レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年10月27日
- 登録日時
- 2021/01/08 16:57
- 更新日時
- 2021/02/14 16:40
- 管理番号
- 神戸図−1546
- 質問
-
解決
空中権の売却が行われた事例を知りたい。東京駅を修復した際に行われたようだが、他にどのような事例があるのか。
- 回答
-
・東京駅周辺(1):東京駅駅舎の余剰容積率を新丸ビルや東京ビル、東京中央郵便局等6つのビルへ移転。
・東京駅周辺(2):パレスホテルと日本工業倶楽部会館の余剰容積率を丸の内永楽ビルディングへ移転。
・日比谷シティ:日本プレスセンターの余剰容積率を周辺のビルへ移転。
・札幌ANビル:朝日新聞が単独の建物と日本生命との合同ビルである札幌ANビルを建設する際に、単独の建物の余剰容積率を合同ビルへ移転。
・堂島大阪ビル:クラブ関西が大阪建物に余剰容積率を移転。大阪建物はその容積率で堂島大阪ビルを建設した。
- 回答プロセス
-
○空中権とは
・情報・知識&オピニオンimidas「空中権」
https://imidas.jp/hotkeyword/detail/A-00-306-12-10-H022.html(2021年2月14日最終確認)
「土地の上下の空間の一部を使用する権利を指す場合と、容積率を移転(売却)できる権利を指す場合がある。前者は、電線や電柱、地下鉄のトンネルの架設などの際に使用する民法上の権利で、地上権と地役権に分かれる。後者は、都市計画で定められた容積率のうち、未使用の余剰容積率を、特定街区や高度利用地区など特別な地域内で、隣接地に移転できるという不動産取引上の概念。ただし、土地の有効利用を目的とするときに限られる。2001年5月には、都市計画法及び建築基準法の一部改正に伴い、特例容積率適用区域制度が施行され、隣接地より広範囲で容積率を移転できることになった。東京駅とその周辺の再開発では、JR東日本が初めてこの制度を活用。東京駅舎上空の余剰容積率を、05年竣工の東京ビルディングや、07年竣工の新丸の内ビルディングなどに売却し、約500億円を調達。これらの取引によって得た資金で、東京駅丸の内駅舎の保存復原費用をほぼまかなった。」
今回質問された「空中権」は後者の意味であり、多くの資料で「空中権」のほかに「未利用容積率の移転」などと表現されていた。
当館の蔵書検索システムやBook Plusで「空中権」「容積率移転」などのキーワードで検索したが、前者の意味の空中権を扱ったものが多く、売却された事例は見つからなかった。
インターネットの検索エンジンで調べると、以下の論文が見つかった。
○事例が紹介されている論文
・池田誠「空中権を巡る税務上の取扱い」税務大学校論叢(62),253−317,2009.6 税務大学校
この論文は国税庁のHPでも公開されている。
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/62/04/hajimeni.htm(2021年2月14日最終確認)
「近年の都市再開発事業等では、ある建物の敷地の利用されていない容積率(以下、「余剰容積率」という。)を他の敷地に移転し、より高層のビルの建築を可能とすることによって、土地の有効・高度利用を図るといったケースが見受けられる。このような容積率を移転する取引(以下、「容積率移転取引」という。)は、土地の上空を一定範囲で区切り、それを利用する権利を取引の対象とするものであることから、空中権取引とも呼ばれている。」
[第1章 第2節 容積率の移転を可能とする公法上の諸制度]
「容積率の移転を可能とする現行制度には、特定街区制度、再開発促進区制度、特例容積率適用地区制度、一団地の総合的設計制度、連担建築物設計制度等がある」と述べたうえで、各制度の概要と容積率移転への適用について解説している。
[第2章 第2節 容積率移転の具体的事例] では、東京駅周辺の再開発、日比谷シティ、札幌ANビル、堂島大阪ビルの事例を紹介している。
・岩崎幹生「都心部へのスポーツ施設の設置の可能性に関する研究」早稲田大学大学院スポーツ科学研究科 2014年度修士論文
http://www.waseda.jp/sem-hirata/iwasaki_rp.pdf
(早稲田大学所沢総合事務センター連絡Webページ>大学院スポーツ科学研究科生>修士論文>修士学位論文テーマ一覧(2014年度)修士1年制
https://www.waseda.jp/tokorozawa/kg/sports-graduate/Master_thesis_list_2014M1_gs.html からアクセスできる)(2021年2月14日最終確認)
[第4章 第1節 第2項 容積率移転の制度]で上記5つの事例を紹介している。
〇特定容積率適応地区とは
今回質問者が例に挙げた東京駅の改修工事は、特例容積率適用地区制度を活用した事例であるが、
この制度によって未利用容積率の移転が行われたのは、2021年2月現在でこの東京駅周辺の事例のみである。
・『実用都市づくり用語辞典』山海堂,2007「特例容積率適用地区」
「地域地区の一つで、公共施設が適切な水準に整備された区域において、未利用となっている容積に着目して土地の高度利用を図るため指定される地区。地区内では、必要に応じて建築物の高さの最高限度が定められるとともに、未利用容積を敷地間で移転することが認められる。2002年の都市計画法・建築基準法改正で商業地域での特例として制度が創設された後、2004年の法改正でその他の用途地域にも適用される制度となった」
なお、特例容積率適用地区などの都市計画区域の数は、以下で確認することができる。
○国土交通省 都市計画現況調査
https://www.mlit.go.jp/toshi/tosiko/genkyou.html(2021年2月14日最終確認)
- 事前調査事項
- NDC
- 参考資料
-
-
池田 誠,「空中権を巡る税務上の取扱い」. 2009-06. 税務大学校論叢(62) p. 253~317
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I10523106-00 -
『実用都市づくり用語辞典』矢島隆, 榎本平, 木下瑞夫, 阪井清志, 中村英夫, 舟引敏明, 小川陽一, 小林一朗, 笹井俊克, 長瀬龍彦, 山崎俊一 編著. 山海堂, 2007.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008591097-00 , ISBN 9784381022097 (当館ID PV:7100027798)
-
池田 誠,「空中権を巡る税務上の取扱い」. 2009-06. 税務大学校論叢(62) p. 253~317
- キーワード
-
- 空中権
- 容積率
- 特例容積率適用地区
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000292070