レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2019年04月01日
- 登録日時
- 2019/07/02 11:17
- 更新日時
- 2023/12/15 14:40
- 管理番号
- 市川20190401-03
- 質問
-
解決
井上靖の『氷壁』のモデルとなった事件について、またどうしてこの話を書こうとしたのかを知りたい。
- 回答
-
『井上靖全集 第11巻』(新潮社 1996)p.698、巻末の改題の中に井上自身が書いた「氷壁について」が掲載されている。出典は昭和32年10月の新潮社刊行版に付けられた、4頁のしおりに掲載の記事。その中で「この作品を書く動機は、親しい友人達数人と穂高の涸沢へ月見に行き、穂高の美しさにうたれたことと、もう一つは、東京へ帰つてからその時の一行の一人である三笠書房の編輯長で登山家である長越茂雄君から、北アルプス前穂高岳で発生した遭難事件の話を聞いたことにある。話を聞いた時、直ぐ書きたいと思った」とある。
『井上靖』(小学館 1991)p.345に氷壁の作品ガイドがあり、「前年話題になったナイロン・ザイル事件から着想され、」とある。
その他に『井上靖』(至文堂 1996)p.292に「昭和31年11月22日付の朝日新聞には、掲載に先だって「氷の壁を軸としてそこから展開する社会小説」を念願しているといった「作者の言葉」が掲載されている」とある。
なお、ナイロン・ザイル事件とは『事故・災害』(教育社 1992)p.483によると、1955年1月2日に北アルプス山系前穂高岳で起きたザイル切れで大学生が滑落死した事故のこと。従来の麻ザイルよりも強いとメーカーが保証したナイロン・ザイルだったため、“ザイル論争”に発展した。
『山への挑戦』(岩波書店 1990)p.132-135にもこの事件の記載あり。また、この事件について書かれた『氷壁・ナイロンザイル事件の真実』(あるむ 2007)があり、(市内未所蔵)同書(p.9)によると、滑落死した大学生の実兄である著者の石岡繁雄氏は、長い間この事件の原因を実験で究明し、社会に訴え続けた。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
-
- 日本文学 (910 8版)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000258193