レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2019年07月04日
- 登録日時
- 2019/07/04 14:59
- 更新日時
- 2019/07/04 14:59
- 管理番号
- n1003819-4
- 質問
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解決
練馬大根の発祥はいつ頃か
- 回答
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○起源について
・「園芸植物大事典」塚本洋太郎/総監修 小学館 1989.2 620.33 ISBN4-09-305103-8によれば、ダイコンの栽培種は中央アジアが起源のひとつで、日本には1000年以前に渡来したと推定され、記録のうえでは700年代に認められるという。「地域食材大百科」によれば、720年「日本書紀」に「於朋泥」として記載があるという。江戸時代初期には今日栽培されている主要栽培品種はほぼ存在していたと考えられている。
古事記 下巻 「仁徳天皇」には
「つぎねふ 山代女(やましろめ)の 木鍬持ち(こくわもち) 打ちし大根(おほね) 根白(ねじろ)の 白腕(しろただむき) 枕(ま)かずけばこそ 知らずとも言はめ」
という歌がある。意味は「山城女が木の鍬を持って、畑を耕してつくった大根。その根のように白い腕を枕として共寝をしなかったのなら、知らないと言ってもいいが、そうは言えない仲ではないか。」
日本書紀「大鷦鷯天皇(おほさぎのすめらみこと) 仁徳天皇」に同じ歌がある(ただし、山城女←→山背女 枕←→纏)。
○歴史
・「野菜園芸大百科」農文協/編 農山漁村文化協会 1989.10 626.08 ISBN4-540-89098-0にはダイコンの日本への渡来について1250年以前と考証している旨記述があり、「大和本草」(貝原益軒 1709)に「凡そ大根に種類多し。」とあって、十数種があげられているという。また、東京練馬で延宝(1663~1680)のころ種子を尾張に求めて栽培されたのが練馬大根の発祥とされているともある。練馬大根は練馬群に属し、わが国最大の品種群である。 綱吉将軍の奨励があり、風土がダイコンに好適していたため急速に特産化したものと思われる。
・日本で最初の一大植物図譜と言われる「本草図譜」の「菜部 四十六 十五」には「莱菔」(らいふく)として大根が紹介されている。尾張宮重のものは「上品あじわひ良し」、「練馬徳丸の産」は周囲が一尺五六寸、長さが三尺、との記述がある。
○系統
■「種子を尾張に求めた」という説について、種苗研究家森健太郎は次のような意見を述べている(全日本種苗研究会機関紙「種苗指針第二号」)。
・綱吉が取り寄せた大根が宮重大根とすれば、遺伝学上どこかに宮重大根の遺伝的現象が認められるはずであるが、なんら認められない。
・安永年間に世に出た大橋方長の「武蔵演路」(東京都神社史料第2輯収録 東京都神社庁) に、練馬大根は上練馬の百姓又六が作り出したと記載されているそうである。古い時代からあった練馬大根に、他のダイコンが交雑して変異したものを育成してきたものと思われる。その理由として、現在の練馬大根にいくつもの系統がでていることからも、交雑であることが推測される。
・室町時代(1337~1573・日本中世史事典・朝倉書店、1336~1573・日本中世史年表・吉川弘文館)に尾張ダイコンとして甚目寺村方領(愛知県甚目寺[じもくじ・現愛知県あま市])を中心に栽培されていたのが方領ダイコンである。
また尾張に接する美濃には鼠ダイコンのような栽培品種があったが、これが尾張の宮重村で方領との雑種として宮重ダイコンが育成されたと考えられている(「園芸植物大事典」)。
・練馬大根の原種となったダイコンが方領系だったのか宮重系だったのかは明らかでないが、練馬群の各品種が華南大根の遺伝形質を濃厚にとどめているところから、方領系に由来するという見方がある。このダイコンが江戸に移され、練馬大根が育成された。
○近現代資料からみる練馬大根
・「北豊島郡誌」によると『徳川綱吉公が脚気症を患ったときに、占わせて、城の西北にある「馬」の字のつく地で療養したところ、次第に病は癒え、徒然を慰めるために蘿蔔(ロフ・大根の意)の種子を尾張から取り寄せ、試しに字桜台(練馬の地名)で栽培させたところ大きな大根ができた(量三貫匁(ママ)、長さ四尺)。それ以来、城へ帰ってからも毎年栽培させて、東海寺の沢庵和尚に漬物を漬けさせた。』 とある。因みに伝えられる綱吉と沢庵の生没年は重ならない。
・「練馬大根 新版」生涯学習課文化財係練馬区郷土資料室/編集 練馬区教育委員会 1998.3 626.44によると、武蔵野台地では火山灰が厚く積もった赤土の台地という自然条件以外に,江戸まで日帰りできる距離であったことや、江戸市民の人糞が豊富にあったなどの条件が重なって、需要が高まっていった。
○現在の練馬大根(2011年)
・現在練馬大根は市販されていないが、区の助成を受けた農家が年間1万3000本を生産。2010年の区農業祭では1本200円で500本準備したものが40分で完売した(2010年11月7日朝日新聞朝刊より)。西武百貨店池袋店では、区内の漬物業者でつくる練馬漬物親睦(しんぼく)会が主催する「ねりま漬物物産展」において練馬大根の漬物が販売される。また、2010年12月5日には練馬大根引っこ抜き競技大会が開催され、0歳から83歳まで450人が区内外から参加した。この日は4時間で4千本が収穫されたそうである(2010年12月6日朝日新聞)。区民農園では練馬大根を栽培している区民もいるということである。
「ねりま漬物物産展」は平成元年からココネリ3階 区民・産業プラザ 産業イベントコーナーで開催されており、「本干沢庵」が販売されている(2019年2月8~10日 )。
・2007年9月には練馬区独立60周年記念事業として、練馬大根創作料理コンテストが開催され「練馬大根創作料理 コンテスト本選出場者 レシピ集」が区内図書館に所蔵されている。
・練馬区立図書館蔵書検索画面では「ネリマダイコン」でキーワード検索ができる
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000258319