和男/著 河出書房新社 2016)
p.76「アリはほとんど目が見えません。(中略)アリの世界で仲間をどうやって見分けるかというと、それは匂いです。」とあり、「クロシジミの幼虫は、オスアリの匂いを身につけて」働かず、共生しているという記述もある。(匂いが同じであれば共生出来るという事。)
p.128「しかし昆虫は基本、個人行動です。」「ハチやアリたちは大人になっても親子が一緒に暮らし、集団を作る。仲間と共にしか生きられない、依存し合う関係です。」との記載あり。(単体での生活は出来ない。参考)
※詳細は下記「回答プロセス」を参照。
『アリの社会 小さな虫の大きな知恵 』(坂本洋典/編著他 東海大学出版部 2015)
p.3「アリは仲間と群れ、助け合って生きている。(中略)利己的ではなく、「利他的」といえるだろう。」との記載があり、やはり単独での行動はしないようだ。(参考)
p.13「アリは新社会性のハチから進化したと考えられる。」とある為、アリとハチは同じような習性を持つのだろうと思われる。(参考)
p.26~「アリのグローバル選戦略ーその野望と成功」にヒアリの事例が、
p.53~アルゼンチンアリについて、その他一部種のアリについて記載あり。
アリはその種類によって特性が違い、同じ種や同コロニー(同じ巣で共同生活する集団)の仲間以外には敵対的である場合が多い事、ほとんど目は見えず匂いや体表面をおおう科学物質によって仲間を判断している事(遺伝により配合が異なる)、全く異なる環境にも順応していく力がある事、在来アリの巣を襲い駆逐してしまう種もいる事、実際に船荷などに紛れて侵入すケースがある事などが記載されている。(必ずしもそうだとは断言できないが)アリの種などによってはその環境に順応して生きていくことが考えられる。
※詳細は下記「回答プロセス」を参照。
『野生ミツバチの知られざる生活 』(トーマス・シーリー/著 青土社 2021)
p.20「この亜種が十七世紀はじめにイギリス系やスウェーデン系の移民によってマサチューセッツ、デラウェア、バージニアの各州に持ち込まれたとき、巣箱から逃げ出した(分蜂した)蜂たちがすぐに地元の生態系の重要な一部を占めるようになったのも意外ではない。」「この蜂がミシシッピ川の東側にあっという間に定着したことも伺える。」などの記述から、(ヨーロッパクロミツバチは)生活しやすい環境下では元いた土地と異なる場所に行ってもすぐに適応できる事がわかる。
p.22「アフリカミツバチは一九九〇年にアメリカへの二度目の侵入を果たしているが、そのときはメキシコから自ら飛来して国境を越え、テキサス州へと至った。ここでもまた、すでに定着していたヨーロッパ系のミツバチと混ざり合い、その結果、テキサス南部、ニューメキシコ最南部、アリゾナ、カルフォルニアといった湿潤な亜熱帯地域では、アフリカミツバチとヨーロッパ系ミツバチの交雑種(いわゆるアフリカ化ミツバチ)のコロニー数が増加し続けている。」とあり、翅がある事で自ら遠方の地で生活を始める女王バチもいるようだ。
p.27「当時の気候に合うよう強力な自然選択に常にさらされてきたのである。」など、気候や環境に適応すべく常に進化的変化がおこっている事も、これまでと異なる地で生活を営んでいける理由としてあげられている。
p.52「調査のきっかけになったのは、ヨーロッパ系亜種とアフリカ系亜種(A.m.scutellata)の交雑種であるアフリカ化ミツバチのコロニーが見つかったことだった。ブラジルから輸入した貨物に巣を作っていたのである。」とあり、貨物に紛れ込み、巣(コロニー)を作り、他国に侵入するケースがある事がわかる。
また、p.53「検疫のために隔離されていた場所からアフリカ系亜種のコロニーの一部が逃げ出して、ブラジルの気候のもとで大いに繁栄してしまった。」とあり、新しい環境にすぐに順応できることも伺える。
p.63「ダニに寄生された女王をブラジルから密輸したか、あるいはダニに寄生されたアフリカ化ミツバチの群れが貨物船にまぎれてやってきたか」、
p.64「アフリカ化ミツバチの群れが見つかった中南米からの貨物船は、一九八三~八九の七年間で八隻を数える(たいていは輸送用コンテナ内で見つかった)」などの記述から、ミツバチの群れが貨物船等に紛れて運ばれてしまう例はいくつもあると考えられる。
p.136「何キロも離れた土地から花蜜と花粉を集めて帰ってくる地球で唯一の場なのだ。」、
p.213にはミツバチの交尾飛行について「移動距離に関しては、女王が平均で二~三キロメートル、オス蜂が五~七キロメートル以上と、どちらも巣から集合場所まで長い距離を飛ぶことがはっきりとわかっている。」
p.216「調査コロニーから一九・三~二二・六キロメートル離れた地点に置いた場合は(中略)交尾に成功せず、距離が一六キロメートル未満の場合は、ほとんどの女王が交尾できた」との記載があり、ミツバチが日常的に何キロもの飛行をしている様子が伺える。
飛行に関して、p.223「採餌蜂は、この仕事のために花の咲く場所を求めて最大で一四キロメートルもの距離を飛行する。」
p.231「ミツバチは、一〇〇平方キロメートル以上の広範囲にわたって食料収集をこなえるという。」「巣から六キロメートル以上離れた場所にある食料源にも飛んでいくことができる」「ミツバチの飛行速度は時速三〇キロメートルほどで、六キロメートルの旅程であれば一二分ほどで到着する。」「体長一五ミリメートルのミツバチにとって六キロメートルは自身の四〇万倍の距離にあたるが、この比率を一・五メートルの身長をもつ人間に当てはめれば、移動距離は六〇〇キロメートルにもなる。」とあり、ミツバチの飛行能力の高さがわかる。
p.184「ミツバチのコロニーは年間を通じて活動的」「一方、マルハナバチは春が来ると女王が一匹で活動を開始して(中略)秋になるとコロニーは崩壊する。(中略)運が良ければ冬を生き延びて、春に自分のコロニーをもつようになる」
p.185「ミツバチの祖先は熱帯地域、マルハナバチの祖先は温帯地域に生息していた。」「熱帯に暮らした社会性蜂の遺産として、次の二つの基本的な性質を共有している。すなわち、①数年のコロニー寿命②分蜂によるコロニーの繁殖である。」
p.186「熱帯から北上して温帯へと広がり寒冷な気候に適応するにあたって、ミツバチはそのコロニーの複雑な社会組織ー(中略)ーの制約を受けたのだと思う。(中略)その代わりミツバチは、既存の生態を微調整するという、おそらくもっとも安易な道をたどって温帯の冬を乗り切ることにしたのだ。」これらの内容から、ミツバチが生活環境が変化しても、そのつどその環境に対応して生きていく力があったことが伺える。(ミツバチには翅があり、自ら遠方に移動する事もあるため、アリよりも環境の変化に対応する機会が多かったのではないかと予想できる。)
※上記は全てミツバチ(学名アピス・メリフェラ)についての記載となる。
※詳細は下記「回答プロセス」を参照。
『ファーブル昆虫記7 アリやハエのはたらき』(ファーブル/著 集英社 1991)
p.72~「遠くから巣にもどる力」にハチについての記述あり。
『アント・ワールド アリの世界 』(エドワード・O.ウィルソン/著 ニュートンプレス 2021)
p.103~「14章 早く家に帰りたい)」に、食糧を探して帰巣する場合の記述はあり。(参考)
『アリ!なんであんたはそうなのか フェロモンで読み解くアリの生き方』(尾崎まみこ/著 化学同人 2017)
p.11~(参考)
- 回答プロセス
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・フリーワード「ハチ アリ 習性」検索
『極限生物摩訶ふしぎ図鑑 乾燥・高温・極寒・高山に生息する生きものたち』(北村雄一/絵と文 保育社 2009)→関連する記載なし。
『動物に心はあるだろうか? 初めての動物行動学 』(松島俊也/著 朝日学生新聞社 2012)→関連する記載なし。
『林の虫』(藤本一幸/著 保育社 2003)→関連する記載なし。
『ご近所のムシがおもしろい! 』(谷本雄治/著 岩波書店 2012)→関連する記載なし。
『蜜量倍増ミツバチの飼い方 これでつくれる「額面蜂児」』(干場英弘/著 農山漁村文化協会 2020)→関連する記載なし。
・NDC486辺りをブラウジング
『アリハンドブック』(寺山守/解説 文一総合出版 2018)
p.5「他種の巣に入り込んで一緒に生活するといった社会寄生種までも存在する。」とあり、他種の巣に入り込んで生活する可能性が考えられる。
p.86「用語解説」より「社会寄生:社会性昆虫であるアリが、他のアリの種の巣内に入り、その中で生活すること。」「恒久的社会寄生:社会寄生の中で寄生者は寄生する相手の女王を殺さず、コロニーの中で終生同居する寄生様式。」とある為、他種、他コロニーで生活する事が可能だと考えられる。
『ハチハンドブック』(藤丸篤夫/著 文一総合出版 2014)→回答参照
『昆虫たちの世渡り術 』(海野和男/著 河出書房新社 2016)
p.57~「「そんなあなたも共犯者。」〈共生〉」に様々なアリの共生や寄生の事例が記されているが質問に関連する記載は無い。
p.76「アリはほとんど目が見えません。(中略)アリの世界で仲間をどうやって見分けるかというと、それは匂いです。」とあり、「クロシジミの幼虫は、オスアリの匂いを身につけて」働かず、共生しているという記述もある。(匂いが同じであれば共生出来るという事。)
p.123~「「群れよ」〈集団行動〉」よりp.127~「「群れ」は昆虫界では異例のスタイル」より「昆虫の中にも、僕たちと同じように「社会」を持つものがいます。ミツバチとアリでしょう。」
p.128「しかし昆虫は基本、個人行動です。」「ハチやアリたちは大人になっても親子が一緒に暮らし、集団を作る。仲間と共にしか生きられない、依存し合う関係です。」との記載あり。
『アリの社会 小さな虫の大きな知恵 』(坂本洋典/編著他 東海大学出版部 2015)
p.3「キリギリスは一生を単独で生活し、他の個体との競争に耐え抜き(中略)ほとんどの動物は同様の一生をおくっており、「単独性動物」と呼ばれているこれに対して、アリは仲間と群れ、助け合って生きている。(中略)利己的ではなく、「利他的」といえるだろう。」との記載があり、やはり単独での行動はしないようだ。
p.13「~アリは新社会性のハチから進化したと考えられる。」とある為、アリとハチは同じような習慣を持つのだろうと思われる。
p.26~「アリのグローバル選戦略ーその野望と成功」にヒアリの事例が記載されている。「それまで生活していたラプラタ川上流域の亜熱帯林とはまったく異なる場所にたどり着くことになる。」とあり、その後の状況等から、全く異なる環境にも順応していく力がある事が伺える。
p.31「毒の多様化」より「従来のヒアリ類に比べて、北米大陸に生息するヒアリの毒性がより多様で、より強くなっていることが明らかになっている。」とあり、環境へ順応しているとみられる。
p.32「ヒアリの侵入」より「一般にアリの社会では、一つの巣に女王アリは一個体しか存在しない」「単女王性」であるが、「厳しい環境の中で生き残るために、複数の女王アリが共同で産卵をおこなう」「多女王性」になることがあり、
p.35「このタイプは血縁識別能力が低く、隣どうし血縁があまりなくても融合し、巨大化する。」とあるため、(多女王性の)女王アリがいれば異なる環境にも対応し、血縁がなくてもコロニーが作られる可能性を示唆している。
p.37「ヒアリを操る遺伝子」からも「血縁の近さではなく、この遺伝子が生み出す情報伝達物質のタイプによって受け入れるべき仲間か、排除すべき存在かが決まってしまうのだ。」「ヒアリの特殊な社会進化が、侵入地での急速な生息域の拡大やスーパーコロニーの形成による侵入の成功に関連している可能性もあるだろう。」との記載や、
p.40「交雑がもたらすもの」
p.41「一時的にきょくたんに遺伝的多様性の低い状態となってしまい、その個体群の血縁を識別する能力がきょくたんに低下して、働きアリは非血縁者の侵入を防ぎきれなくなった。したがって、侵入地のヒアリコロニーにはさまざまな遺伝的背景をもった個体を受け入れ、ときには近縁他種ですら排除されなかったと考えられる。そのようにして、遺伝的な多様性が高くなったのだろう。」等の記載がある。
p.51~「仲間の識別」より「よそのコロニー(同じ巣で共同生活する集団)に対してはたとえ同じ種類であったとしても敵対的にふるまう」「アリは、匂いうによって仲間とよそ者を識別している。」「体表面をおおうワックスに含まれる、炭化水素という科学物質である」「一般的には、アリの種類が違うと炭化水素の種類が大きく異なり、一方、同じ種類のアリでは炭化水素の種類はほとんど同じだが、コロニーが違うとブレンド比が異なることが多い。アリは、こうした体表炭化水素プロフィールの違いを認識して、コロニーの仲間とよそ者を識別できるのである。」(参考)
p.53~アルゼンチンアリについての記載あり。「本来はアルゼンチンを含む南米のパラナ川流域に生息していた種だが、貨物などについて北米、オーストラリア、ヨーロッパ、アフリカ、日本など世界各地に広まった。」
p.54~「コロニーのつくり」より、「アルゼンチンアリは、多女王性で多巣性の種である。」「分巣を何十回と繰り返していくと、コロニーの規模は大きくなり、やがてたくさんの巣でできたスーパーコロニーとなる。」
p.55~「侵入したコロニーは敵対するライバルがいないので、分巣してどんどんテリトリーを拡げることができる。また、スーパーコロニーの一部が貨物とともに別の場所へ運ばれて新しいコロニーをつくっても、元のスーパーコロニーと仲良しのままで、けっして敵対的にならない。このように、侵入地においては一つのスーパーコロニーが飛び地的にも分布を拡げていくのだ。」
p.55「三つの災い」より「このアリは、侵入先の在来アリ類をほとんど駆逐してします。餌を独占ししたり、在来アリの巣を襲ったりするためだ。」
p.56「アルゼンチンアリは繁殖力がひじょうに高いために、被害の程度や被害にあう頻度が他のアリとは比べものにならないのだ。」「高い繁殖力の源」より「じつは、アルゼンチンアリが高い繁殖力をもつ一因は、スーパーコロニーを作ることにある。(中略)コロニーの大きなアルゼンチンアリではそのような小競り合いにかかるコストが少なく、その分繁殖に投資できるのだ。この効果は、スーパーコロニーが少ない侵入地ではとくに高まる。」
p.61「このアリは小さな船荷などに紛れて侵入するので」
p.65「アルゼンチンアリは人間活動を利用して恐ろしい規模のメガコロニーをつくってしまったのだ。」
p.66「スーパーコロニーの存続は」より「一般的なアリでは、一年のうち種によって決まった特定の時期に、結婚飛行というイベントがある。(中略)」一方、アルゼンチンアリは新女王アリが結婚飛行をおこなわない。(中略)スーパーコロニー内で交配がおこなわれると、体表炭化水素に関係する遺伝子は突然変異が生じないかぎりは同じものが受け継がれていくので、新女王アリが生む働きアリの体表炭化水素プロフィールは、古い女王アリが生む働きアリと同じである。(中略)何世代経ってもそのスーパーコロニー個有の体表炭化水素プロフィールが存続しつづける。」これらの事から、アルゼンチンアリはコロニーの一部が貨物等に紛れて全く未知の地に辿り着いたとしても、その繁殖力の強さと侵略性の強さから新たなコロニーからスーパーコロニーを作り、その地で勢力を広げていく種であると考えられる。
その他、p.76「放浪女王発見!」より「死亡リスクを最小限にするために、女王アリは野外での活動を控え、できるだけ早く営巣する」と考えられてきたが、シワクシケアリの女王アリは営巣せずに(約5ケ月間ほど)放浪しており、同種異巣ワーカーからの攻撃もあまり見られないという事実が明らかになったとの記載あり。
p.79「アリの多くは、体表炭化水素の組成、または組成比を巣仲間識別だけでなく、カースト認識、繁殖状態認識などさまざまな認識シグナルに使用している。」「これまで非血縁者排除を目的とした巣仲間識別シグナルが最上位と考えられてきたが、最近の研究から巣仲間認識シグナルに対して他のシグナルが優先されるケースが報告されている。フロリダオオアリでは、非巣仲間に対する攻撃行動発現にカーストと繁殖状態が関係しており、繁殖女王はワーカーや非繁殖女王に比べて他巣のワーカーから攻撃されにくい。同様に、フトハリアリの一種PachycondylachinensisとP.nakasujiiの近縁2種間では、ワーカーの攻撃性が他種ワーカーに比べて他種女王アリに対して低下する。」「このような巣仲間識別とカースト認識の優先度に関してのヒエラルキーの逆転がシワクシケアリでも起きている可能性が高い」
p.82「クシケアリ属では以前から、他のアリに比べて、女王アリのいない孤児コロニーが多い」「生理的な制約により独立営巣成功の可能性が著しく低い放浪女王にとって、他コロニーへの侵略は代替戦略として有効なのではないだろうか。」とある。これらの特性を持つ女王アリが巣から遠く離れた地に運ばれた時、そこにいる在来アリの巣仲間識別とカースト認識の優先度によっては新しい土地でも生活が営まれていく可能性も考えられる。
p.145「巣仲間同士の血縁度が低い!」より
p.146「エゾアカヤマアリのスーパーコロニーは、おそらく非血縁者さえ含む友人たちからなるシェアハウスが集まった共同体とみなすことができる。」「エゾアカヤマアリの巣内血縁度や巣間血縁度が低くなる原因」としてp.147「飛翔能力は優れている「オスを通した他コロニーからの遺伝子流入」「エゾアカヤマアリの新生女王は他巣に侵入するのが得意」
p.148「越冬の前後に起こる大規模な巣間混合」が挙げられているが、血縁度が低い故に他巣に出入りできる性質を獲得しており、これらの種が巣から遠く離れた地に運ばれてもそこで他巣に紛れ込み、暮らしていける可能性が考えられる。
『昆虫の大常識』(山内ススム/文 ポプラ社 2004)→関連する記載なし。
『野生ミツバチの知られざる生活 』(トーマス・シーリー/著 青土社 2021)
p.20「この亜種が十七世紀はじめにイギリス系やスウェーデン系の移民によってマサチューセッツ、デラウェア、バージニアの各州に持ち込まれたとき、巣箱から逃げ出した(分蜂した)蜂たちがすぐに地元の生態系の重要な一部を占めるようになったのも意外ではない。」「ヨーロッパクロミツバチが深い森に覆われたアメリカ北部の東半分、五大湖以南の地域に急速に広がっていったことが読み取れる。」「この蜂がミシシッピ川の東側にあっという間に定着したことも伺える。」という記述から、(ヨーロッパクロミツバチは)生活しやすい環境下では元いた土地と異なる場所に行ってもすぐに適応できる事がわかる。
p.22「アフリカミツバチは一九九〇年にアメリカへの二度目の侵入を果たしているが、そのときはメキシコから自ら飛来して国境を越え、テキサス州へと至った。ここでもまた、すでに定着していたヨーロッパ系のミツバチと混ざり合い、その結果、テキサス南部、ニューメキシコ最南部、アリゾナ、カルフォルニアといった湿潤な亜熱帯地域では、アフリカミツバチとヨーロッパ系ミツバチの交雑種(いわゆるアフリカ化ミツバチ)のコロニー数が増加し続けている。」とあり、翅がある事で自ら遠方の地で生活を始める女王バチもいるようだ。ミツバチは養蜂家により各国各地の女王バチが輸入(時には密輸入)されており、それが地元の生態系と混ざり合い、異なる遺伝子が混ざり合っている事が多い。その遺伝子の割合は、おとなしくて蜂蜜生産量が多いミツバチなど、養蜂家に人気があるもの程多くの数が輸入されたために、由来する場合が多いようだ。
また、p.27「当時の気候に合うよう強力な自然選択に常にさらされてきたのである。」など、気候や環境に適応すべく常に進化的変化がおこっている事も、これまでと異なる地で生活を営んでいける理由のようだ。
p.16~「本書の扱う対象について」より。
p.52「調査のきっかけになったのは、ヨーロッパ系亜種とアフリカ系亜種(A.m.scutellata)の交雑種であるアフリカ化ミツバチのコロニーが見つかったことだった。ブラジルから輸入した貨物に巣を作っていたのである。」とあり、貨物に紛れ込み、巣(コロニー)を作り、他国に侵入するケースがある事がわかる。
また、p.53「検疫のために隔離されていた場所からアフリカ系亜種のコロニーの一部が逃げ出して、ブラジルの気候のもとで大いに繁栄してしまった。」とあり、新しい環境にすぐに順応できることも伺える。天敵であるミツバチヘギイタダニが侵入し、広がっていった事を説明する際に
p.63「ダニに寄生された女王をブラジルから密輸したか、あるいはダニに寄生されたアフリカ化ミツバチの群れが貨物船にまぎれてやってきたか」、
p.64「アフリカ化ミツバチの群れが見つかった中南米からの貨物船は、一九八三~八九の七年間で八隻を数える(たいていは輸送用コンテナ内で見つかった)」などの記述から、ミツバチの群れが貨物船等に紛れて運ばれてしまう例はいくつもあると考えられる。
p.104「養蜂家がミツバチを所有し(ある程度)コントロールしているのが事実である一方で、ミツバチと人間との関係が、ウシ、ニワトリ、ウマなどの畜産動物とは根本的に異なっていることに注意してほしい。(中略)ミツバチは依然として野生を自力で見事に生きていくことができる」とあり、養蜂家により飼いならされた、輸入されたミツバチであってもその後(巣を離れたとしても)自力で野生の中で生きていける事がわかる。
p.136「何キロも離れた土地から花蜜と花粉を集めて帰ってくる地球で唯一の場なのだ。」とあり、ミツバチが日常的に何キロもの飛行をしている様子が伺える。
p.184「ミツバチのユニークな年間サイクル」より「ミツバチのコロニーは年間を通じて活動的」「一方、マルハナバチは春が来ると女王が一匹で活動を開始して(中略)秋になるとコロニーは崩壊する。(中略)運が良ければ冬を生き延びて、春に自分のコロニーをもつようになる」
p.185「ミツバチの祖先は熱帯地域、マルハナバチの祖先は温帯地域に生息していた。」「熱帯に暮らした社会性蜂の遺産として、次の二つの基本的な性質を共有している。すなわち、①数年のコロニー寿命②分蜂によるコロニーの繁殖である。」
p.186「熱帯から北上して温帯へと広がり寒冷な気候に適応するにあたって、ミツバチはそのコロニーの複雑な社会組織ー(中略)ーの制約を受けたのだと思う。(中略)その代わりミツバチは、既存の生態を微調整するという、おそらくもっとも安易な道をたどって温帯の冬を乗り切ることにしたのだ。」これらの内容からミツバチが生活環境が変化してもそのつどその環境に対応する力があったことが伺える。
p.213にはミツバチの交尾飛行について「移動距離に関しては、女王が平均で二~三キロメートル、オス蜂が五~七キロメートル以上と、どちらも巣から集合場所まで長い距離を飛ぶことがはっきりとわかっている。」
p.216「調査コロニーから一九・三~二二・六キロメートル離れた地点に置いた場合は(中略)交尾に成功せず、距離が一六キロメートル未満の場合は、ほとんどの女王が交尾できた」との記載あり。
p.223「採餌蜂は、この仕事のために花の咲く場所を求めて最大で一四キロメートルもの距離を飛行する。」
p.231「ミツバチは、一〇〇平方キロメートル以上の広範囲にわたって食料収集をこなえるという。」「巣から六キロメートル以上離れた場所にある食料源にも飛んでいくことができる」「ミツバチの飛行速度は時速三〇キロメートルほどで、六キロメートルの旅程であれば一二分ほどで到着する。」「体長一五ミリメートルのミツバチにとって六キロメートルは自身の四〇万倍の距離にあたるが、この比率を一・五メートルの身長をもつ人間に当てはめれば、移動距離は六〇〇キロメートルにもなる。」とあり、ミツバチの飛行能力の高さがわかる。
その他p.236、p.238、などに採餌活動においてミツバチが長距離飛行を行っている様子などが記載されている。
※上記は全てミツバチ(学名アピス・メリフェラ)についての記載となる。
『アント・ワールド アリの世界 』(エドワード・O.ウィルソン/著 ニュートンプレス 2021)→回答参照
『アリ!なんであんたはそうなのか フェロモンで読み解くアリの生き方』(尾崎まみこ/著 化学同人 2017)→回答参照
・「アリ ハチ 帰巣本能 本」でGoogle検索
『ファーブル昆虫記7 アリやハエのはたらき』(ファーブル/著 集英社 1991))→回答参照
(ウェブ・ページ最終閲覧日2021.10.26)
- 事前調査事項
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インターネットで調べたがヒットなし。絶対に戻って来れない状況でどうなるのか。「戻ってくる」という回答以外でお願いしたいとの事。
- NDC
-
- 昆虫類 (486 10版)
- 記録.手記.ルポルタージュ (956 10版)
- 参考資料
-
-
寺山守 解説 , 久保田敏 写真 , 寺山, 守 , 久保田, 敏. アリハンドブック 増補改訂版. 文一総合出版, 2018.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I029189326-00 , ISBN 9784829981603 -
藤丸篤夫 著 , 藤丸, 篤夫, 1953-. ハチハンドブック = The Handbook of Bees,Wasps,and Sawflies. 文一総合出版, 2014.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I025529867-00 , ISBN 9784829981252 -
海野和男 著 , 海野, 和男, 1947-. 昆虫たちの世渡り術. 河出書房新社, 2016. (14歳の世渡り術)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I027651075-00 , ISBN 9784309617039 -
坂本洋典, 村上貴弘, 東正剛 編著 , 坂本, 洋典, 1979- , 村上, 貴弘, 1971- , 東, 正剛, 1949-. アリの社会 : 小さな虫の大きな知恵. 東海大学出版部, 2015.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I026719267-00 , ISBN 9784486019893 -
トーマス・シーリー 著 , 西尾義人 訳 , Seeley, Thomas D., 1952- , 西尾, 義人, 1973-. 野生ミツバチの知られざる生活. 青土社, 2021.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I031236442-00 , ISBN 9784791773602 -
奥本大三郎 訳・解説 , Fabre, Jean-Henri, 1823-1915 , 奥本, 大三郎, 1944-. ファーブル昆虫記 7 (アリやハエのはたらき). 集英社, 1991.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002138525-00 , ISBN 408231007X -
エドワード・O・ウィルソン 著 , 大河原恭祐 監訳 , 川岸史 訳 , Wilson, Edward O., 1929- , 大河原, 恭祐 , 川岸, 史. アント・ワールド : アリの世界. ニュートンプレス, 2021.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I031328533-00 , ISBN 9784315523577 -
尾崎まみこ 著 , 尾崎, まみこ. アリ!なんであんたはそうなのか : フェロモンで読み解くアリの生き方. 化学同人, 2017. (DOJIN選書 ; 75)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I028410844-00 , ISBN 9784759816754
-
寺山守 解説 , 久保田敏 写真 , 寺山, 守 , 久保田, 敏. アリハンドブック 増補改訂版. 文一総合出版, 2018.
- キーワード
-
- ハチ
- アリ
- 習性
- 帰巣本能
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 生態調査
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000306572