レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 登録日時
- 2018/03/11 14:30
- 更新日時
- 2018/03/30 10:20
- 提供館
- 京都市図書館 (2210023)
- 管理番号
- 伏見中央17-2
- 質問
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藤原不比等が山科(京都市)に居住していたと聞いた。その経緯と居所について知りたい。居所については現在の地図で確認できる資料が見たい。
- 回答
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藤原不比等(658/659-720)は、中大兄皇子と共に乙巳の変(大化の改新)を行った中臣(藤原)鎌足の第2子。藤原4家の始祖とも言われる。飛鳥・奈良時代の政治家で大宝律令(701年制定)の編纂にも携わった。
不比等については残された史料が少なく、その生涯については謎に包まれている部分も多い。不比等と「山科」との関わりを知るため、【資料1~6】で山科に関する記述に重点をおいて調査した。
1.山科との関わりがわかる『扶桑略記』の記述
乙巳の変(大化の改新)以降の最も古い記録に、『扶桑略記』の「天智天皇は即位の翌年、山科野で薬猟を行った」との記述がある。これには「中臣鎌足と大海人皇子(のちの天武天皇)が随行した」とある。山科には天智天皇の重臣であった鎌足の「陶原(すえはら)の家」があり、鎌足が没した天智9年(上記の山科野の薬猟の年でもある)にここに「山階精舎」(のちの山階寺、さらに平城(奈良)の興福寺として移建)が設けられ葬られた、ことが掲載されている。【資料1・2】
2.山科での居所について
【資料1】によると藤原不比等の養育者であった田辺史大隅(たなべのふひとおおすみ)の家が山科にあり、父である鎌足の「山階陶原家」と近接する位置にあったと推察されることが記載されており、不比等の居住地が、このあたりであったことがわかる(p151-153)。
【資料1】には上記の「山階精舎」跡について次の2説が挙げられており、『山階郷古図』をもとにした「山背の古道」の地図においてその概略図が記載されている(p152)。
①「陶原」の名との関連に基づき、末木の窯跡群のあるJR山科駅周辺に求める説
②京都山科区大宅鳥井脇町の大宅廃寺に比定する説
3.山科に居住した経緯については、下の回答プロセスで記述しているように、【資料1~6】の中で各著者の考察が述べられている。
その他参考とした資料
・『人物日本の歴史1:飛鳥の悲歌』黛弘道/著,小学館,1974
・『上山春平著作集4』上山春平/著,法蔵館,1994
- 回答プロセス
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養育者の田辺史大隅に関する記述は『日本書記』『懐風藻』『家伝』等に基づくものが多く、史実と異なる点もあるが、諸説について、以下の点に着眼して次の1~5の手順で調査した。
1.藤原不比等とその養育者田辺史大隅の関係について
「鎌足はなぜ山科の田辺史大隅の家で不比等を養育させたのか」→【資料2】p37-38【資料5】p32【資料6】p12
2.山科という土地について(天智天皇の御陵がある)
「鎌足がなぜ山科を居所に選んだのか」→
・【資料4】p148「近江と山背の境界にあり、また政治・経済の上からもさらに文化の面からも注目すべき場所」の記述あり。
・【資料6】p12 壬申の乱との関わり→「不比等は近江朝廷側であったのでは」との記述あり。
3.万葉集における山科
・【資料1】p150『万葉集』の諸歌にみえる地名をたどると「山背道」とよばれる古道の具体的道筋が復元される。山背古道に沿った道順に奈良から山科を通って近江へのルート(相楽郡→綴喜郡→久世郡→宇治郡→山科の石田の杜→山科野→相坂山→近江国)があり、田辺史の居所がその線上にあったことが推測できることがわかる。
3.中臣(藤原)鎌足の山科居所について→【資料1・2・3・4・5】に記述あり。
4.田辺史の居所について→【資料1・2・3・4・5・6】に記述あり。
*ただし、居所を具体的に地図で示した資料は【資料1】のみだった。
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本史 (210 9版)
- 詩歌 (911 9版)
- 参考資料
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【資料1】加藤謙吉 著 , 加藤, 謙吉, 1948-. 大和政権とフミヒト制. 吉川弘文館, 2002.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003989630-00 , ISBN 4642023852 -
【資料2】上田正昭 著 , 上田, 正昭, 1927-2016. 藤原不比等. 朝日新聞社, 1986. (朝日選書 ; 320)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001837247-00 , ISBN 4022594209 -
【資料3】京都市/編 , 京都市. 史料京都の歴史 2. 平凡社, 1983.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I004957911-00 -
【資料4】京都市/〔編〕 , 京都市. 京都の歴史 1. 学芸書林, 1973.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I012621409-00 -
【資料5】高島正人 著 , 高島, 正人, 1925- , 日本歴史学会. 藤原不比等. 吉川弘文館, 1997. (人物叢書 : 新装版)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002597201-00 , ISBN 4642052054 -
【資料6】土橋寛/著 著 , 土橋寛. 萬葉集の文学と歴史. 塙書房, 1988. (土橋寛論文集 ; 上)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I014556505-00
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【資料1】加藤謙吉 著 , 加藤, 謙吉, 1948-. 大和政権とフミヒト制. 吉川弘文館, 2002.
- キーワード
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- 藤原不比等(藤原史)
- 中臣鎌足(藤原鎌足)
- 田辺史(大隅)
- 山科(山階)
- 山階精舎
- 陶原
- 大宅廃寺(京都市山科区)
- 万葉集
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 山科 郷土 人物 地名
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000232404