当館で所蔵する資料で、箱館戦争における津藩の行動について書かれたものとしては以下のようなものがありました。
○箱館戦争に関係する資料で、津藩についての記述があるもの
・『維新史料綱要 巻10』東京大学出版会 1984
p83 明治二年四月十日「箱館征討青森口総督府、津・岡山・久留米三藩ノ兵ニ進発ヲ命ズ。明日、三藩兵、青森ヲ発ス。【十二日、江差ニ上陸ス。】」
p89 明治二年四月十七日「松前口官軍【弘前・福山・徳山・久留米・津・山口・松前諸藩及箱館ノ兵】海軍ト協力シテ賊兵ヲ江良・打戸・立石野並ニ渡島国松前郡等ニ撃破シ、福山城ニ迫ル。賊兵、支フル能ハズ、城ヲ棄テテ福島ニ遁ル。(以下略)」
p98 明治二年四月二十九日「官軍【弘前・大野・松前・水戸・福山・岡山・津・山口・徳山・久留米・鹿児島ノ藩兵及箱館府兵】 官艦【東・朝陽・丁卯・陽春・春日】ト協力シ、矢不来ノ賊兵【衝鋒・彰義・額兵・見国ノ諸隊】ヲ攻ム。賊兵、支フル能ハズ、富川ニ退ク。(以下略)」
p108 明治二年五月十一日「海陸ノ官軍、部署ヲ定メ、箱館及五稜郭ニ進撃ス。(中略)又一隊ハ、前夜豊安・飛龍ノ二艦ニ乗ジ、富川村ヲ発シ、其一部【弘前・津・徳山・山口・岡山ノ諸藩兵】ハ、箱館ノ背後山背泊ニ出テ、共ニ箱館市街ヲ略シテ弁天台場ニ敵ヲ圧シ、(以下略)」
p116 明治二年五月十六日「黎明、官軍【伏見親兵隊及鹿児島・弘前・熊本・松前・大野・福山・山口・津・黒石・岡山ノ諸藩兵】三方ヨリ千代ケ岱ノ賊営【旧津軽陣屋】ヲ襲フ。(以下略)」
※【】内は小さい文字で表記されています。
・『復古記 第14冊』東京大学史料編纂所/編纂 東京大学出版会 1975
p574 復古外記 蝦夷戦記 第六 明治二年四月十七日
「○藤堂高潔家記ニ云、四月十七日、弊藩人数、(以下略)」
=『太政官日誌』の四月十七・十八日分とほぼ同じ記述です。
○津藩に関係する資料で、箱館戦争に言及しているもの
・『津市史 第1巻』梅原 三千,西田 重嗣/執筆 津市役所 1959
p406 「(前略)翌二年四月に江刺に上陸した。そしてしばしば力闘して奇功をたてたがやがて五稜郭も陥ったので、六月一日に東京に凱旋し、同月十二日に東京を辞して帰藩したのである。」
・『上野市史』上野市 1961
p53 「(前略)榎本武揚・大鳥圭介等が最後の残兵を擁して北海道の函館五稜廓に拠った。これには伊賀からも出兵し、無足人も五八名がこれにしたがい、明治二年(一八六九)四月十一日青森港を出発「蒸気船」で「渡島国」(北海道)に向い各地に転戦。五月十八日には榎本武揚等が降伏したので五月廿六日「蒸気船」に乗り品川で途中八日滞在して鳥羽に上陸、無事上野へ凱旋した。六月二十日であった。」
・『三重幕末維新戦記 藤堂藩・桑名藩の戊辰戦争』横山 高治/著 創元社 1999
p156-160 「この箱館戦争については、伊賀・川合村(阿山町)の無足人・杉生右七郎宗忠という十九歳の青年が『蝦夷従軍日誌』という立派な記録を書き残している。それによると、四月十一日、青森に滞在中、蝦夷地進撃の命令を受け、蒸気船で江差に進出。十三日、木の子村に上陸、十六日、原口村で敵兵一名討ち取る。十七日、江原町で敵の大軍と激戦。十八日、撤兵二十人が山道で敵の隊長ら三名生け捕るも、味方の松山又四郎(下阿波村)名誉の戦死。(中略)そして十八日には榎本、大鳥、松平らが降伏、やっと闘いが終わった。伊賀隊は二十六日蒸気船に乗り込み、六月一日東京の品川、十四日鳥羽港(三重県)に入り、山田(伊勢市)の古市、松坂、津を経て、長野峠を越え、二十日、伊賀上野城に凱旋した。」
※『蝦夷従軍日誌』についての資料は、当館では所蔵がありません。
・『伊勢伊賀「藤堂藩」戦記』横山 高治/著 新人物往来社 1994
p166-167 「藤堂藩では、藩主高猷も新政府の要請をうけ、伊賀の藤堂豊前を隊長とする八百二十八名の伊賀隊を編成、明治元年(一八六八)八月二十三日上野城を進発させた。(中略)江戸を経て十月六日、仙台に入城、藩軍の津隊と交代、陸海から北上したのち、明治二年(一八六九)四月九日、江差に上陸、ただちに松前城方面から進撃した。七重浜方面では、同じ三重県の桑名藩兵と遭遇、各所で白兵戦を展開、五月十一日の五稜郭総攻撃に、諸藩兵とともに参加した。(中略)藩軍は六月一日、東京に帰還、十二日、東京を出発、伊賀に帰国した。」
なお、上記以外に確認した資料は以下の通りです。
・『箱館戦争史料集』須藤 隆仙/編 新人物往来社 1996
・『維新史 第5巻』維新史料編纂会/編修 吉川弘文館 1983
・『戊辰戦争全史 下』菊地 明,伊東 成郎/編 新人物往来社 1998
・『三重県史 資料編近代1』三重県/編集 三重県 1987
・『安濃津郷土史会誌 1~7』安濃津郷土史会 1936~1938
・『安濃津郷土史会誌 8~16』安濃津郷土史会 1939~1942
・『戊辰戦争と「朝敵」藩 敗者の維新史』水谷 憲二/著 八木書店 2011
・『「朝敵」から見た戊辰戦争』水谷 憲二/著 洋泉社 2012
・『桑名藩戊辰戦記』郡 義武/著 新人物往来社 1996
・『戊辰の挽歌』鈴木 芳雄/著 新日本法規出版 1987